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「よきリーダーは哲学に学ぶ 」 ④~真のエンゲージメントとは~

芹沢宗一郎 組織・リーダーシップ研究

21/07/05

 これまで 4 回にわたり、組織の構成員が仕事を通じて「よく生きる」ための環境をつくるのがリーダーの役割であり、リーダーが留意すべきことを哲学的視点も交えながら話してきた。最終回は、組織で働く構成員自身に目を向けたい。

 みなさんは、今の自分は人間らしく輝くことを自ら選択しているか? それとも他人のせいや自らの運のなさ、置かれた状況のせいにしていないか?人間は自分で自分の行動を選択できる。マンデラは、今後政治活動から一切手を引くと誓えば釈放される選択肢もあるなかで、獄中にとどまることを選んだ。自らの意志でルールを定め、それを受け入れるということが「自律」だ。カントは、自律した人間が集まれば理想社会「目的の王国」が実現できると考えた。また、ソクラテスも、正しいことをしようという「気概」が、エネルギーの源泉としてのその人の誇りにつながるという。より強く人生を肯定する実存主義を確立したニーチェは、絶対的な真理や神の存在を否定すると同時に、歴史は直線的に進歩するのではなく、永遠に循環運動を繰り返すという仏教の輪廻転生と同じ永劫回帰していると考えた。しかしそれでも諦めてニヒリズムに陥
るのではなく、厳しい現実も運命として敢然と受け入れ、今の一瞬一瞬を大切に前を向いて生きていく能動的な姿勢をもつ超人であれと説いたのだ。

 さらに同じく無神論的実存主義で有名なサルトルはこう唱える。「人間とは、自らがどのような存在なのかを決定するものがはじめからあって存在するのではなく、すでに存在する中で自らがいかなる存在なのかを決めていく。私たちが生きている世界の状況の中で、どのような「決断」をしたのかによってその人間「本質」は決定される」 さらにこう述べる。「人間が社会と関係する中で生きていく以上、自らの意志で自由に行動した責任は自分だけでなく社会に対しても負わなければならない」 これがアンガジュマン、エンゲージメントの真の意味である。

 このように、自由とは、自らコントロールできる自らの意志で正しいと信じることを行動し、同時にその結果に責任を負うこと。ただ、責任を負うことは、間違いを犯すリスクを受け入れること、言い訳できない退路を断つことなのでためらい苦しむ。われわれはみなそうしたためらいや苦しみと戦っている。しかし、それに対峙しベストを尽くせるか、それとも楽な道を選択し逃避するか、この違いで組織からエンパワーメントされる度合いも決まる。

 企業組織を超えて国レベルでも同じだ。現在のコロナ禍もそうだ。国民一人ひとりに行動はエンパワーメントされているわけだ。国が悪い、誰が悪いと他責にばかりするのではなく、一人ひとりが自分自身に厳しく矢を向け、自らの日々の行動が、今だけではない未来の社会を生きる人たちにも大きな影響を与えるんだという強い自覚と責任意識が求められる。

 まとめ:自分を活かせるのはどんな環境なのかわかったら、そこからは自分次第、自身の
行動にかかっている。自由とは、現実を受け入れ、自らの意志で行動を選択し、その結果
に責任をもつことである

分野: リーダーシップ |スピーカー: 芹沢宗一郎

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