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世界の食糧供給への影響①

星野裕志 国際経営、国際物流

22/06/06

コロナウイルスやウクライナの問題など、まだまだ先が見えない状況ですが、それぞれの長期化
の影響が心配されます。また最近は円安も進行しています。

例えばその深刻な影響が予想されるひとつに、農作物の問題があります。ウクライナは、世界の
穀倉地帯とか、カナダのプレーリーとアルゼンチンのパンパと並んで、「世界の三大穀倉地帯」と
呼ばれていることは、中学などでも学びました。

現在敵対しているウクライナとロシアは、小麦やとうもろこしの世界的な輸出国ですが、戦時下で
穀物生産ができないとか、輸出ができないなど大きな制約を受けるとなると、世界の穀物供給に
深刻な影響を与えることは、避けられないと言えます。今日と明日で、世界の食糧供給への影響
についてお話したいと思います。

食糧自給率の低い日本では、穀物を含めた多くの食糧を海外に依存していることは、広く知られています。その中でも小麦で言えば、そのほとんどをアメリカ、カナダ、オーストラリアの3カ国から輸入されています。

一方で、ロシアやウクライナからの世界への供給量が激減すると、従来から輸入しているこれら3カ国からの輸入にも、大きく影響することになります。供給量もそうですし、価格の上昇が避けられないからです。さらに円安が追い討ちをかけることになります。

日本はロシアやウクライナから輸入していないからと、安心はしていられません。例えば、既に国内のパン業界の市場シェアトップの3社である山崎製パン、フジパン、敷島製パンの各社は、7月からの商品の値上げを発表しています。食パンで、6パーセントから8パーセントの値上げになるようです。

国連食糧農業機関(FAO)は、肉類、穀類、植物油、乳製品、砂糖の5つの食品を中心に、食品全体の平均価格を指数化されていますが、既に今年の3月に過去最高水準に達しています。

つまり、この世界的な食糧の問題は、ウクライナの戦争だけの影響ではないですし、さらにこれから戦争の長期化で、より深刻になっていくと考えられます。

QBSの修了生は、本当にさまざまな方面で活躍されていますが、その1人として、三井物産の食料本部に勤務する瀧本昌平さんが、九州の農業関係者向けに、「世界と日本の畜産飼料情勢 2022-ロシアのウクライナ侵攻及び新型コロナウイルスの影響-」というテーマで、最近講演をされたので、その中から世界の食糧事情について、引用して説明させていただきます。

先ほど世界的な食糧問題と指摘をしましたが、瀧本さんは、「これまで経験したことのない試練が次々に襲いかかってくる」として、地球規模の気象問題、ロシアのウクライナ侵攻から、長期的には世界の人口増加などが影響すると説明されています。

その中でも特に現在の食糧問題、特に価格高騰の要因として、3点を挙げられています。

一つ目が、飼料・肥料価格の高騰です。世界的な気候変動の影響として、南米やアフリカ、米国西海岸などの旱魃や米国南部でハリケーンなどが生じているということで、農作物の生産に必要な肥料代や食肉生産のための飼料コストが急騰しているとのことです。

二つ目は、エネルギー価格の高騰にあります。ガソリン価格が高いことは、誰もが実感されていると思いますが、その結果肥料・飼料・農薬の製造コストや生産に必要な農機具を動かす燃料代に影響しています。

三つ目は、海運による輸送コストの上昇があります。以前にもこの番組で、コンテナ船による輸出が空前の輸送量を記録していること、もはや日本の港に寄港する船舶が減少していることをお話ししました。つまり、海上輸送の需要が極端に高まっていることで、海上運賃が高騰していることが挙げられます。

世界で食糧が不足し、価格が高騰する要因は多様であって、ウクライナでの戦争の終結でも、容易には解決しないと考えられます。食糧不足については、地球規模の様々な問題もありますし、中国での国内消費の拡大による穀物や食肉の輸入の増加や、開発途上国での需要増という消費の拡大が拍車をかけることになります。

また日本国内に目を向けると、労働力不足に伴う物流コストの上昇や円安傾向など、パンの値上げの例をご紹介したように、食糧の輸入だけではなく、最終的な商品の価格上昇に繋がる要素はたくさんあると言えます。

今日のまとめです。世界の穀倉地帯のひとつであるウクライナの問題で、世界的な食糧不足が顕在化しています。
ただ食糧不足や食糧価格の高騰といった問題は、地球規模の気象問題による飼料や肥料の価格の上昇、エネルギー価格の高騰、海上輸送の運賃の上昇、世界の人口増加などが、複合的に影響しているということになります。

分野: 国際ロジスティクス 国際経営 |スピーカー: 星野裕志

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