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リモートワークツール「Remotty」

松永正樹 コミュニケーション学、リーダーシップ開発、アントレプレナーシップ

21/12/20

今回は、リモートワーク用のツールをご紹介します。リモートワークが始まってから、お互いの顔が見えなくて不安とか、オフィスにいた頃と違って上司や同僚に気軽に相談が出来なくなったといった声をよく聞くようになったと思います。一方で、いつでもコミュニケーションがとれるようにということでZoomやTeamsを繋ぎっぱなしにするというのも、これはこれで常時監視されているような感じがして、仕事に集中できない。音声を出したりチャットに書き込んだりすると全員に通知がいってしまうので、気軽なコミュニケーションはかえってしにくい。リモートでの「良い塩梅」のコミュニケーションを実現するための方策をなかなか見出だせないといった問題、これは多くの組織で見受けられるものかと思います。

今回ご紹介したいのは、まさにそういった問題の解決に特化したものです。チームメンバーの顔は見えるし、気が向いた時にピンポイントで相手を選んで声をかけやすい。でも監視されているという感覚はほとんど感じないように工夫されている、そんなツールの名前は「Remotty」と言います。ソニックガーデンというベンチャー企業が開発・運営しています。ソニックガーデンは、コロナ禍が発生するよりもずっと前からフルリモートワークの体制をとっている会社で、Remottyも元々は社内用に開発したリモートワーク用のシステムらしいのです。本日はこのツールの特徴と併せて、どのあたりに工夫があるのかを分析していこうと思います。

Remottyは申込制の業務用ツールで、ソニックガーデンの窓口に利用を申し込むと、まず無料の相談カウンセリングとお試し用のアカウントが発行されます。それを使ってログインをすると、チャットを開いた状態のZoomのギャラリー・ビューに似た画面が表示されます。画面上にはその時にログインをしているチームメンバーの顔が並びます。Remottyが起動している間は、システムが2分置きに自動でパソコンの前にいるあなたの画像を中程度の画質で撮影して、それが随時更新されながら表示されていくというシステムです。ここが工夫の一つ目で、常時リアルタイムで動画撮影されていると、一時たりとも気が抜けないし、監視されていると感じます。けれども2分置きに音声無しの静止画を撮られるだけということであれば、割と意識しなくなるものなのですね。ちょっとのことですけど、感覚的には随分違ってきます。

また、画面に表示されるのは小さなサムネイル画像サイズなので、その人がどんな感じかとかいるかないないかはわかるけれど、細かいところまでは映らないので、心理的負担はかなり小さくなります。さらに、この一工夫によってデータの通信量も非常に小さく抑えられていて、公式ホームページによると、50名のメンバーが1時間利用した場合、Zoomだと大体1GBとか2GBの通信量が発生するのですけれども、Remottyだと5.6MB、つまり約1/250になるとのことです。その為に、繋ぎっぱなしでも負担感がない。お互いの顔が見たいとか、何かあった時に気軽に相談したいという元々のニーズからすると、やはり業務時間中は基本的に繋ぎっぱなしにしたいはずなので、通信量が小さいというのも重要なポイントになります。

加えて、Remottyではチャットにも面白い工夫が二つ盛り込まれています。一つ目はRemottyではチャットにいくつか段階が設定されています。まず自分が書き込んだ内容が、その時ログインしているメンバー全員に表示されるいわゆるチャット機能、そしてもう一つがセミオープンのチャットで、宛先を指定できて特定の相手に宛てているのだけど、その内容は全体のチャットにも表示されるメッセージというのがあります。これはリアルのオフィスで誰かの席にいって、声をかけて話しているというイメージなのだそうです。なので、2人でコミュニケーションしているのだけれども、その様子と声は周りにも伝わるという状況です。なので、「面白そう」と他の人が思ったら、その人も混ざっていくということが発生しやすいわけです。そして勿論、内容が他の人には表示されないプライべートメッセージ機能もあるので、これらを使い分けることができます。

Remottyにおけるもう一つのチャットの大きな工夫が、チャットに書き込む内容がどんどん流れていって、基本的に保存も検索もできない設定になっていることです。これは一見不便なだけに思われるかもしれませんが、実は深い洞察に満ちています。というのも、後々までログが残ると分かっていると、定型の挨拶だとか、他愛もないつぶやきはすごくしにくくなるんですね。だって、ずっと残ってしまいますから。メールとかSlack等で、「おはようございます」って、なかなか書かないじゃですか。もしそれをやると、チーム全員が「おはようございます」「おはようございます」...と投稿を繰り返すのでページがそれで埋まってしまうし、なんだか読み飛ばしもしちゃいけない雰囲気になって義務感みたいなものまで生じてしまう。しかし、ログがどんどん流れていくRemottyの場合、そこを気兼ねせずに思い付いたことをパッと書き込みやすい。ログを残しておいた方がいいような仕事上の相談とかスケジューリングというのは、別途メールやSlackを組み合わせて使います。まずRemottyで声をかけて、込み入った話になってきたら、「それはSlackに送っておいて」みたいな感じですね。

これを迂遠だと思うか、それとも痒い所に手が届く工夫が凝らされた秀逸な仕様だと感じるかは、リモートワークにおけるコミュニケーションをどれくらい重要視しているかによると思います。何故なら、その場でパッと立ち現れては消えていくその場限りの声掛けやつぶやきの共有というものこそ、今のリモートワークで最も欠けているものであり、同時にチームメンバー間での繋がりを強化するのに効果的なものだからです。「おはようございます」という挨拶とか、仕事をやっていて「終わったー!」というつぶやきに対して「おつかれさま!」という声掛け、こういったものはコミュニケーション学の堅い表現を使いますと、アイデンティティの確認という行為にあたります。何気ないメッセージのやり取りを通じて、我々は仲間だ、同じアイデンティティを共有しているのだということを確認しあっているわけです。そしてこの仲間意識があることによって、いざという時の連携だとか相談もスムーズにいくようになります。特にリモートワークになって以来、チーム内のコミュニケーションについて問題意識を持っている方にとって、Remottyは非常に有用なツールとなるのではないかと思い本日ご紹介した次第です。

今日のまとめです。本日はリモートワーク用のツールとして、Remottyをご紹介しました。メンバー同士お互いの顔が見え、気軽に声をかけたり何気ないつぶやきを共有したりしやすいといった特徴があり、リモートワークをスムーズにするための工夫がたくさん盛り込まれています。リモートワークになって以来、チーム内のコミュニケーションに課題を感じているという方は、是非Remottyを検索して詳しくご覧になってみてはいかがでしょうか。

分野: リーダーシップ 対人・異文化コミュニケーション論 組織行動 |スピーカー: 松永正樹

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