柳田佳孝
ビジネス・アナリティクス、テクノベート・シンキング
22/08/03
今日は身近な相関関係についてお話しします。「相関」という概念は、その言葉で語られることは少ないかもしれませんが、実は日常生活の中に溢れています。今日は相関の概念をより身近に感じていただけるようなお話をしていきます。
相関関係とは、二つの変数の間に何らかの連動性がある状態のことを指します。
例えば、「身長が高い人は体重も重い」、「勉強量が下がると成績も下がりそうだ」など二つの変数の間に「共に変わる」といった関係性がある場合、その二つには「相関関係がある」ということになります。
より相関関係を身近に感じていただくために、三つの例のお話をします。
まず、一つ目の例です。皆さんは心はどこにあると思いますか。頭で考えるため、「脳」と答える方も多いと思いますが、一方で人類は長い間、心は心臓の辺りにあるのではないかと考えていました。これは正に相関の話が大きく関係しています。「心」を感情の動きと捉えると、感情が高まる時に心臓がバクバクしたり、胸がキュッと苦しくなったり、「人の感情の動き」と「心臓の動き」が相関しているため、心は心臓にあると考える人がいたのではないかと考えられます。
では、二つ目の例に移りましょう。
2013年に全国学力・学習状況調査が実施されました。その際に、算数や国語の点数と合わせて「皆さん、朝食をちゃんと食べていますか?」という質問をしたところ、「朝食をまったく食べていない」人は算数と国語の点数が悪く、「朝食をまあまあ食べている」と答えた人の方が算数と国語の少し点数が上がり、「朝食を毎日食べている」人が最も点数が高いという結果になりました。つまり、朝食をきちんと食べる子どもほど成績が良い傾向にあり、「朝食を食べるかどうか」と「成績」の間には相関関係があるという結果になりました。では、子どもたちの成績を上げるためには、みんなに朝食を食べさせたらいいのでしょうか。
もしかすると朝食をとることでブドウ糖が補給され、脳の働きが良くなって結果として成績が上がるという可能性はあるかもしれませんが、毎日規則正しい生活習慣を身に着けさせるような家庭の子育て方針が成績に現れているかもしれず、単純に朝食をとれば成績が上がるというと単純な話ではありません。「成績」と「朝食をとるかどうか」の間に相関関係があったとしても、因果関係がなければ「朝食を食べさせたら成績が上がる」ということにはなりません。
最後の例です。Amazonを始めとする通販サイトを見ると、様々なお勧め商品が出てきて、ついつい買うつもりじゃなかったものまで買ってしまったという経験をされた方も多いかもしれません。そこで紹介されているお勧め商品はどのようなアルゴリズムが働いて表示されているのかについてお話しします。
お勧め自体は「協調フィルタリング」というアルゴリズムをベースに実現しているのですが、この「協調フィルタリング」は相関の考え方をベースに作られています。既存のユーザーの「購入履歴」と相関が高い人は嗜好がある程度近いと判断し、既存のユーザーが購入しているものを相関の高い別の人に紹介するというアルゴリズムを利用しています。
例えば、柳田さんという人は毎朝7時にサトウのごはんと納豆を買っているとします。こはまさんは毎朝7時にサトウのごはんと納豆に加えて、インスタント味噌汁を買っているとします。
この柳田さんとこはまさんは、毎日朝7時にほぼ同じ様な物を買っているため、この両者の嗜好は似ていると考え、柳田さんにこはまさんが買っている「インスタント味噌汁」をお勧めすることで、柳田さんが買ってくれるかもしれないということを裏で導き出しているというのが「協調フィルタリング」というアルゴリズムです。まさに相関の考え方ですね。
では、今日のまとめです。
今日は身近な相関関係の例をご紹介しました。皆さんも、身近なものを相関の視点から観察してみてください。ビジネスシーンでこれをやると売り上げが上がる、これをやると顧客満足度が上がると言われているようなことの中にも、データを取って相関を調べてみると、意外と相関が無いということがあります。まずは身近なものから、相関があるかどうかチェックしてみると面白いのではないでしょうか。
分野: グロービス経営大学院 ビジネス・アナリティクス |スピーカー: 柳田佳孝