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消費者が知覚できる「違い」―丁度可知差異 2 ―

広垣光紀 マーケティング、マーケティング・リサーチ

22/07/12

今日の内容は、前回話した丁度可知差異について、それをどのようにマーケティングに活用するかについて、更に詳しく話をしたいと思います。丁度可知差異という聞き慣れない言葉ですが、何かが変化したと感じられるようなギリギリ、違いを判別できるような刺激の最小の差異、という意味です。

前回、20%値下げすれば多くの人に非常にお得感が高いように感じてもらえるという話をしました。逆にバーゲンで商品の値段を下げても、下げ幅が丁度可知差異を下回っていれば、買い手に値引きでお得だと感じてもらえません。ひとつ実際の例を出してみたいと思います。2011年の話になりますが、ある牛丼チェーン店が牛丼の並のお肉の量を変えました。従来の85gから5g増やして90gにすると発表しました。その分ご飯の量は10g減らして250gにしたのだそうです。変更の理由ですが、その会社の説明によれば、創業以来60以上年もの間、その肉やご飯の量は変更してこなかったそうです。消費者の嗜好の変化に合わせて、好みの変化に合わせて、より美味しく感じられる配分にしたという話でした。この従来の牛丼85gのお肉の牛丼と、新しい牛丼90gのお肉の牛丼の違いが分かるでしょうか。私は見分ける自信が無いです。消費者が違いを簡単に感じ取れるくらいの変化を付けないと効果が無いという良い例だと思います。

もうひとつ、こちらは成功事例ですが、カナダにロブローズという大手のスーパーマーケットがあり、このスーパーはたくさんのプライベートブランドを開発しています。このロブローズのプライベートブランドは、消費者が違いをハッキリと分かる、つまり違いを知覚できるようなことに非常に拘りがあるそうです。例えば、プライベートブランドのチョコチップクッキーでは、クッキーの中に入っているチョコレートチップの割合を、通常のメーカーの商品よりも遥かに増やしたのだそうです。通常のメーカー、例えばナビスコのチョコチップクッキーはチョコチップの量がクッキー生地に対して19%ぐらいだそうです。それに対して、このロブローズのプライベートブランドは、チョコチップの量を一般のそのメーカーの商品の倍以上の量の39%にしたのだそうです。

朝食用のシリアルについても、例えばケロッグのシリアルの2倍量のレーズンを配合したのだそうです。チョコチップもそうですし、レーズンもそうですが、ここまで配合量を大幅に変えたら食べる人にとっては一般のブランド品とはっきりとした違いというのが分かります。ですので、何かライバルの製品と自分の会社の製品を差別化したいという時には、例えば、「全て国産の原材料を使っています」、「特殊な加工のやり方で鮮度を維持しています」、と詳しい説明を付け加えるということも多いかと思います。確かにそのような何かのこだわりや工夫を説明することも大事です。ですが、そういった込み入った説明をしなくても、買い手側が、ぱっと見ただけで、少し食べてみただけで、「これは違う」と分かるような違いを作ってあげる、ということが大切です。

値下げや、クッキーの中のチョコの量など、消費者がその違いに気付くことが望ましい場合は、このように丁度可知差異を越えるほど中身を変えなければいけません。ところが逆に消費者側が違いに気付くことができない、丁度可知差異を越えない程度に変更する方が、企業にとっては良い場合もあります。何か買い手側にとってネガティブな変更をしなければいけないという時には、気付かれてしまうとあまり良くありません。例えば、商品の中身を減らす場合などです。あるいは、最近インフレで問題になっていますが、値段を上げなければならい場合です。ポテトチップスや牛乳などは今に始まったことないですが、以前に比べて微妙に値段が上がっています。あるいは、いつの間にか量が減っていることも多いです。これも、丁度可知差異を上手く利用した例だと言えます。(企業にとっては、原材料の値上げ等を顧客に受け入れてもらうための、苦肉の策かもしれませんが...)

今日のまとめです。前回に引き続いて、丁度可知差異について話しました。この概念は、多くのマーケティング活動で利用されており、商品の値下げでお得感を出したり、製品の改良に利用したりするだけではなく、例えば、値段を上げないといけない、量を減らさなければならないといった買い手側にとってネガティブな変更をする際にも上手く使えばその悪影響をなるべく小さく整えることができます。

分野: マーケティング マーケティング・リサーチ |スピーカー: 広垣光紀

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