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モチベーションってどうすれば高まるの?③

福田亮 組織行動とリーダーシップ

22/11/29

「モチベーション」についてシリーズでお話ししています。これまでモチベーションを高めるための理論として、5つの理論をご紹介してきました。今回は、現場ではモチベーションを高めるためにどのような取り組みが行われているのかについてお話します。

前回は「期待理論」と「目標設定理論」「社会認知理論」が、人事評価報酬や目標管理という仕組みに組み込まれているとお話ししました。では、実際にこれらの仕組みがモチベーション向上に機能しているかというと、あまり機能していないのが現状です。それにはいくつかの要因があります。
1つは「管理」という言葉がついてしまう点です。「報酬」や「目標」を偉い人が決めるという組織の慣性がなかなか変わらないため、「モチベーションを高める」というよりは、「管理しよう」というモードになってしまっているというのが難しい点です。

実は、マネジメントのコミュニケーションスタイルや考え方を変えていかないといけないというチャレンジがあります。様々な変化の中で働く人の数も減少しより多忙になり、さらに年初に決めたことがどんどん変わっていってしまうという事態が起きています。その一方で、制度は変わらず年に1回あるいは半年に1回見直すというサイクルで進むため、どんどん曖昧な目標設定のままでどう評価されているのかも分からないという状態で活動が続いています。そうした課題がある中で、今多くの企業が「One on one」という手法を導入しようとしています。一対一のミーティングを増やす取り組みです。一対一のミーティング自体はこれまでにも行われてきましたが、従来の一対一は業務に関するミーティングが主でした。最近企業が導入している「One on one」は、メンバーの考えや、状態を理解する、あるいはメンバーと忌憚なく話せるような関係を築くことで頻度高く情報を収集して、それに適応してやるべきことを決めたり、フィードバックをしたりする頻度を高めていこうという目的で導入しようとしています。キーポイントはフィードバックと内発的動機づけです。本人がやりたいと思うかどうかが大事なため、それを実現するためのツールとして「One on one」が今注目されています。特にコロナ禍になりテレワークが増えたことでよりこの「One on one」の注目度は高まりました。このコロナ禍でどうしても気軽なコミュニケーションが難しくなったため、新たなコミュニケーションをデザインする必要が生まれ、意識してコミュニケーション取るために「One on one」が導入されました。しかし、いざ導入すると、難しいという声も上がってきています。

難しさの理由として、1つは「頻度」が挙げられます。従来だと、半年に1回、3ヶ月に1回で行われていましたが、「One on one」は、相手の立場に応じて相手が変化に直面した時に、お互いにフォローアップすることを目的とするため、2週間に1回や月1回が好ましいと言われています。頭では月1回と分かっていても、お互い忙しいため予定が組めないとできないことがあります。「One on one」で大事ポイントとは、もう先に予定を入れてしまうということです。これができるかどうかが非常に大事です。

次に難しいのは、話を聞く側の「傾聴」です。人の話をよく聞くというのは、やってみるとなかなか難しいものです。これはなぜかというと、やはり上司の中にバイアスがあるためです。上司は部下から相談があったら、的確な正解を提示したりアドバイスをしたりしないといけないという暗黙の前提があり、よく「One on one」のロールプレイの中で「まずは取り敢えず相手を理解する対話だけしましょう」とお伝えすると「何かアドバイスはできませんか」とモヤモヤする人が多いです。このモードで行ってしまうと続きません。やっている上司が「上手くいっているな」「役に立っているな」という実感がないわけです。しかし、部下からするとアドバイスを貰うことは窮屈でしょうがないという声が非常に多いです。本当は色々相談したいことや言いたいことがあるけれども、すぐアドバイスを貰うため言えないという声があります。部下からすると「One on one」がどういう場の時になると意味があるのかというと、非常に単純で、「話をよく聞いてくれた」、「自分の悩みや考えていることに共感してくれた」という要素が整うと、メンバーも「One on one」をやりたいという気持ちになるということがわかっています。

上司はアドバイスをしたいと思っているけれども、部下は話を聞いて共感してもらいたいと思っているわけです。このギャップを埋めるためにも上司はとにかく悩みを聞いてあげる、共感する、整理をしてあげるだけで非常に効果的な「One on one」ができるわけです。この「整理」で大事なことは、振り返りです。経験から学ぶことが大事です。しかし、なかなか自分がした経験から学ぶのは難しいです。それをサポートしてあげることも大事な要素になります。こうした少しの認識を変えるだけで「One on one」は、パワフルなツールになります。

では、ここで今日のまとめです。
モチベーションを高めるために様々な方法論や考え方があります。その最も効果的な手段は、個人と定期的に向き合える「One on one」ではないかと思います。ぜひその際には「上司の役に立たないといけない」「正解を言わないといけない」というマインドセットを捨て、メンバーの経験を振り返ったり、成長を応援したりするマインドセットで望んでいただきたいと思います。そうすることで「One on one」も楽しくなってくるのではないでしょうか。

分野: グロービス経営大学院 リーダーシップ 組織行動 |スピーカー: 福田亮

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