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大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか

小城武彦 経営組織論、コーポレート・ガバナンス

23/09/21

今日は私が考える「私たちは、これからの未来をどう生き抜くか。」についてお話ししてみたいと思います。私のキーワードは、「自分らしさ」です。

リスナーの皆さんの「自分らしさ」って、何でしょうか?すぐに答えが出る方もいらっしゃると思いますが、「ちょっと待てよ。そんなこと急に言われても」と戸惑う方も少なくないのではないかと思います。この質問を企業に勤めるビジネスパーソンにお聞きすると、実は口ごもる人が少なくありません。なぜでしょうか。

実は、会社組織では「自分らしさ」を発揮することが求められていないからです。「自分らしさ」を発揮するのではなく、例えばマニュアルや規則に書いてあることをしっかり守ることが求められます。会社の期待通りに行動することが求められるわけです。その結果、職場では、「自分らしさ」を考えることや、ましてや「自分らしさ」を発揮する機会は本当に少なくなってしまいます。この意味で、組織というのは大変怖い側面を持っています。「朱に交われば赤くなる」というわけです。

皆さんが何か新しい企画を考える機会があったとしましょう。新しい企画なので、自由な発想で自分らしい企画を考えてよいかというと、必ずしもそうではありません。上司や周りの同僚が納得するような案を考えることが求められるからです。社内から異論・反論が起きないような答え、言ってみれば無難で、誰もが「確かにそうだよな」という企画案こそが、「良い」企画案とされてきました。そうした案を早く作ることができる人間が「できるヤツ」と言われてきました。そうした「良い案」を作らなければならないので、「自分らしさ」を考える暇などあるわけがありません。つまり会社には、「自分らしさ」を忘れさせる力が動いているといってもよいと思います。多くのビジネスパーソンが口ごもるのは、このようなわけがあるからです。

さて、今日なぜこの話をしているかというと、これからの時代は、これまでとは大きく状況が変わって、「自分らしさ」がとても大切になると思っているからです。

最近、新しいAIである、ChatGPTが大変話題になっています。皆さんの中にも使ったことがある方もいらっしゃると思います。ChatGPTは世界中の情報を集めて、論理的に分析した結果をわかりやすい日本語でアウトプットしてくれます。ChatGPTの強みを一言でいうと、誰もが納得する答えを出す力と言ってもよいと思います。そして、これからの時代は、誰もがこうしたAIの力を自由に使えるようになります。そうすると、これまで会社で求められてきた誰もが納得する企画案は、AIが作ってくれるようになるのです。

 では、一体人間は何をすればよいのでしょうか。これを考えるためには、AIにはできないことを考えることが一番です。AIにはできないこととは何でしょうか?AIはなんでもできてしまいそうですが、実はAIは企画を作ったり、回答を出すことはできますが、それを実行したり、実現することはできません。
 
例えば、これからの外食産業を勝ち抜いていくためには、こういったカフェがよいだろう、という答えをAIは出すことはできますが、カフェを実際に作り上げていくのは誰でしょうか?それは人間です。そして、カフェを創るためには、多くの人がかかわってきます。デザイナーもいれば、食材の専門家もいる、スタッフの募集をしたりお金の計算をする人も必要です。みんな仕事の進め方も、ひょっとすると考え方自体も異なるかもしれません。そういった多様な人たちをまとめて、一つのカフェを創っていく。それは、実は簡単なことではないのです。

それではいったい何が必要なのでしょうか?それはリーダーシップです。考え方も、そして、ひょっとすると生き方も異なる人たちと一緒に、目指すものを作り上げていく力、これがリーダーシップです。具体的には何を目指していくのか、そしてそれは何故なのかを語っていくこと、この場合だと、どんなカフェを創りたいのか、そしてそれはなぜなのかを自分の言葉で語りかけ、多くの人たちのやる気のスイッチを押していくことが必要です。言葉をかえると共感を生み出す力と言ってもよいと思います。「そうか、この人がそういうのであれば、一肌脱いで頑張ってみるか。」を思わせることがとても重要になるのです。

 よくリーダーシップというと、古くはキング牧師、最近ではスティーブ・ジョブスやイーロン・マスクのようなカリスマ性があって、かっこよくてパフォーマンスが上手な人を思い浮かべてしまうのですが、実はこうした人たちだけがリーダーシップの見本ではありません。例えば、インドを率いたガンジーや多くの弱き人たちを救ったマザーテレサなども素晴らしいリーダーです。雄弁でも何でもない、派手なパフォーマンスとは無縁の人です。彼・彼女がしたことは、自分が何を目指すのか、それはなぜなのか、そして自分はどんなことを大切にしていきたいのかを自分の言葉で多くの人に語り掛けたことです。それは、彼・彼女の「自分らしさ」そのもの、「自分らしさ」の本質といってもよいと思います。自分がどんなことを大切にし、自分が心から成し遂げたいと思うことは何か、それを自分の言葉で語ることを通じて、何千・何万という人の心に共感を生み出していったのです。

リーダーシップとは、「自分らしさ」を発揮することです。これは、AIにはできません。AIが作った文章を読んだことがある方はお気づきのとおり、AIの文章には感動がないのです。心が動かないのです。共感しないのです。これからの時代、我々人間にしかできないこと、すなわち多くの人に共感を生み出すために、是非「自分らしさ」を大事にして欲しいと思います。

今日のまとめ:
これからの未来を生き抜いていくために大切なこと。それは、「自分らしさ」です。皆さんの「自分らしさ」を、今一度見つめなおす機会になれば嬉しいです。

分野: コーポレートガバナンス |スピーカー: 小城武彦

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