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「現代リスクマネジメントの歴史~その起源は?1~」

平野琢 企業倫理、リスクマネジメント

22/04/06

今回は現代社会でよく耳にする言葉となったリスクマネジメント、その歴史的な起源について2回連続で考えていきます。まず今日は第一日目として現代的なリスクマネジメントの特徴というところについてお話していきます。
リスクマネジメントとはそもそも何かという話ですが、これは様々な定義が有りますが、おおよそ想定されるリスクを事前に予想して管理する事によって、リスクがもたらす不利益を最小化する、その活動がリスクマネジメントと定義出来るかと思います。近年では不利益の最小化というものはやはり利益の増大を産み出す事から、リスクマネジメントはマイナスを減らすという活動のみだけではなく利益を生み出す側面を持った活動としても注目を浴びています。ではこのリスクマネジメントのそもそもその起源はどこにあるのでしょうか。歴史を遡ってみると危険を想定してそれに備えるという行為自体は、実は紀元前から人間の諸活動の中に見て取れます。

記録を見てみると、例えば紀元前1世紀からその後の3世紀に渡って栄華を誇った古代ローマ帝国というのは、天災や犯罪など様々な危険な状況というものを想定して、技術や都市の設計というものを工夫することで市民を守ることというものが試みられました。例えば、コロッセオに代表されるようにローマの都市は石造りです。多くの建物が石造りで敢えて木造にしなかったのは、小規模な火災が延焼してしまって都市全体の火災にならないようにするための備えだと言われています。木材の方が加工しやすいので、すぐに家などを建てやすいのですが、それを敢えて行わなかったということです。また、ローマでは大変多くの国々と戦争をし、戦争にはやはり男性の働き手が出ていたのですが、その様な働き手を戦争で失った遺族が困らないように、遺族の相互扶助制度、現在の生命保険に当たる仕組みもあったと言われています。これが制度化されてその上実践されていたという記録が残っています。

ローマの話はヨーロッパの話ですが、我々がいるこのアジアの歴史を見ても、紀元前の中国の孔子によって編纂された書経という思想をまとめた書物の中には「備えあれば憂いなし」という言葉が残っていると言われています。危険を想定してそれに備えるという行為は人間の歴史と共に発展したと言っても過言ではないようです。

危険を想定してそれに備えるという行為が昔から存在するという事は分かりましたが、その行為と現代でのリスクマネジメントには何か違いがあるのでしょうか。諸説はありますが、危険を想定してそれに備えるという古来からある行為と現代で言うところのリスクマネジメント、またはリスクの概念というもののどこが大きく違うかというと、そのリスク、危険の大きさというものに対して確率論や統計の概念を通じて危険を把握しているというところが大きな違いであり特徴であると考えられます。現代のリスクマネジメントではリスクを損害規模、つまりは災難のもたらす悪い影響だけではなくて、その被害をもたらす例えば地震とか洪水とかその発生確率も合わせて捉えて危険性を判断しています。地震のリスクに例えると、地震は大きく揺れて建物等を壊します。1回の地震における震度やマグニチュード、これが損害の大きさとします。但し、この損害の大きさだけではなくて、それが何年に一度発生するか、そういう発生周期も含めて危険性というものを判断している、これが現代リスクマネジメントの大きな特徴であるという事が言えます。この思考はリスク判断において、すごく重要な役割を果たします。

例えば百軒の家が浸水する洪水と、千軒の家が浸水する洪水、どちらが危険で対策すべき災害でしょうか。ここの情報だけを見ると、勿論一千軒の家が浸水する洪水に対策をした方がいいとなります。ではここに発生確率の情報を添えて考えてみましょう。例えば千軒の家が浸水する洪水が千年に1回しか起こらない。但し、百軒の家が浸水する洪水が5年に1度起きる。こうなるとどうなるでしょうか。話は違ってきます。やっぱり5年に1度っていうリスクに対しての対策を早急に立てないといけないと思います。

こうやって確率論の情報を添えてみると、千年に1度の洪水よりもまずは5年に1度発生する洪水に対策しなければという答えを出すことが出来ます。現代のリスクマネジメントでは、リスクを損害の規模、簡単に言うと災難をもたらす悪い影響、これだけではなく、被害をもたらす様々な出来事、地震とか洪水です、これらの発生確率からも捉えています。様々なリスク、例えば地震、火災、これらを比較する時に1回の出来事で発生する被害の大きさだけではなく、その出来事が日々の生活の中でどのくらいの確率で発生するか、これも合わせて評価してマネジメントしているという事になります。この客観的な発生確率も含んでリスクを分析するというやり方は、人がどの危険や災難に備えるべきかを決定する際に客観的にかつ合理性のある意思決定に導いてくれます。

今日のまとめです。現代社会において、様々な場面で取り組まれるリスクマネジメント、古来から危険に備えるという行為自身は存在しましたが、現代のリスクマネジメントの大きな特徴は、危険を想定してそれに備えるという行為の中に確率論を用いているというところだと言えます。

分野: 企業倫理 経営リスクマネジメント |スピーカー: 平野琢

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