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ピンチをチャンスに変えた町工場の経営改革④~変革に対する抵抗への処し方

芹沢宗一郎 組織・リーダーシップ研究

23/02/21

業界で勝つうえでのカギになるもの(KSF)の変化に対応すべく新たな戦略を打ち立て、それを実行するためのハード面の組織体制をつくり直さなければならない。ただそれだけで戦略は実行されるだろうか? ハードに新たな意識を吹き込むソフト面の改革に取り組む必要がある。それは最終的には新たな働き方(行動習慣)にまで落とし込まれなければならないのだ。しかし、そこには必ず変化を拒む慣性が働く。

では、自社の強みにもとづく戦略をさらに強化するために、コロナ禍の一時帰休を「6稼4勤」(月~土の6日を稼働日として、そのうち4日勤務する)という働き方改革に発展させたフジイ金型の藤井社長。彼はどのようにこの改革を進めていったのかみてみたい。

新しい働き方を導入する際に大切なことは何だろうか? コロナ危機という有事では社員たちは不安になり、何かにすがりたくなる。そういう時にトップが明確な姿勢を示すことは大事だ。当初藤井社長は、6稼4勤について、「休みが増えるが給与は減らさない。よって時間当たりの給与は上がり、実質的な賃金アップとなる。しかし仕事量(受注量目標)は従来と同レベルとする」と伝えた。社員にとってそれほど大きなデメリットはないと思っていたが、「これまで休日だった土曜日に出勤することとなる。それが嫌だ」という反対が一定数あった、という。

それに対しては社長自ら「土曜日出勤といっても月に1~2回程度。その代わり平日に連休を取るということもできる。これから高齢化社会で親や家族の介護なども身近な事案になるでしょう。そういうことにも対応して、かつ働き続けるためにも6稼4勤は対応しやすい働き方。また休日日数の増加で優秀な人材の獲得にもつながる」、など、中長期的視野で社員にとってのメリットを説明していった。こうした地道なコミュニケーションをつづけながら、コロナで一時帰休している間の一年間、まずはやってみて実績を作り、抵抗意識を下げようと考えた。

そして、最後は無記名投票による全社員アンケートを取り、意識確認を行った。事前のヒアリング結果から勝算はあったが、結果として、約7割近くの社員が新制度への移行に賛成した。反対していたベテラン社員はこの結果にびっくりしていたという。得てして、このような場合、反対する声は大きく聞こえてきて、賛成するものはほとんど声を上げないのでなかなか全体像が見えにくい点を注意しなければならないということ。

フジイ金型は、この働き方改革により、多能工化が進み、受注の変動に対応しやすくなった。結果、短納期対応もでき、また工数削減にも寄与し、コストダウンが可能になり、結果的に低価格化に対応できるようになってきている。まさに働き方改革、すなわち行動習慣の改革により、自社の強みにもとづく戦略をさらに強化するスパイラルに入りつつあるという好事例。

まとめ:慣性の力により、戦略を実行するために必要な新たな行動習慣には抵抗がつきものだが、社員へのメリットも地道に説明し、社員の声にも耳を傾けながら、小さくても早く成功事例をつくりだす。これにより抵抗は少しづつ減っていく。

分野: リーダーシップ 組織行動 |スピーカー: 芹沢宗一郎

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