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企業変革との向き合い方1

廣瀬 聡 企業家リーダーシップ

22/10/05

これから2回に渡って「企業変革」をテーマにお話します。

「企業変革をする」―最近よくそんな話も出てきています。
少しだけ私の経歴をお話すると、私ははじめ銀行でディーリングやリスク管理を9年程経験した後、経営コンサルタントとして様々な業種の企業変革に関わりました。通信会社や保険会社、医療関係など様々な業界に携わらせていただいたのですが、ある保険会社の変革プロジェクトを担当させていただいた後に、お客様先に招かれる形でその会社の変革を実際に行うことになりました。先方のCEOから電話を頂き、「廣瀬さん、あなたがコンサルタントして作ったこの計画をあなたが実行しませんか?」と言われてそれを実施させて頂き、その後何社かの「企業変革」に携わらせていただくことになりました。そうした経験から、自分が考える「経営変革」についてお話してみたいと思います。

「企業変革」と言っても様々な種類があります。例えば、経営危機に陥った会社を再生させるための企業変革もあれば、現在好調だけれども敢えて会社を変革させるという変革もあります。これはどうしてかと言うと、経営環境は常に変化しており競争相手が新しいことを始めてきたり、お客さまも常に変化していたりするため、そういった環境に合わせて会社自身を変えていく必要があるのです。
つまり、どんな会社にも「変革の時期」が来るということですね。

私が経験した変革案件について少しお話をしたいのですが、私自身一番記憶に残っている企業変革は、「営業赤字に陥っていた国内最大手のコールセンター会社の再建を任されたこと」です。
ある外国の投資ファンドがこの会社を総額1千億円で買収したため、その会社を立て直すのを手伝ってほしいとの依頼を受けました。その会社には多くの方々が働いていました。中には小説家を目指されている方や、お笑い芸人になるための修行をしている一方で、生活の糧を得るために一日数時間働いている方もいらっしゃいました。そうした方々の夢の実現を後押しする為にも、この会社をきちんとと立て直さなければいけない、そう思ったことを覚えています。
他の役員の方々と共に私がまず取り組んだことは、"出血を止める"ことです。当時、会社は日々赤字を出している状況でした。そうなるとお金がどんどん減っていき、自分達が持っている"貯金"を使い尽くしてしまうと会社は事業が出来なくなってしまいます。それを防ぐためにまずは会社の出血を止めて、新しいビジネスモデルを提示し、会社を前向きにさせて、最後は再び上場してもらうというプロジェクトに取り組みました。振り返ると私にとってなかなか得難い経験であったと思います。

その中で何が起きたかをお話します。

「止血」、つまりキャッシュアウトを止めるために、経営状況を理解して無駄なコストを減らしていく、そして利益の出ていない赤字の部門を場合によっては閉じて、その人達を成長する部門に異動させ、新しい事業等をやりたくないという方には残念ですがお辞めいただくという事を丁寧に進めていくことになります。
これと同様に難しいのは、不採算の事業や不採算の契約の見直しです。赤字になる契約を締結してしまっているものに関しては、お客様の所に行き、「この契約では私達は事業を続けられません。一緒に事業を継続していくためには、恐縮ですけれども契約内容を変えてください」というお願いしに行きます。そういう話をすると「集中砲火を浴びる」とは正にこのことです。当然、契約相手からは「でもこの条件でもう契約したでしょう?これであなた方は良いと言ったでしょう?」と言われるわけです。確かに契約はしましたが、「これだと我々は事業を続けられません」「あなたも私達がこれで潰れては困りますよね?」ということを、誠実にお話をしながら契約を見直してもらいます。

一方で、このようなコスト削減では一時的に状況を回復させますが、長期的な成長も必要になってくるわけですから、並行して同時期に攻めの経営に入る準備もしなければなりません。つまり、所謂リストラが進んでいる状況で社員が下を向いている時に、前を向いてもらうためには時にはリーダーとしては矛盾したこと、つまり「コストは下げるけれど、将来に向けてこういう投資をする為に頑張りましょう!」といったことを言わなければなりません。

途中にはなりますが、一旦今日ここまでのまとめです。
「変革」については様々な本が出ています。ただ、その教科書には「何をしなければならないか」は書いてあったとしても、「どのように行うのか」について書かれているものは非常に少ないと思います。ですから、企業の変革というものは新しい企業を創るときよりも実は複雑で、よりビジネスリーダーとして高いスキルが必要なのではないかと考えています。
次回はこの変革をリードする為に、リーダーとしてどういうスキルが必要で、また変革に携わりたい方はどういう事を覚悟しなければならないのか、についてお話ししたいと思います。

分野: 企業家リーダーシップ |スピーカー: 廣瀬 聡

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