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映画と文化(20):羅生門

鈴木右文 英文法理論、コンピュータによる英語教育

22/09/14

今日は映画と文化のシリーズです。今日は日本映画ということで、黒澤明監督の出世作と言える「羅生門」を取り上げたいと思います。「羅生門」は国際的にも評価された映画で、黒澤監督と言うと長編映画で30本ありますが、これは1950年の作品で第11番目の作品、黒澤監督の脂が乗り始めた頃です。「羅生門」というと、芥川龍之介の小説を思い出す人がいると思いますが、話の一番の根本は同じ芥川龍之介の「藪の中」という作品をベースにしていて、「藪の中」と「羅生門」が合体したような作品になっています。根本は「藪の中」ですがタイトルは「羅生門」になっています。

世界的に黒澤作品で一番有名なのは「七人の侍」です。この映画が1954年で、「羅生門」はそれよりも前に世界に打って出た作品です。ベネチア国際映画祭で最優秀賞を取り、一躍注目を浴びたわけです。実は黒澤監督が注目を浴びたというよりも、日本映画が世界に注目されるようになった一つのきっかけになった作品です。もちろん「羅生門」までに日本映画というのは、本数的にも世界の中でもメジャーな国でしたが、世界の、特にその当時の欧米からの注目を受けた映画として最初だったと言えます。

どんな作品かというと、平安時代の話で、貴族の女性が山賊に襲われ、夫の死体が近くで見つかったという事件があり、そのお白洲が行われている時に、犯人が言うことと、それから襲われた女性が言うことと、巫女さんが呼び出した亡くなった夫が言うことと、みんな違います。真相は「藪の中」ということです。それを見ていた人が、「どれも話が違うよね」と独り言を言うという話で、四つの違う話の見方があるということです。最後に一部始終を見ていた目撃者はお白洲では話をしていなかったと思いますが、この人が喋っていることが恐らく一番真実に近いのではないかと思います。それが本当に真実かどうか、これも分かりませんが、いずれにしても世の中というのは怖いものだという話を、目撃者ともう一人の聞き手役である法師(聖職者)が怖いと言い合う話です。怖いと言い合うのが、いわゆる「羅生門」で行われていたので、それがタイトルになっています。

小説の「羅生門」は、羅生門の二階に死体がたくさんあり、死体から盗みを働くお婆さんがいて、そのお婆さんが「この世の中こういうことをやらないとやっていけないんだ」という話を後から入ってきた男にして、「確かにそうだよな、じゃあ俺が貴方から奪っても良いよね」と言ってお婆さんから奪っていくという話で、小説の「羅生門」の最後で、世の中が怖いと言っていた目撃者と法師の二人ですけれども、目撃者も実は盗みを働いていた人間ですが、映画では最後に羅生門に捨てられていた赤ん坊を拾って、「この子は俺が育てる」と言って、微かな希望を抱かせる形でエンディングになるという仕掛けになっています。

この作品は見ていただくしかないと思うので、これ以上ストーリーには入りません。どこの文化の人から見ても、野太い凄い作品だと言ってもらえる映画が多い黒澤監督ですが、彼の作品ラインナップから見ても非常に芸術性が際立った、いつもとちょっと違うタイプの作品です。それが世界的に受けたという部分があると思います。そして一つ映画技法的に注目することがあって、当時はやってはいけないことだと言われた、フィルムで直接太陽を撮っています。当時はフィルムが痛むからいけないと言われていたそうですが、それをあえてしました。真実は全て闇の中、人間同士は皆、化かし合っているけれども、お天道様はお見通しであるということを言いたかったのではないかと想像しています。黒澤監督の技法がよく色々な海外の監督に真似をされるケースもあって、例えばパートカラーと言って部分的にカラーを使うというものが「シンドラーのリスト」でスピルバーグが使ったという話もあります。技法的にも黒澤監督は世界に影響を与えたということが言えます。

もう一つ、英語教師としては言っておきたいことですが、この作品はある外国人の方から切り出された時に、この映画のことだと分かるのに時間がかかりました。彼の発音はこうでした。「ラッシュモン」。日本語では「羅生門」と言って、ショウの所にアクセントが在ってピッチ(高低のアクセント)もショウの所だけ高く「ラショウモン」となるわけです。ところが英語ではラッシュが"rash"で一つの単語になるので、そこにアクセントがあって、うしろにモンを付けたわけです。「ラッシュモン」と言われて、「は?」と最初は思いましたが、話の内容を聞いていたら「羅生門」のことだったというのが分かりました。発音の違いで全然印象が違います。

今日のまとめ:
黒澤明監督の「羅生門」、日本映画が世界に注目されるきっかけを作ったものとして、今日はご紹介して、最後に少し英語関係のお話をさせていただきました。

分野: 異文化コミュニケーション |スピーカー: 鈴木右文

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