QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

タグ

カルタヘナ法②

荒木啓充 バイオ産業

22/07/21

前回はカルタヘナ法という法律について話ました。聞き慣れない言葉ですがコロンビアのカルタヘナという都市の名前です。そこで取り決められた事項を元に日本で作られた法律が、カルタヘナ法という法律で、どんな法律かというと、遺伝子組み換えの技術によって様々な穀物や野菜の収穫量が上がりましたが、それによって自然界に存在し得ない生物種を放つことになり、自然界に今までいた生物の多様性が崩れてしまう。その恐れがあるので、技術と自然界の両立を図るための法律として作られました。

今回は、実際このカルタヘナ法がどのように運営されていくかについて話します。実際の運営の前に、いわゆる遺伝子組み換え作物は現在世界の耕地面積の13~15%程度あると言われています。もっとも多いのが大豆で、続いてトウモロコシです。日本に輸入されているトウモロコシや大豆はほぼ遺伝子組み換え作物です。前回話した遺伝子組み換え生物は、自然界に放たれる際に在来種に影響を及ぼす3つのリスクについては、どのようにクリアされているのでしょうか。カルタヘナ法には日本国内に於いて、遺伝子組み換え生物が、生物多様性へ影響を及ぼさないかどうか、事前に審査することや、適切な使用方法について定められています。具体的には主要形態は2つの種類に分けられるのですが、それぞれのアプローチで生物多様性への影響を防止しています。1つ目が第一種使用と言われるもので、開放系、すなわち自然界に放つことが許可された遺伝子組み換え生物です。具体的には食料や飼料、餌です。運搬することや農地での栽培が許可されています。許可された遺伝子組み換えトウモロコシや、大豆などがこれにあたります。

ここで承認をもらうために必要な生物多様性影響評価書というのがあり、申請者が監督省庁へ提出します。この申請書を学識経験者による検討を経て、前回話した3つのリスク、在来種へ影響を与えないのか、有害物質を出さないかとか、様々な観点から検討をして、影響の恐れがないと判断された場合に、次に国民からの意見、パブリックコメントを募集します。そこで出た意見に対して、データ等を用いて、申請者が各コメントに対して返答をします。パブリックコメントは必ずしも一部の人を対象としているわけではなく、国民全体が意見する権利があり、これは農林水産省のホームページやe-Govという電子政府の総合窓口で受け付けています。

現在日本に出回っている遺伝子組み換え生物はどこかのタイミングでパブリックコメントの募集をしています。このプロセスを経て、最終的に管轄する大臣が承認を出して、実際に食料として流通したり、畑で栽培されたりします。管轄する省庁は農作物等であれば、農林水産省。学術的な研究を大学等でする場合は文部科学省。医療にも遺伝子組み換えウイルスなどが使用されることがあり、これらは厚生労働省です。日本的な縦割りで、全ての案件に環境的な観点に審査が必要なので環境省が入っていますが、目的によって監督省庁が変わってきます。外国から輸入されるものは全て、このプロセスを経ているので、承認審査したものしか販売できないということです。

もう一つの使用形態は、第二種使用と呼ばれるもので、第一種は開放系だったのに対して、第二種は閉鎖系と言われるものです。これは、工場内や実験室など遺伝子組み換え生物がある閉鎖空間から、拡散しないこと、つまり自然界に放たれないことを条件に取扱いが許可されているパターンで、第一種で提出する知見データなどはこういうところで測定されます。

先ほど医療にもこのカルタヘナ法が関わっているという話をしました。具体的な事例として、昨年5月に承認された、アストラゼネカ社の新型コロナウイルスワクチンがあるのですが、これは無害化した猿由来のウイルスです。コロナウイルスの遺伝情報の一部を組み込んだ、いわゆる遺伝子組み替えウイルスが元になっています。自然界には存在しないウイルスです。これも実は接種した人の排泄物から自然界には発生しないウイルスが排出される可能性があるということで、カルタヘナ法の対象です。実際にアストラゼネカ社のワクチンは既に接種されている方もいて、当然これも先ほど言った第一種承認を経ています。なお、日本は海外に比べてカルタヘナ法への基準が厳しめです。例えば欧州などではワクチンのような医薬品はカルタヘナ議定書の対象外とされており、遺伝子組み換え作物を多く栽培しているアメリカやカナダ、アルゼンチンに至っては未締結となっています。それぞれ国の主張がうかがえます。

今日のまとめです。現在市場に出ている遺伝子組み換え生物は、カルタヘナ法に基づく審査を経て生物の多様性に影響を与える恐れがないと承認されたものです。日本は特にカルタヘナ法の基準が厳しく設定されていますが、欧州は医薬品に於いては対象外としており、遺伝子組み換え作物を多く栽培しているアメリカなどはカルタヘナ議定書を未締結国となっています。技術と自然を両立する重要な法律ですが、その運営には各国の国民性や事情が大きく関与しています。

分野: バイオ産業 |スピーカー: 荒木啓充

トップページに戻る

  • RADIKO.JP