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映画と文化(12):がんばっていきまっしょい

鈴木右文 英文法理論、コンピュータによる英語教育

21/09/07

今日は邦画です。前回メジャーな作品ばかりでなく、少しマイナーな作品も紹介しますと申し上げていました。今日ご紹介する作品は、少しマイナーな作品かと思います。邦画で「がんばっていきまっしょい」という作品です。1998年に日本で公開されて、監督は磯村一路という方です。

最初にストーリーを簡単に御紹介しておこうと思うのですが、舞台は四国の松山です。時代は1970年代後半ぐらい、5人の女子高生が部活でボート競技にかけた青春を描いています。それだけだと、ありがちな話と思われるかもしれませんが、非常に良く出来ています。主人公は高校に入って自分の目標が見つからない、何をやっていいか分からないという、よくある若者時代の悩みを抱えた女の子です。この方が入学する前に、海で夕日の煌めく逆光の元にゆったりとボート練習している風景を目にして、「これはいいな」と思うのです。その光景をよく覚えていて、高校でボート部に入りたいと思いました。ところが女子のボート部がなく、男子だけのボート部しかないのです。そこで、何とか一人で押しかけ入部して、一人だと試合に出場出来ないので、何とか5人揃えないといけない、他の4人をスカウトして集めるところから始めるわけです。そこにコーチ役がやってくるのですが、このコーチがちょっと陰鬱なところがあって、あまりやる気がありません。そのコーチとの掛け合いも少しずつギアがかみあっていくように出来ていて、最後には青春らしいというか、思いっきり頑張ったけど試合では優勝というわけにはいかなかった、というエンディングを迎えますが、その瞬間には、コーチも5人の若者達のエネルギーに引っ張られてグループのメンバーとして非常に良い役どころになりました。非常にリアルで等身大の、「自分達もこうだったよね」というのがピタッと来るような演出です。

テレビドラマ等で妙にはしゃぎまわったり、セリフが自然ではないことがありがちですが、この作品は本当にどこにでもいる女の子達を描いていて、そこが非常に良いです。田中麗奈のデビュー作です。田中麗奈はそれまでに他の映画に出たことが無いので、観客側に先入観が全く無く、一生に一回だけのデビュー作は、見る側にとっての楽しみもあるし、逆に演じる側は難しいのかもしれないですけれど、ここが非常にうまくいったと思っています。彼女の年齢よりも少し落ち着いた感じがするような感じがします。悩み多き、あまりニコニコ笑うような子ではない子を演じるとすごくピタッとくるわけです。

田中麗奈のハマリ役でもあるし、私もとてもハマってしまいまして、大学でも1回2回と授業で取り上げたことがあります。この映画の監督は元々、成人映画の出身の方ですが、この監督が青春とかスポーツとか仲間同士の関係とかをきちんと描くと、こういう作品になるのか、という良い出来栄えです。見ている観客としては、最後はやったー!万歳!と言うような終わり方ではありませんが、こういうほろ苦い思いを自分達もしたかったな、という羨ましい思いをもたらしてくれるような作品です。

私は青春映画を見ると「ああ、いいな」というだけではなく、必ず自分に投影します。多くの観客は青春時代として描かれている登場人物達よりも年齢が上の人が多いので、たいていノスタルジアを感じるわけです。その意味では非常に成功した映画です。そして絵の作り方もとても上手で、試合は湖で行われるのですが、水面が鏡のように静かで、そこをボートが流れていく、上では5人の女子高生達がものすごい筋肉の使い方で歯をくいしばって頑張っている、競技だけれども、彼女達の人生そのものがそのように一生懸命3年間を駆け抜けようとしている、ということがよく分かって、動と静のコントラストが良くて、私は感心して唸ってしまったわけです。

この作品はいくつかヒントがありまして、舞台になったのは松山ですが、松山東高校というところでロケをしていて、原作者がそこの出身です。本当にここの部活で「がんばっていきまっしょい」という掛け声をかけるのが習わしなんだそうです。そして森山良子さん、森山直太朗さんが出ているので探してみて下さい。それから主題歌が非常に印象的です。韓国のリーチェという方の音楽で「オギヨディオラ」、私も韓国語で何を意味するのかあまりよく分かっていませんが、とても良い主題歌です。
"Your eyes are clear enough to see through"


今日のまとめ:
青春の大佳作「がんばっていきまっしょい」、主人公は田中麗奈さんです。テレビ版もありますが、映画版はとても良いので是非探して御覧になって下さい。

分野: 異文化コミュニケーション |スピーカー: 鈴木右文

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