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ネットワーク科学:インフルエンサー

目代武史 企業戦略、生産管理

22/12/06

今日は「ネットワーク科学」の観点からいわゆるインフルエンサーについて考えます。インフルエンサーは、TwitterやInstagram、YouTube等のソーシャルメディアにおいて沢山のフォロワーを持っている人達のことです。インフルエンサーには、はっきりとした学術的な定義があるわけではありませんが、一般的にはフォロワー数に応じて分類分けがされています。例えば、フォロワー数が100万人以上いるとメガインフルエンサー、10万人を超えると「パワーインフルエンサー」、1万人以上だと「マイクロインフルエンサー」、1万人未満は「ナノインフルエンサー」と呼ばれます。

ネットワーク科学では、その中でどれくらい中心的な人物かを測る指標として「中心性」という概念があります。この中心性には実は様々な指標があるのですが、一番シンプルなのものとして「次数中心性」があります。「次数中心性」とは、ネットワーク上のある点に他の点からどれだけ線が繋がっているかを示します。要するに、例えば私がInstagramをしていて、フォロワーが1万人いるとすると、その1万といった数字が「次数」ということになります。

ただ、フォロワー数だけでインフルエンサーの「中心性」や影響力を捉えるのは若干単純すぎるかもしれません。というのも、例えばフォロワーの中にはそのフォロワー自身も何千人、何万人のフォロワーを持っている人がいるかもしれません。例えば、同じ5,000人のフォロワーがいても、Aさんは普通の人が5,000人、Bさんはその5,000人の中に数千人、数万人のフォロワーを持っている人が混ざっているかもしれません。そこで、フォロワーの影響力も加味した「中心性」を捉える概念があります。これをネットワーク科学では「固有ベクトル中心性」という概念で捉えます。先ほどのように、フォロワーの方のフォロワー数を加味すると、実は「次数中心性」は小さいけれども「固有ベクトル中心性」でいうともう一人の方が中心性が高いという逆転現象も起こりえます。

AさんとBさんがいたとします。Aさんは「次数中心性」は100人、Bさんは1,000人いるとしましょう。これだけ見るとBさんの方が影響力は大きいように思いますが、Aさんをフォローしている100人の中に、1万人のフォロワーを持つ人が数人いるとそれだけその先に多くの人がいるということになります。そうしたフォロワーの影響力も含めた上で、ある人物の中心性を捉えてやろうという概念が「固有ベクトル中心性」です。

このような考え方は実は色んな分野に応用されています。例えば、インターネット検索エンジンのGoogleもその一つです。Googleでインターネット上の世界中のWebページを評価して検索すると、その検索キーワードに一番適切なWebページを返すわけですが、そのWebページを評価するための方法に「ページランク」というものがあります。要するに、Webページにランキングをつけているわけです。その際、Webページの信頼性を確認するために一個一個のページを見ていたらとても間に合いません。そこで、評価の方法として、他のページからのリンク数が多いページほど信頼性が高く、さらに信頼性の高いページからリンクを貼られていると更に高いだろうという理論を用いています。まさに先程のインフルエンサーの多い人からフォローされている人ほどその信頼性や影響力は高いだろうという構造と同じです。こういった形で世界中のWebページを評価しているのが「ページランク」というものです。このように、多段階のフォロワー構造から「中心性」や「影響力」を評価するネットワーク分析の手法は、非常に応用範囲が広く、特許の影響力や科学論文の影響力を評価する際にも応用することができます。

では、今日のまとめです。
ソーシャルメディア等におけるインフルエンサーの影響力は、ネットワーク科学では「中心性」という概念で捉えられます。フォロワーの数を単純に数えあげる「次数中心性」は最も一般的でわかりやすい指標です。より正確に影響力を捉えたい場合は、フォロワーのフォロワー数も踏まえた「固有ベクトル中心性」という指標も使うことが出来ます。中心性を多段階で評価する方法は応用範囲が広く、Googleの検索アルゴリズムの中核をなすページランクも同様の考え方に基づいています。

分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

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