QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

タグ

オミクロンとウクライナの日本への影響

村藤功 企業財務 M&A

22/05/17

今日はオミクロンとウクライナの日本への影響の話です。コロナウィルスはデルタ株の後にオミクロン株が流行しました。1日あたりの感染者数は、最近は1日あたり約4万人という状況ですが、ピーク時では10万人程度までなりました。オミクロンは第六波と言われていますが、その前のデルタの第五波では1日あたりの感染者数は2.5万人程度でした。今の感染者数4万人はデルタのピークよりも1日あたりの新規感染者数が多く出ているという状況です。

新規感染者数としては多いですが、重症化のリスク等は株によって違います。例えば人工呼吸器を付けなければいけないような重症者は、デルタのピークは1日あたり約1,000人いましたが、オミクロンのピークは約400人しかいなかったので、オミクロンの時は緊急事態宣言も無く、35都道府県がまん延防止措置を取りました。まん延防止措置は福岡では3月6日に解除になり、東京を含めた全都道府県が3月21日に解除になりました。しかし1日あたり2.5万人程度までに減った後にまた少し感染者が増えています。BA.2というオミクロンの中の別の変異株による感染者数が増えています。

それでも重症者数は少ないので経済を再開していかなければならないと、少しずつ海外から受入を始めています。今年の2月からビジネスと留学生を受け入れて、1日あたり1,000人からスタートし、3月になって1日あたり3,000人に、5,000人に、7,000人にと段々増えてきて、5月初めで1日あたり約1万人を受け入れています。最近では1日あたり2万人程度まで受け入れ、ビジネスと留学生だけではなく観光客も受け入れようとしています。しかしコロナ前は1日あたり6万5千人程度を受け入れていましたので、まだコロナ前には戻っていません。

ロシアがウクライナに攻め込んだことで、エネルギーの値段が上がりました。日本はロシアからのエネルギーの輸入に関して、LNGは止めていません。LNGで大きいガス田が2つあって、サハリン1、サハリン2と言います。サハリン1もサハリン2も一番出資していたエクソン・モービルやシェルが撤退しました。ところがサハリン1は日本の商社の伊藤忠や丸紅が関わっていて、サハリン2は三井物産や三菱商事が関わっています。商社経由で日本の電力業界やガス業界はこれらがないと成り立たないという状況にあります。日本政府としては、LNGを止めては日本が困る一方で欧米と足並みをそろえようと、最初に「ロシアからの石炭輸入は止めます」といいました。一番影響が少ないのでそう言ったのです。最近ヨーロッパと共に言い始めているのが「石油もそろそろ止めましょう」ということです。ところがLNGはおそらく止められない状況にあります。石炭を止め、石油もそろそろ止める予定ですがLNGは、いくら欧米と協調したくても当分は止められません。

ロシアからの輸入を止める止めないに関わらず、原油価格は上がっており、ガソリンの値段も上がっています。それから食べ物の値段等も小麦粉はウクライナから一部輸入しているので食べ物の値段も上がっています。そこで心配なのが円安です。日本が円安になっているのは知っていますか。欧米がインフレになってきたので、欧米の中央銀行はそろそろ金融を引き締めようという動きに出て金利を上げ始めました。ところが日銀の黒田総裁は、日本はまだまだ経済活性化のために金融緩和が必要だと言って金利を低いままで保っているため、その欧米と日本の金利差のギャップで円売り、ドル・ユーロ買いに走るということが起こっています。また、日本はエネルギーの輸入国でLNGや原油を外国から輸入しなければならず、それらの値段が高くなると輸入額がどんどん大きくなり、貿易赤字になります。貿易赤字でも海外で金融資産が稼いでいる額の方が、海外が日本に対して持っている金融収益より少し多いので、経常収支としては今までプラスでしたが、貿易赤字が膨らんでくると経常赤字になるかもしれません。これも円が売られて円安になる一つの要因です。

今日のまとめです。オミクロンの第六波は終息に向かいまん延防止措置は解除になりましたが、BA.2によって1日あたりの新規感染者数が増えており、なかなか終息に至りません。欧米で社会経済活動が再開され始めていますが、日本はまだゆっくりと開国しようとしている最中です。ロシアのウクライナ侵攻で日本は欧米と一緒に制裁にも参加していますが、日本はロシアに平和条約交渉を止められ、また、石炭や石油は止められてもLNGは止められず貿易赤字や円安が懸念されるという状況になってきています。

分野: 財務戦略 |スピーカー: 村藤功

トップページに戻る

  • RADIKO.JP