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心理的距離

三上聡美 産業組織心理学、社会心理学

21/09/01

今日は「心理的距離」についてお話します。読んでそのまま、「心の距離」のお話です。
コロナ禍と言われる今はなかなか人に会うことが難しい状況ですが、実際には会えなくても「この人とは年に一回は会っているような気がする」という人はいませんか。

実は、私には毎年お互いの誕生日にLINEでお祝いを伝えあったり、エイプリルフールに面白いネタが送られてきたりするほど連絡を取りあっている友人がいます。でも、よく考えてみると私はその人と20年以上会っていません。電話も何年前にしたか定かではないほど声も聞いていません。20年間のほとんどが文字でのやり取りになるわけですが、なぜか20年も会っていないという気はしていません。おそらく5年ぶりに連絡を取る知り合いよりは会っているような気がしています。感覚が麻痺しているだけなのかもしれませんが、おそらく私がその人を遠くの存在の人だと認識していないからだと思います。つまり、「物理的な距離」ではなくて「心理的距離」を近く感じているからだと思います。

では、「心理的距離」は何かと言いますと、実際に物差しなどで測定ができる客観的、物理的な距離のことではなく、「主観的な距離感」のことを「心理的距離」と呼んでいます。この「心理的距離」には4つの種類があります。

1つ目が『時間的距離』です。
例えば、「今から一週間後」を考えるのと「今から一か月後」を考えるのでは、おそらく「一週間後」の方が近くに感じていて、「一か月後」は遠くに感じると思います。これは、時間の長さにしてみれば一週間後と一か月後は異なりますが、例えば仕事の締切が一週間後だと急がなければとなりますが、一か月後だと少し余裕があるなと思いませんか。このように、心理的に影響を与えるような距離が心理的距離の時間的距離の違いです。

2つ目は『空間的距離』です。
今いる場所から「1キロメートル離れた場所」と「50キロメートル離れた場所」を比べてみると、「1キロメートル離れた距離」は近く感じるけれども、「50キロメートル離れた場所」は心理的距離が遠く感じてしまいます。ある芸人さんが、関門海峡の向こう側を海外だとネタで言っているのを聞いたことがあります。九州に住んでいる人にとっては、もしかしたら本州や四国は心理的距離を遠くに感じているのかもしれません。これも実際の距離ではなくて、あくまでも心理的距離の話です。

例えば、自分が九州にいると「東北」は物理的に遠く感じますが、そこが単身赴任をしていた場所だったとしたら、身近に感じる場合があります。それは、「心理的距離が近い」ということです。これは、『空間的距離』のお話ですが、次にご紹介する『社会的距離』にも当てはまるかもしれません。

3つ目は『社会的距離』です。
「自分に関する出来事」と「自分以外の人の出来事」を比べると、「自分に関する出来事」の心理的距離は近く感じられ、「自分以外の人の出来事」は心理的距離が遠く感じられます。先ほどお話した20年会っていないけど遠くに感じていない私の友人の例は、この『社会的距離』に当てはまります。20年会っていなくても年に数回だけでもやり取りをしていると、「そろそろ連絡来る頃かな」など相手のことを考えるため、 『社会的な距離』は近く感じることになります。

4つ目が『仮想的距離』です。
「実際の出来事」と「想定の出来事」では、「実際の出来事」の方が心理的距離は近く感じますし、「想定の出来事」だと心理的距離は遠く感じます。心理的距離は、物事の判断にも関係することがあります。

例えば、私は最近レンジを買い替えたのですが、これまで使っていたレンジは実家で使っていた物を初めて一人暮らしをする時に持ってきた物でトータル23年ほど使っていました。1年程前にもうそろそろ買い替えようかなと思い、その時に半年から1年後ぐらいに買おうと思いました。ここで言う半年から1年後と言ったらまだまだ先の話なので、買い替えるまでには十分時間がありますし、デザインや色、機能など自分好みの物を見つけようと思っていました。ところが、レンジを買い替える前にレンジ台を新しくしてしまい、前のレンジのサイズが新しいレンジ台に合わなくなってしまいました。そこで急遽新しいレンジを買う必要が出てきてしまいました。一週間以内に新しいのを買うことになってしまったため、デザインも自分の好みではなく、レンジ台のサイズに合うレンジを探すという実用性重視になってしまいました。
ここで何が言いたいかといいますと、「心理的距離」の遠さ近さで物事の判断が違ってくるということです。つまり、心理的距離が遠い出来事については抽象的に解釈して本質的な点や望ましさを重視します。そして、心理的距離が近い出来事については、具体的に解釈して実用性など副次的な点を重視します。

では、今日のまとめです。
今日は「心理的距離」についてお話しました。「心理的距離」とは「主観的な距離感」のことで『時間的距離』、『空間的距離』、『社会的距離』、『仮想的距離』の4種類があります。

分野: 社会心理学・組織心理学 |スピーカー: 三上聡美

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