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睡眠ビジネス①

荒木啓充 バイオ産業

22/03/07

今日は、睡眠と睡眠ビジネスに関するお話です。いきなり質問ですが、睡眠時間はどれくらいとられていますか? 2018年のデータですけれど、日本は世界で最も睡眠時間が短い国と言われていて、その平均は7時間22分とされています。一方で、最も睡眠時間が長い国は、南アフリカの9時間31分です。約2時間の開きです。日本は睡眠後進国と言われていて、世界で一番睡眠時間が短い国です。では睡眠不足は、どの様な影響を及ぼすのでしょうか。

2017年の流行語大賞に睡眠負債という言葉がノミネートされました。これはアメリカのスタンフォード大学の睡眠研究センターの創設者であるデメント博士によって提唱された言葉で、日々の睡眠が借金のように積み重なって、心身共に悪影響を及ぼす恐れのある状態のことです。今日・明日の借金くらいだったらいいのですけれど、債務超過を起こすような睡眠不足は生活や仕事の質を低下させるだけではなく、肥満や糖尿病を始めとする生活習慣病や鬱病、認知症等の発症リスクを高めることが報告されています。

アメリカの大学の研究では、睡眠の質が高い人ほどアルツハイマー型認知症の原因物質の蓄積が抑えられることが報告されています。また、寝る子は育つとよく言われますが、これは科学的に証明されています。成長ホルモンが最も多く分泌されるのが寝ている時なので、質の良い睡眠をとることが子どもの成長には不可欠です。最近は小さい子どもにも夜型が増えています。大人の生活習慣が寄与しているところが大きく、大人がきちんとした生活習慣を見直すことが重要になってきます。病気を引き起こすくらいの睡眠不足の債務超過ではなくても、先程言ったように、普段でも寝不足状態では頭がぼうっとして集中力が続かなかったり、判断力が低下したりします。

てきめんに仕事に影響するので、睡眠は大事です。慢性的な睡眠不足の脳は、お酒を飲んで軽く酩酊している状態に似ていると言われています。酔った状態で気分はよくなりますが、中々集中出来ません。仕事をすれば重大なミスも増えてきます。過去に睡眠不足が原因で、沢山の悲しい事故が起きました。代表的なのが1986年にスペースシャトル「チャレンジャー号」が打ち上げ直後に爆発して、乗組員7人全員が亡くなりました。実は、長時間労働の睡眠不足で、NASAの職員が機体の整備不良を発見出来なかったことが原因とされています。アメリカではこの事故を契機に、3,000もの睡眠センターが全米で設立されて、睡眠への研究と国民への啓発活動が活発化しました。アメリカのシンクタンクの調査によると、日本の睡眠不足による国家的経済損失は年間15兆円に相当するとのデータもあります。GDPに占める割合では、なんと世界ワーストなのです。

会社の経営者だったら社員の睡眠不足により生産性の低下は避けたいので、様々な企業が睡眠改善に取組んでいます。昼過ぎ、午後2時から3時頃に眠気が襲ってくることはありませんか? しかも、お昼ご飯食べた後は本当に眠たいですよね。これは、アフタヌーン・ディップという一つの生理現象です。眠気のピークは普通夜にあるのですが、実は、午後2時くらいにもう一つの眠気のピークがあると言われています。逆に、この時間帯に短い時間で15~20分間のお昼寝をすることで、それ以降の仕事の効率が上げられると言われているのです。実は、厚生労働省もお昼寝することを推奨しています。

実際、これに取り組んでいる企業もあります。例えば、三菱地所や東急不動産ホールディングスという大企業は、会社の中になんと仮眠室を作って従業員にお昼寝の場を提供しています。実際、お昼寝を導入した社員の労働生産性が向上したというデータが出ています。企業ではないのですけれど、実はお昼寝を取り入れている学校もあります。福岡県の有名な明善高校では、昼休みに10分だけ眠る午睡タイムを取り入れているのです。これは強制ではなくて希望者だけですが、このシステムを取り入れた後は東大を始め難関大学への合格率が増えたそうです。我々の時代もこういう仕組みがあったらもっと成績が良くなっていたかもしれないですね。これに限らず、従業員に睡眠プログラムを提供する企業もどんどん増えてきています。しっかり寝てしっかり働いてくれということです。

今日のまとめです。日本は世界で最も睡眠時間が短い国と言われ、最も長い睡眠時間の国と比べると約2時間の差があります。慢性的な睡眠不足は生活習慣病や認知症の発症リスクを高めることが報告されている上に、睡眠不足は健康や幸福度、労働の生産性にまで影響を及ぼします。日本における国家的経済損失額は15兆円との試算も出ており、GDPに占める割合では世界ワーストです。たかが睡眠、と侮ってはいけません。近年は健康経営の観点から会社の中に仮眠室を作ったり、従業員の睡眠改善に取り組む企業が増えています。

分野: バイオ産業 |スピーカー: 荒木啓充

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