QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

タグ

QTnetモーニングビジネススクール > タグ一覧 > タググロービス経営大学院

GAFAMが用いた成長戦略、「ブリッツスケーリング」

高原康次 ソーシャル・ベンチャー

23/01/25

前回は、「GAFAM」と言われるアメリカの大企業がなぜ強いかについてお話しました。いわゆる、Google、Amazon、Facebook、Apple、そしてMicrosoftに共通することとして、ソフトウェアでありコピーがしやすいということ。そしてエコシステムが上手く作れていること。インターネット、スマートフォンで世界が繋がったことで急成長してきたというお話でした。

今日は、日本でそういう企業は生まれるのかというお話をしていきます。こういう会社をどうやって作っていくのかについて様々な人の話を聞いてきた結果、日本の起業家は優秀だということがわかりました。世界に通ずるプロダクトを作り上げる入口には立てています。では違いは何かというと、世界で勝負するためのスケーリングの所で起きていると言われています。GAFAMのような成長した会社を調べた本があります。リード・ホフマンという有名なベンチャーキャピタリストが書いた『ブリッツスケーリング』という本です。「ブリッツスケーリング」とは会社を急速に大きくする様を描いた造語です。元々の言葉は、第二次世界大戦にドイツがフランスに対して行った電撃戦になぞらえたもので、「電撃的なスケーリングをする」ということを「ブリッツスケーリング」と名付けています。ここでの「スケーリング」は会社を大きくしていく「成長戦略」と捉えてください。「成長戦略」にはユーザー数を増やしていく、展開する地域を増やしていく、プロダクトラインナップを増やしていくといった内容を含みます。

この『ブリッツスケーリング』の巻末資料の中には、実施した会社一覧に日本の社名が挙がっていません。日本人にとっては馴染みが浅い言葉のため、イメージしやすいように例を挙げてご紹介します。例えばソーシャルネットワークサービス(SNS)と呼ばれるもの、FacebookやTwitter、LINEなどがありますが、実は世界で初めてSNSをサービスにして上場したのはミクシィという会社です。今の若い方にはソーシャルゲームの会社の様に捉えられていますが、当時は社会現象になる程流行っているSNSでして、「学生たちがオレンジの画面を見ていて自分の講義を聞いてくれない」とクレームが来るほどでした。ミクシィがSNSサービスを始めたのは2004年。これはFacebookと同じタイミングです。日本では、当然ながらミクシィが先行していて、Facebookが日本語版でサービスを始めたのは2008年からです。最初はFacebookも日本では上手く馴染まなかったのですが、今ではミクシィに取って代わってFacebookが利用されています。SNSは非常に作りやすいサービスで、様々なサービスが乱立していました。その中でFacebookはどうやれば自分たちのサービスを使ってくれるのかをしっかりと考え抜いて、収益化していくということに血道を上げてきた会社です。このミクシィとFacebookの差を考える際に出てくるのが「ブリッツスケーリング」です。

大きく違うのは株式市場への上場タイミング、つまりIPOのタイミングです。上場してしまうと多様な株主の目に触れるため、赤字を続けて積極的な成長戦略を打っていくことは難しくなってしまいます。ミクシィは2006年に上場しています。一方で、Facebookは2012年ということでここに6年の差があります。ミクシィが上場までに財務活動で得た資金は7000万円程度ということで、2004年3月期には黒字化しています。2006年には5億円を超える利益を出し、会員数は340万人でした。一方でFacebookは赤字を出しています。2007年12月期の決算では約1億ドルの損失を出しています。かたや5億円の黒字、かたやFacebookは100億円超の赤字です。Facebookはひたすら資金調達をして成長を続けました。 Facebookは2012年までに11億ドルを調達しています。今の為替になおすと1500億円程です。この資金を使って23か国語の言語に対応したり、開発者が開発しやすくなるためのプラットフォームを作ったりして世界に勝負をするということをやってきました。このように赤字を厭わず大量の経営資源を投下して実施する積極的な成長戦略を「ブリッツスケーリング」と呼んでいます。

では、今日のまとめです。
GAFAMのような会社を日本から出していくためには、赤字を許容しながら急速に成長していくブリッツスケーリングと呼ばれる成長戦略が必要になっています。

分野: グロービス経営大学院 |スピーカー: 高原康次

トップページに戻る

  • RADIKO.JP