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映画と文化(19):『ブータン 山の教室』

鈴木右文 英文法理論、コンピュータによる英語教育

22/07/18

今日は映画と文化のシリーズです。文化と言っても色々な国の文化がありますが、今日はブータンで作られた映画をご紹介したいと思います。

ブータンはいわゆる幸せな国で有名なところです。製作国には、データベースを調べると中国も入っているようですが、ブータンで撮られていて、日本では去年公開されている映画です。先日見る機会があり、私も初めてブータンの映画を拝見しましたが、なかなか良いクオリティで、アメリカのアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされたりして注目された作品なので、紹介したいと思いました。

ちなみにこの時に国際長編映画賞をとったのは例の「ドライブ・マイ・カー」ですが、それと戦った作品です。ポスターなどを見ていただければわかるのですが、相当な山奥でもブータンという国は教育を全ての児童に、と力を入れているということが見て取れます。山の奥には当然常設の学校というのがなく、集落毎に先生が派遣されているような形だそうですが、この映画でも若い先生が派遣されて、しぶしぶ山奥に教えに行くうちに現地の子供たちとの交流がとても楽しくなって、良い思いで帰ってくるという話です。まだ作品名をご紹介していませんでしたが、「ブータン 山の教室」というタイトルです。

邦題は「ブータン 山の教室」ですが、原題はちょっと違う題です。山の教室というのは当然、山の中にある学校ですが、この映画の主人公である若い教師はいわゆる都会暮らしで、西洋音楽をやろうとしていて、日本でいうところの都会っ子に近い存在です。ブータンにはある期間中は教員をつとめなければいけないという制度があり、山奥に行けと言われて断れないのでしぶしぶその山奥に行くのですが、それがすさまじい山の中だったのです。バスで1日行って、道路が果てたところから歩いても一週間か8日かかるという山奥です。途中で野宿をしたりして行くわけです。

50人くらいの集落で村の人全員に出迎えを受けますが、標高は4800m、車は当然行けませんが、一気に上がったらすぐに高山病になりそうな標高です。電気ももちろんありません。農耕とヤクという動物の飼育で生きている、ブータンの中でも一番奥地にある村だといえると思います。あてがわれた家は、窓はあるけれどガラスのサッシではなく、紙が貼ってあるようなところで、まあ寒い。それで夏の間だけ教師が来て教えるのですが、教材もろくに置いていないところで、一発で不適応を起こしたこの教師は、全く適応できず初日から学校を休むという状態でした。家にはガラスがないと言いましたが、トイレも穴が掘ってあるだけという状態で、都会っ子にはとんでもない場所だったのですが、いわゆる「二十四の瞳」のブータン版といいますか、純粋なキラキラ輝く目を持った子供たちに取り囲まれて、この若い教師がだんだんとその中にはまり込んでいきます。その場所の素朴な文化にも興味を持つようになり、そこで歌われるある女性の民謡にもほだされて、次第に仲良くなり、しまいには去りがたくなるという話です。非常に描き方のレベルが高くて、このような小さな国で、このようなレベルの映画が作られているのだと思うと、全世界でいったいどれだけ優秀な映画が日々作られているのかと思い、それを知らないでいるのは非常にもったいないので、皆さんにご紹介したかったわけです。

出演者の村人は全員本物です。生徒の中には俳優さんもいたようですが、メインになっている子供は本当に村の子供で、この子供は非常に明るく振る舞うのですが、実は家庭が崩壊状態だということが本に書いてあり、映画の中でアルコール中毒で倒れているお父さんのシーンが出てきますが、それももしかしたら本物だったのではないかと思い、見ている方も胸が締め付けられる思いがします。正直な生活が描かれていて、良い所だけ見せているというような映画ではありません。ブータンは幸福度が高い国だけれど、それなりの社会問題があるということもはっきりと描かれていますし、非常に自然な撮り方をしているので見やすいと思います。この流れだとこの教師はこの村に定着するように感じるかもしれませんが、そこまでは無理だったのでしょう、後ろ髪を引かれるように思いながら山を下りていき、最後は自分が行きたかった外国へ行き、当地でこの村を懐かしむというのがラストになっています。

山奥の自然というのも本当に美しく、どこかでスペシャル番組ができそうなすごいところで、そういう映像も見応えがあります。

今日のまとめ:
今日は「ブータン 山の教室」。小さな山国、幸福度で有名な国の映画をご紹介しました。是非見てください。

分野: 異文化コミュニケーション |スピーカー: 鈴木右文

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