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オンライン診療②

荒木啓充 バイオ産業

22/06/14

前回はコロナ禍を機にオンライン診療が一気に普及が進んだという話をしました。そのオンライン診療はメリットもあればデメリットもあるという話でした。今日はオンライン診療を取り巻く産業について話したいと思います。従来の診察では直接先生に会うので聴診や打診、触診など、先生が直接診療を行うことが出来きますが、オンライン診療は画面の前の患者を診るということしか出来ないので、疾患によっては重要な兆候がとれない可能性や、そもそも検査や処置を行う事が出来ないというデメリットがあります。ただこれらのデメリットは見方を変えれば、ビジネスチャンスでもあります。すなわち、デジタル技術や検査技術が進歩すればオンラインで検査が可能になり、後日検査キットなどが送られてきて、患者自身で検査が出来るようになるかもしれませんし、またスマートフォンが使えなくても、音声と入力だけでオンライン診療が可能になってくるかもしれません。

今日は幾つか事例をご紹介します。まずはシェアメディカルというスタートアップ企業で、この企業は最新の音声技術を応用して、聴診音デジタル化デバイス「ネクステート」を開発しました。聴診器はチェストピースという患者の胸に当てる丸い部分から管が伸びて、イヤーチップという耳栓のようなものを医師は耳に当て、その耳栓を通して心音を聞くのですが、この製品は実際に胸に当てる部分、チェストピースに開発したデバイスを取り付けます。そうすることで、遠隔でも聴診が可能になります。実際に患者自身がチェストピースを胸に当てるのはなかなか難しいので、現状では看護師が患者の所に行って補助作業として胸に当てながら、医師の方は画面の向こう側で遠隔にいながら患者を聴診するというのが可能になっています。今まではオンラインで聴診は考えられなかったのですが、テクノロジーがそれを可能にしたという事例の一つです。

他には窪田製薬ホールディングスという眼の病気に特化した医薬品、医療機器の開発を行っている会社の事例があります。患者が自宅で網膜の状態を測定できる検査デバイスを開発しています。通常、眼の病気は実際に病院に行って医者が実際に眼を開いて見たりして、患者の眼の状態を診察します。この窪田ホールディングスのデバイスは双眼鏡のような形をしており、患者がそれを覗く事で、網膜の断面の3D画像を作成します。この画像で網膜浮腫の位置や変化を正確に把握することが可能になり、眼の状態がより詳しく分かります。この画像をインターネットで病院の先生に送り、その網膜の構造の変化や症状の経過を診断できるシステムを確立する事で、患者に最適な治療が施されると期待がされます。

この様に様々なスタートアップやまた大手企業もオンライン診療の周辺領域に進出してきています。パンデミックから2年が経つ今では、オンライン診療は医療サービスの重要な一部になり、この分野のスタートアップへの投資額は過去最高に達しています。累計調達額が1億ドル、130億円以上を超すスタートアップ企業も生まれてきています。ただ一方、ある調査によると、国内のオンライン診療の認知率は40%と言われています。実際に利用したことがあるというのは僅か1.9%となっています。

どういうやり方かわからない、また、いつものとおり病院に行く方が安心という人もいるので、なかなか利用率は伸びていないのですが、これは見方を変えれば、この領域のマーケットはまだ大きなポテンシャルを有していると言えます。オンライン診療に関わる技術は様々な技術が開発されて、スタートアップへの投資も増加していますが、この領域が普及するカギになるのは規制緩和です。コロナ前まではオンライン診療をするにあたっては、まず初診は対面で行うというのが原則でした。またオンライン診療は離島、へき地などの来院が困難な患者に対して行われるべきという、どちらかと言うとオンライン診療に対しては抑制的な内容でした。それがコロナ禍により初診からオンライン診療が可能になり、診察後のオンライン服薬指導も可能となりました。一方で課題点は依然あり、代表的なのが診療報酬の点数の付け方です。コロナ禍以降は多少の改善は見られたのですが、対面診療を比較してオンライン診療における点数が低い状況が続いています。医師側のオンライン診療を行うインセンティブが低くなってきます。技術は日々進歩しているので、今後、オンライン診療に関する制度設計が普及の為の大きな要因になってくると思います。

今日のまとめです。コロナ禍を機にオンライン診療の普及が一気に進みました。オンライン診療は医療産業だけではなく、AIやIoT分野の技術の大手企業、ITベンチャーなど多様なプレーヤーがサービスの提供に乗り出しています。オンライン診療のスタートアップへの投資額も過去最高額に達しており、関連する法律の規制緩和も進み、今後、成長領域になることが見込まれます。

分野: バイオ産業 |スピーカー: 荒木啓充

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