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心理的距離の解釈レベルについて

三上聡美 産業組織心理学、社会心理学

21/09/02

今日は、心理的距離の「解釈のレベル」についてお話します。
前回、実際に測定が出来る客観的、物理的な距離ではなく「主観的な距離感」のことを心理的距離と言い、『時間的距離』、『空間的距離』、『社会的距離』、『仮想的距離』の4種類があることを紹介しました。

私たちは、物事を判断する時に実は心理的距離の遠さ近さで物事の判断をすることがあります。この判断の違いを「解釈のレベルの違い」と言い、高レベルの解釈と低レベルの解釈に分けることが出来ます。どういうことかと言うと、ここでは「高レベルの解釈」を解釈の仕方が抽象的で、「低レベルの解釈」の仕方が具体的になっていると意味付けます。心理的距離が遠い場合は、高レベルの解釈をして、心理的距離が近い場合は低レベルの解釈をする傾向があるそうです。心理的距離が遠い場合の高レベルの特徴としては、長期的な観点で判断する物事についての目的を考えます。それは、「望ましさ」や「本質性」などを重視する抽象的な解釈になります。そして、心理的距離が近い場合の低レベルの特徴としては、短期的な観点で判断する物事についての手段を考えます。また、「実用性」や「副次的なこと」を重視して具体的な解釈をします。

例えば、ある人が4月から一人暮らしを始めるために部屋探しをするとします。この時の解釈のレベルの違いを考えてみましょう。4月から一人暮らしをするとして、前年の10月に一人暮らしをすることを決めて準備するとしましょう。準備期間は半年あり、心理的距離は遠い場合と考えてください。

この時に「どんな部屋に住みたいか」を考えた時に、「お洒落な所がいいな」、「綺麗な所がいいな」など"望ましさ"が重視されるのではないかと思います。これが『高レベルの解釈』です。

一方で、一人暮らしをすることをその年の2月に決めた場合、準備期間は2か月になります。この場合の心理的距離は近くなります。この時「どんな部屋に住みたいか」を考えた場合、「お洒落な所」よりも、「すぐに部屋が借りられるかどうか」、「家賃や引っ越し費用の予算」などより"具体性"や"実用性"を重視するのではないかと思います。これが『低レベルの解釈』です。

では、別の例として携帯電話を買い替える時を考えてみましょう。みなさんは携帯電話を買い替える時のきっかけは何かありますか。

例えば、新機種が発売される3か月後に携帯電話を買い替えようとしている場合、購入までの心理的距離は遠くなるため、その時の"望ましさ"を重視することになります。つまり、『高レベルの解釈』となります。おそらく機能の充実性や、サービスの良さ、色やデザインについて考えるのではないでしょうか。

しかし、携帯電話が急に不具合を起こして数日以内に買い替えた方が良い場合は、購入までの心理的距離は近くなります。そのため、実用性を重視した『低レベルの解釈』を行います。すぐに新しい携帯電話を使えるようになる必要があるため、違和感なく使いやすい、すぐに入手可能かなどを考えるのではないでしょうか。


では、今度は旅行に行く時のことを考えてみましょう。今はコロナ禍で難しいですが、例えば2、3日の休みをとって遠くまで旅行をしてみようかなとします。みなさんはまず何を決めますか。「どこに行きたい」という具体的なことから決めるか、それとも「おいしいものを食べたいから~に行きたい」というところから始めますか。

「~に行きたいからここに行きたい」、「これを食べたいから~に行く」など目的から行き先を決めるパターンの場合は、「どこに行きたい」という場所を中心に、周りで楽しめるところを探し始める方もいらっしゃるかもしれません。

一方、どこに行って何をするという明確な計画がない場合は、ちょっと遠くまで足を延ばして温泉に入っておいしいご飯を食べて、ちょっとあの辺を観光してという感じで、割と抽象的な計画から始めるのではないでしょうか。これは「2、3日」という時間的距離と「遠くまで行く」という空間的距離が遠いからだと思います。

では、1日休みが取れそうだからちょっとどこかに行きたいとなったらどうでしょうか。休みが1日の場合には、「何が出来るか」を考える必要があるため、「2、3日」どこか遠くに旅行に行く時よりも近場を考えるでしょうし、もう少し具体的にも計画を立てるのではないでしょうか。これは1日という時間的距離と近場で行ける所を考えるという空間的距離が近いからだと思います。このように、心理的距離が近い場合と遠い場合では物事の判断が異なります。

では、今日のまとめです。
今日は心理的距離の解釈のレベルについてお話をしました。心理的距離の遠さ、近さで解釈のレベルが異なります。解釈のレベルとは、抽象的な解釈をする高レベルと、具体的な解釈をする低レベルに分けられます。心理的距離が遠い場合は高レベルの解釈をして、心理的距離が近い場合は低レベルの解釈をします。

分野: 社会心理学・組織心理学 |スピーカー: 三上聡美

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