QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

タグ

QTnetモーニングビジネススクール > タグ一覧 > タグ企業家リーダーシップ

平成・令和の日本を代表する 2 人の経営者2

廣瀬 聡 企業家リーダーシップ

22/04/26

5回に亘り、「平成・令和の日本を代表する経営者に学ぶ」というシリーズでお話しています。
前回に引き続き、孫 正義さんのお話です。今日は、特に彼が会社のあり方を柔軟に変えてきた歴史や背景についてお話をします。

私は今グロービス経営大学院というところで教鞭をとらせて頂いていますが、そこでソフトバンクの事業モデルの変遷を通して私達が何を学ぶことが出来るのか、徹底的に議論していくクラスがあります。今日はその中から少しだけお話したいと思います。

ソフトバンクの大きな特徴は、環境に合わせて会社のあり方を大きく変えてきているということです。ソフトバンクという会社の歴史を整理すると、大きく4つのフェーズがあります。
フェーズ0:創業期。いわゆるパッケージソフトの流通をしていた時代です。
フェーズ1:株式公開をしてインターネットバブルの時代にM&Aを活発化し、事業を多角化していった時代。
フェーズ2:ブロードバンド事業、或いはボーダフォンジャパンを買収しての通信事業体として大きくなっていった時代。
フェーズ3:IoTやAIの事業にシフトする「ソフトバンク2.0宣言」をした時代。
まさに今がそのフェーズ3にあたります。

このように、同じソフトバンクという会社ですが、実はかなり違った会社の形態に変化しながらこれまで歩んできている、というのがこの会社の特徴的なところです。

前回お話した通り、私自身が孫さんのプロジェクトをお手伝いしていたのが丁度フェーズ1から2に切りかわる、M&Aを活発化していった時代から通信事業体に向かう端境期の時でした。孫さんが次に集中すべき事業は何かをすごく議論されていました。その中には本当に実際に進んでいくブロードバンドのような議論も出ていましたし、通信事業体といった議論も出ていたということがよく記憶に残っています。面白いのは、それ以外のこともかなり仰っていましたが、結果的にはその中から選んで、選んだものに全集中していったというところです。
何年も先の未来を見ながら、次にどういうものが来るのかということを考えながら選んでいく姿、それがこの会社の特徴ではないかと思います。普通の会社は、過去に成功していると、その成功体験の延長線上に自分達の姿を描こうとします。しかし、孫さんの特徴的なところは、今の自分を一回脇に置いて、「次に来る時代」というものを考え、そこから今の自分達の会社がどう変わるべきか、本来は同じ会社なわけですが、事実上の新しい会社として目指すべき方向を定めていました。そして、方向だけではなく社内運用のルールや採用、評価、報酬制度などまで、作り変えていきます。
一般的な会社では、従来のルールの上で新しい新規事業をやりましょう、等と考えるわけですが、孫さんのすごいところは、目指す姿を考えるとそこから逆に自分達自身を大きく変えていくことを考えるところです。普通の会社はこれまでの成功や成長の体験があると新しく変わるということに対して当然ながらアレルギー反応を起こすことが多いと思います。しかし孫さんは違っていました。

本当に覚悟をして、かつ自分自身の行動も含めて変えていかないと組織を本当の意味で変えることはできません。そういうことをわかった上で、孫さんは新しいフェーズに入る度に過去の成功体験を捨てるということを彼自身から徹底して実現していった。そしてそれを周りに広げていったということなのではないかと思います。 

ここで一つの例をお話します。
通信事業体としてのソフトバンクが大きく成長したその後フェーズ3、2015年以降だと思いますが、IoTやAI事業にシフトを行うため、孫さんは組織の形を大幅に切りかえることを決断します。これまでは通信事業をするソフトバンクがあくまでも中心的な存在でしたが、これをあくまでも一つの事業というふうに、表現は強いかもしれませんが格下げ的な位置付け見直しを行い、持株会社が孫さんの指揮の下でこれからの時代に行うIoT、或いはAIに対して積極的に投資をしていく、投資会社のような運用形態に切り替えていくことにしました。さらに、より大きな影響力を持つためにビジョン・ファンドというものを作り、そこに例えばサウジアラビアなど海外の投資家の方の参加も依頼しながら自分達の投資の影響力も高めていくことに力を入れていきます。
会社が経営を管理していくためにモニターしていく経営管理指標というものがありますが、これについても投資会社として持つべき経営管理指標に切り替えていき、その領域に強い専門家を積極的に採用・登用していくということをします。最後の最後には、ご自身が日本を離れて最先端の情報が行き来するシリコンバレーに常駐し、世の中の流れ、そして投資をする会社を選んでいく体制を導入します。
こうやってトップが過去の成功体験を切り離して時代に合わせた会社にゼロから作り上げることは、過去に成功をしてきた日本の企業、或いは社員から経営トップに上り詰めたような会社では出来ない代物ではないかな、と思います。

では、今日のまとめです。
未来に向けて、過去の成功を捨てて新しい環境に合わせて自分達の箱(会社)をゼロから作り上げる。そういう覚悟とリスクをとる姿勢が、ソフトバンクが今も普通の日本の企業と違い成長し続け、スポットライトを浴び続ける大きな理由なのではないかと思います。

分野: 企業家リーダーシップ |スピーカー: 廣瀬 聡

トップページに戻る

  • RADIKO.JP