QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

タグ一覧

次世代医療基盤法①

荒木啓充 バイオ産業

22/05/02

今日は個人の医療情報に関する法律についてお話します。今回と次回で皆さんの医療情報の取り扱いに関する、新しく制定された法律のお話をしていきます。まず、新しい治療法であったりとかお薬であったりとか医療の向上というのはどのようにしてもたらされるのでしょうか。例えば、糖尿病に効くお薬AとBの2つがあり、どちらも糖尿病に対して効果はあるのですが、Aのお薬は70代以上の男性に、Bのお薬は40代から50代の血圧が高めの女性に特に効果があったとします。Aのお薬もBのお薬もきちんと治験という薬の審査を経て承認された薬なので糖尿病に対して効くことは分かっているのですが、特に効く患者群が明らかになればより効果的な治療が可能になる筈です。Aのお薬は70代以上の男性に、Bのお薬は40代から50代の血圧が高めの女性の方に効果があるとどのようにしてわかるのでしょうか。薬を開発する時は先程言った治験というものがあって、大規模に、数百人から数千人にその薬の効果を試してみますが、それでもどうしてもわからないことは沢山あります。Aの薬もBの薬も特定の患者群を対象に治験は実施されません。また、治験では見られなかった副作用が実際に承認されて使い始めて初めて分かるというケースもあります。もし、沢山の医療情報のデータにアクセスすることが出来れば先ほどの例のような新しい発見が出来る可能性があります。今日お話する次世代医療基盤法というのは、医療の向上を目的として沢山の医療情報のデータにアクセスすることが出来るようになった法律なんです。

医療情報は究極の個人情報ですので、医療情報の活用には個人情報を保護することが絶対不可欠です。これまでは、個人情報保護法に基づき、個人の医療情報を第三者に提供するためには大学等で行う学術研究などで、予め医療情報が提供されることに対して患者さんから同意を得なければいけませんでした。これが千人程度であれば同意を得るためにかかる労力はそれ程でもないのですが、万人単位だと大変です。これを説明するのは現場の医師の方なのですがこちらも大変になります。この次世代医療基盤法の制定によって、確認を省略することが可能になりました。次世代医療基盤法は個人情報保護法の特則分野に位置付けられています。特則というのは通常は認められる、もしくは認められないものに対して例外を設ける規定で、通常は認められないのですが次世代医療基盤法によって患者さんの同意を省略することが可能になりました。この法律の制定によって、先ほど言ったように一人一人の患者さんに医療情報の提供の同意を得る必要がなくなりました。ただし、オプトアウトと言って、もし患者さんがご自身の医療情報の提供を止めて欲しいと言った場合は、これをただちに停止することは可能になっています。これまで医療機関ごとに医療情報を収集していましたが、この法律によって医療機関、例えば九大病院と福大病院などを超えて医療情報を収集することが可能になります。

例えば、九大病院である病気の治療を受けたとします。その後、東京に引っ越してその病気が再発して新宿のクリニックにかかってちょっと症状が酷かったので東大病院で手術をしたとします。手術後はAという薬を飲んで経過良好でしたというケースの場合、これまでであれば医療機関ごとに医療情報は匿名化されていたので九大病院で匿名化されたデータと新宿のクリニック、東大病院のデータの紐づけが出来ませんでした。時間を追って行われた治療が追いかけられませんでした。しかしそれらのデータが紐づけ出来るようになったということは、例えば引っ越して別の病気にかかってそれから症状が悪化するような変化があっても過去に遡ってきちんとデータが残っているので、それを見ながら治療が出来るようになるということです。

どういう処置をしたらどういう経過がよくなったというようなデータが積み重ねればこういった症状の場合はこういった処置が良いという新しい発見もかけられることになります。次世代医療基盤法はあらゆる医療情報を多面的に収集することで、これによって医療の向上に繋がる研究開発が可能になると期待されています。

今日のまとめです。最近ビッグデータという言葉をよく聞きます。医療分野においても大規模な医療情報を活用することでより質の高い医療の提供や医学・薬学の発展、新しい医療サービスの実現など様々な可能性が期待されます。医療情報のビッグデータ化を可能にするための法律が次世代医療基盤法です。

分野: スピーカープロフィール タグ バイオ産業 |スピーカー: 荒木啓充

トップページに戻る

  • RADIKO.JP