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ブリッツスケーリングがもたらした変化

高原康次 ソーシャル・ベンチャー

23/01/26

前回、「ブリッツスケーリング」という言葉をご紹介しました。アメリカの大企業、いわゆる「GAFAM(Google・Amazon・Facebook・apple・Microsoft)」に代表されるような企業が急成長してきた背後には、「ブリッツスケーリング」と言われる成長戦略があったというお話です。これは中々日本の企業が出来ていない戦略で、そこに日本とアメリカの違いがあるというお話でした。「ブリッツスケーリング」をするためには、企業家・投資家だけではなく、国を挙げてやっていく必要があるという状態になってきています。前回お話した通り、Facebookは1000億円以上集めていますし、集めたお金の使い道がありました。これはどういうことかと言うと、スタートアップの可能性を信じて投資を出来る投資家が育っているということを前提としています。

前回、Facebookとミクシィは同時期に出来たものの、Facebookは巨額の赤字にもかかわらず沢山のお金と人を投入して世界進出するという積極的な成長戦略を図り、ミクシィと大きな差が生まれたというお話でした。

それだけの大量な資金を調達するにあたり、様々なタイプの投資家が必要になります。
初期には当然何もないわけです。Facebookの創業者ザッカーバーグに賭けてみようと思える投資家が必要ですし、一度プロダクトとしてFacebookが出来てきた後には、初期に利用されたハーバード以外の他大学で使われるようにしていくための投資をしていく人たちも必要です。更に、そこからただのプロダクトで終わらせずプラットフォームにしていく、海外に事業展開をしていく所までしっかりと投資をする投資家が必要です。長い期間大量の資金を投資し、上場するよりも、未公開企業としてしっかり成長させる方が良いと思える投資家がまず必要です。勿論、起業家自身もそういった投資家の気概に応えていく、起業家自身が視座を上げていく必要があると思います。

例えば、ファーストリテイリングの柳井さんが一代で世界的なアパレルブランドを立ち上げられたのは、ステートメントにある「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」といった気概があったからこそではないかと思います。

加えて、こうした起業家の夢を実現していくメンバーが集うということです。こうした「ブリッツスケーリング」の経営手法はまだあまり世の中に理解されていません。それゆえに非常識に思われてしまい、社内の意思決定でも混乱しやすいという現状があります。
こうした「ブリッツスケーリング」の経営手法をよく知っている経営メンバーを集め、困難もありながら物事を前に進めていくことが大切になります。FacebookではザッカーバーグというCEOも大切ですが、シェリル・サンドバーグというCOOの役割も見逃せないと思います。彼女は2008年にGoogleから移籍して、Facebookに広告ビジネスモデルを慎重に導入し成功させました。その結果として、2011年には10億ドルの黒字を計上するに至りました。その間にも、組織の拡大に大きな役割を果たしました。上場前の一年間で社員数を2000人強から3000人強に増やしています。こうした経営を支えるヒト、カネ、チエがあって初めて「ブリッツスケーリング」が可能になります。

段々と日本もこうした「ブリッツスケーリング」に対して理解を示す様になってきたと思っています。その契機になったのがメルカリの上場ではないかと思います。メルカリは創業から僅か5年で2018年に上場し、時価総額1兆円にタッチしました。ここから「ブリッツスケーリング」が日本でも可能なのかもしれないという見方に変わってきました。政府も経済界も新たな柱としてスタートアップの育成に大変な期待を掛けていいます。経団連も去年3月に「スタートアップ躍進ビジョン~10X10Xを目指して」を発表しました。この中で、5年後にユニコーン企業数を約100社、デカコーン企業数を2社以上作ろうとしています。さらに、成功の高さを10倍に引き上げるためには、スタートアップの数、裾野を増やしていかないといけないということで、スタートアップの数を10万社、そしてスタートアップへの年間投資額を約10兆円にしていこうと目標を掲げています。こうした経済界の動きに反応して、日本政府も今年度1兆円規模の補正予算を組んでスタートアップ支援をしていこうと現在検討しています。

では、今日のまとめをお願いします。
「ブリッツスケーリング」を実現するためには集団戦が大切です。日本の経済界や政府と共に、我々自身も「ブリッツスケーリング」に理解を示しながら支えていくことが大事ではないかと思います。

分野: グロービス経営大学院 |スピーカー: 高原康次

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