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グローバル・サプライチェーンのリスク①

星野裕志 国際経営、国際物流

22/08/31

先日農林水産省の発表で、国内の食料自給率がカロリーベースで、38パーセントと発表がありました。1965年度には、73パーセントあったとのことですので、50年の間に半分近くに低下していることになります。私たちの食べるものの3分の2近くが、海外からの輸入に頼っていることを考えると、食の安全保障という点からも少し不安になります。
今日は海外で原材料を調達し、生産し、最終的な顧客に送り届けるグローバル・サプライチェーンのリスクについて、お話ししたいと思います。

九州では野菜、果物、牛・豚・鶏肉のどれもが、ほぼ九州の地元産で手に入るという印
象を持たれている方も多いと思いますが、全体で見ると3分の2近くが海外から来ています。意外なことに2年前の平成2年度の農林水産省の統計では、福岡県は全国平均よりかなり低い17パーセントでした。農林畜産の盛んな熊本県で55パーセント、鹿児島県で77パーセント、佐賀県は85パーセントでした。ちなみに北海道は、200パーセントを超えています。

さらに、飼料の国内自給率は、食料よりもさらに低い25パーセントとのことでした。飼料用のとうもろこしのほぼ100パーセントが海外からの輸入ですし、大豆は94パーセントも海外産になります。これは牧畜にも鶏の飼育にも不可欠ですから、海外に大きく依存していることになります。 私たちの食生活は、海外からの輸入に支えられているとすれば、本当に何かがあれば、非常に不安定な状態になるということです。それがまさに、もう2年半以上も続くコロナであり、ロシアによるウクライナ侵攻ですし、もっと大きな話であれば地球の温暖化や、今年79億5千万人にも達したといわれる世界の人口増ということになります。ボーダーレス・エコノミーの進展の中で、もはや国内ですべてを自己完結的に賄うのではなく、海外から調達することが一般的になりましたが、やはりそれはいろいろな局面で、リスクと捉えられます。

例えば、さまざまな工業製品に必要なレアメタル・レアアースについて、12年前に日中間の政治的な理由から中国から、輸出規制がかけられたことはまだ記憶にあります。また、韓国がディーゼル車の排ガス処理に不可欠な尿素水を全面的に中国に依存していたために、輸入が滞るということで交通機関や物流にも影響が出ることから、パニックに陥ったということもありました。

それは貿易が政治や社会情勢の影響を大きく受けるということですが、同時に安全で安定的な輸送に関するサプライチェーンを維持することも重要な課題といえます。

サプライチェーンとは、商品が産地から消費者まで届くまでの仕組みのことです。「供給連鎖」とも呼ばれますが、調達から始まって、生産し、流通するまでの間には、もちろん輸送だけでなく、梱包とか保管とか貨物の積み下ろしを含めて、多くの機能があり、それらを効率的に管理するサプライチェーン・マネジメントが求められます。

それが、国境を超えて輸出あるいは輸入されることを思えば、グローバル・サプライチェーン・マネジメントとして、より複雑になり、先ほど説明したようなリスクも考慮にいれる必要があります。グローバル・サプライチェーンに関わるリスクは、「供給のリスク」「輸送のリスク」「ビジネスそのものの商流のリスク」と、大きく3つに分けられるかと思います。これらのリスクを説明していきます。

まずは「供給のリスク」ですが、それは今日の冒頭からお話ししてきたような調達の段階で生じる様々な課題です。

特に多国籍企業などは、最適な場所で原料や部品などを調達する仕組みを構築しています。最適な場所とは、良質かつ継続的に、低コストで購入できる場所ということであり、ますますグローバルに拡大しています。
ただその調達は、安定的に供給されることが必須になりますが、レアメタル・レアアースのような政治的な理由、気象などの影響による収穫量、産地での自然災害や紛争、サプライヤー自体の問題などが大きく影響します。

例えば、東日本大震災でも熊本の地震でも、サプライヤーが被災したために、わずかな数の部品が手に入らないために、自動車の生産がストップしたことがありました。

あるいは10年以上前のことですが、2011年にタイのチャオプラヤ川の洪水で、日本企業なども多数進出していた工業団地が冠水したために、長期間にわたって約500社の操業が停止したことがありました。

その結果、タイで生産されていた部品などが供給されないために、パソコンや自動車産業をはじめとして、大変な影響が生じたことがありました。通常であればスムーズに供給されるはずの部品や原材料が止まることで、様々な業種に影響するということです。製造業をはじめとして、できるだけ余計な在庫を持たないということは、それだけイレギュラーが生じた際の対応が困難になるということです。

では、今日のまとめです。
ボーダーレス・エコノミーで、海外からのものの調達に依存することは当たり前になっていますが、それは安定的な調達を大前提としています。しかしながら、グローバル・サプライチェーンには、「供給のリスク」「輸送のリスク」「商流のリスク」と大きく3つのリスクが存在しています。今日はその中の「供給のリスク」について解説しました。明日は残りの「輸送のリスク」と「商流のリスク」についてお話ししたいと思います。

分野: 国際ロジスティクス 国際経営 |スピーカー: 星野裕志

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