QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

タグ

民間外交と渋沢栄一①

平野琢 企業倫理、リスクマネジメント

22/01/03

今日のテーマは、昨年の末に見事最終回を迎えた大河ドラマの主人公であり、そして、様々な書籍や雑誌で取り上げられている渋沢栄一の民間外交における活躍についてお話していきたいと思います。今日はその導入として、民間外交についてお話していきたいと思います。まず、民間外交とは何かというお話ですが、簡単に言えば、その名の通り民間レベルにおける外国への交渉や交友、働きかけの全般を意味します。政府間で行われる外交は公式外交とか政府間外交と呼ばれるのですが、これらの外交ではどうしてもカバー出来なかったり色々な理由で解決が難しい問題を解決することを試みる役割が期待され、民間外交は現在非常に多くの場所で行われていると言えます。

例えば、スポーツや芸術などの分野における国際親善の試合とか、外国の産業団体、自動車とか船とかの産業団体の間で行われる談話会とか人材交流、そして技術交流などもこれらの良い例と言えます。これらの民間外交は、政府間の外交関係を補うことが目的で行われている場合もありますが、公的機関とは全く別のレベルで民間人または民間組織同士が交流を行う場合もあり、今は様々な形で実践されていると言うことが出来ます。民間外交というものがそもそも注目され始めたのには様々な説があるのですが、第一次世界大戦以降だったと言われています。第一次世界大戦は、非常に多くの世界を巻き込んだ悲惨な戦争でした。これを契機に何が起きたかというと、市民が国際問題に対して非常に興味関心と問題意識を持って自ら行動して意見を表明することが活発になったわけです。さらに、第一次世界大戦で非常に多くの武器が作られ軍事技術が発展したのですが、その技術が社会に転用されて交通機関や通信網が飛躍的に発展したことによって、結果、実際に民間人も遠隔地に国境を越えてどんどん行けるようになって、それまで政府しか行けなかった場所が民間人でも行けて交流出来ることが可能になったということです。

さらに、国際問題が多様化して政府レベルでは解決出来ない国際問題が発生し、補う機能としての外交手段として民間外交が非常に社会から求められるようになったという背景があります。中には、政府間交渉によって通常であったら解決とか緩和が行われるような貿易摩擦みたいな難しい問題だって民間外交によって解決出来た例もあったりするのです。古い例ですけど、1970年代に実は日本とイギリスの間で民間用の電子部品の輸出規制を巡って非常に深刻な貿易摩擦が発生したのです。実は、政府間交渉ではなくて、両国の関係する業界で組織された日英電子業界会談おける民間外交によって緩和されたという記録が残っていたりします。さらに、現代では社会の意見や風潮に加えて、国民感情が非常に政府の意思決定に影響を及ぼすことが指摘されています。したがって、民意の形成に大きな影響力を持つ民間外交は、現代社会においてはもしかしたら、より大きな意義を持っているということが示唆出来るかもしれません。

さて、今まで民間外交についてご説明させて頂いたわけですが、実は草分け的な存在として渋沢栄一という人が挙げられます。民間外交は日本も歴史的に取り組んできたわけですが、その歴史を辿ってみると実は不思議なことに渋沢栄一に辿り着くのです。渋沢栄一の名前を聞いた場合、多くの皆さんは経済や産業分野での活躍を思い出す人が多いかと思います。また、日本女子大など多くの教育機関の設立や運営に携わったことから、教育分野での活動をイメージされる方も多いかと思います。

しかし、晩年の渋沢栄一の活動は民間外交の分野でも非常に注目するべき点があるのです。記録によると、渋沢栄一は1909年に数え年で70歳の古希に達した際に実業界を引退する表明を行っているのですが、その前後の十数年間実業界での活躍と人脈を生かして、海外要人の歓迎とか自ら海外へ渡航して視察や産業間交流を行うなど、非常に積極的な民間外交を展開しています。さらには、寄付金などを通じたチャリティーなどを実施して様々な民間外交を展開してきたと言えます。一つ例を挙げると、明治39年、アメリカのサンフランシスコで大地震がありました。実は、日本の財界では災害見舞金を拠出するようなシステムもなければ政府を通じてこういう見舞金を送る制度がなかったのです。非常に助けたいけど助けられない、困っていた所に名乗りを上げたのが渋沢栄一。彼は自分が頭取をしていた第一銀行から、当時として多額の一万円の寄付を申し出たのです。渋沢栄一の行為がリーダーシップとなって、結果的には様々な場所から現金が集まり、十七万円程の寄付が当時アメリカに対して義援金として送られました。

今日のまとめです。民間外交は政府間外交が成せない様々な機能を持っていると言えます。経済分野における活動が注目される渋沢栄一ですが、民間外交分野における活動も注目すべき点があります。

分野: 企業倫理 経営リスクマネジメント |スピーカー: 平野琢

トップページに戻る

  • RADIKO.JP