QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

タグ

オークション

目代武史 企業戦略、生産管理

21/09/16

今日は、オークションについてお話してみたいと思います。前回ダイナミック・プライシングについてお話しました。これは商品やサービスの値決めの方法として、市場の需要と供給の状態に応じて柔軟に価格水準を調整する考え方や仕組みのことでした。ダイナミック・プライシングというのは野菜とか鮮魚などの生鮮食品では、昔から取り入れられてきました。また、ホテルの客室や航空券の座席など在庫のきかないサービスでも、需給に応じて価格を変動させることが一般的で、ハイシーズンの時には価格が高くなるということです。

市場のメカニズムを使って価格を変動させる方法に加えて、取引の参加者がより直接的に意思表示をする方法があります。それが今日お話するオークションなのです。オークションというと、絵画の売買を思い浮かべる方が多いかと思います。絵画の売買にはサザビーズやクリスティーズといった有名な老舗の競売会社があります。サザビーズは1744年にイギリスで設立されています。現在はアメリカのニューヨークに本社をかまえています。もう一方のクリスティーズも、同じくイギリスのロンドンで1766年に設立された会社です。先程何億というお話がありましたが、絵画のオークションの最高落札額はレオナルド・ダ・ヴィンチ作と言われている、サルバトール・ムンディです。2017年11月15日、約4億ドル、日本円にして約508億円で落札されたそうです。これはアブダビ文化観光局によって落札されたそうで、オイルマネーですね。

どうやって価格が決まっていくかということですが、基本的にオークションは提供者によって出品された商品に対して最も良い購入条件を提示した買い手に売却される取引方法です。一般には出品した商品に対して買い手同士が買い取り価格を提示して、最も高い価格を提示した者が購買権を得るわけです。このように、次第に価格を競り上げていく方式をイングリッシュオークションと言います。絵画や宝石などのオークションではイングリッシュオークションが典型的に用いられています。サザビーズやクリスティーズなどの競売会社が元々イギリスで設立されたことを考えると、価格の競り上げ方式の競売がイングリッシュオークションと呼ばれるのも頷けると思います。このような方式のオークションは、身近な例で言うとヤフーオークションみたいな個人間の取引もあれば、中古車オークションのように中古車販売業者同士の取引もあるわけです。このように、オークションにわざわざイングリッシュオークションという形容詞を付けるということは、別の形式のオークションもあるということが想像出来ますよね。その1つがダッチオークションというものです。

ダッチオークションとは、イングリッシュオークションとは逆に値段を競り下げていくという方式です。つまり、売り手が提示した最高値から段々と呼び値を下げていって最初に買い手がついた価格で取引を成立させる競売方式です。なぜこれをダッチオークションと言うかですが、オランダと言えばチューリップがあります。その生花市場で採用された方式だからダッチオークションというわけなのです。この方式は、要するに商品を早い者価値で落札するために取引のスピードが早いという長所があるのです。実は、我々の身近でもダッチオークション的なプライシングがされているのですが、分かりますか?スーパーなどの総菜コーナーの割引がダッチオークションの一例と言えます。ある程度の時間になったら2割引きのシールが貼られたり3割引きのシールが貼られたりするので、早い者勝ちで取った人が買い取れるわけです。もっと待てば値は下がるかもしれないけれど、自分の欲しい商品が他の人に買われてしまうかもしれない。それを避けるには高い値段で買うのか、あるいは待つのかという駆け引きが売り手と買い手の間で発生するわけです。

このように、イングリッシュオークションにしろダッチオークションにしろ共通しているのは、適正と思える価格の水準を買い手自らが意思表示することでダイナミックに価格水準を決定する点です。同じ商品でも、その価値は消費者によって様々です。本来はもっと高く売れたかもしれない商品もあれば、安ければ売れたかもしれない商品もある。それをオークションという形で価格を変動させることで、買い手自身に適正価格を提示してもらう事にオークションの価値があると言えるでしょう。

今日のまとめです。オークションは売り手によって出品された商品に対して、最も良い購入条件を提示した買い手に売却する取引方式です。価格を段々と競り上げていくイングリッシュオークションと、逆に呼び値を引き下げていくダッチオークションがあります。商品の価値を買い手が判断し、買い手自身が適正価格を意思表示する点に特徴があるプライシング方法と言えると思います。

分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

トップページに戻る

  • RADIKO.JP