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「よ き リーダーは哲学に学ぶ 」 ③~コミュニケーションのあり方とは~

芹沢宗一郎 組織・リーダーシップ研究

21/06/23

 前回、リーダーの重要な役割として、権限は構成員のために公正に行使されねばならない、すなわち意欲も能力もある人が活躍できるようエンパワーメントすることだとお話しした。今回は、エンパワーメントする際の胆となるコミュニケーションのあり方について先人の哲学者から学んでみたい。

 人間は、自分の役割のなかで主導権を握っていると感じていたい欲求がある。そのため、リーダーは理性にもとづき自分の意志を「伝える」コミュニケーションが最善の方法だと思い込みがち。しかし、「伝える」コミュニケーションはコントロールされている感覚を相手に与えてしまう。結果、メンバーは不安感、受け身の姿勢、依存的傾向を高めていき、リーダーはそれをメンバーの抵抗だと感じて、さらに「伝える」コミュニケーションを強化してしまい悪循環に陥る。最大の障害はそうしたリーダーのコミュニケーションのあり方にあることを本能的にはわかっているのに。たとえば、危機感を煽るコミュニケーション、理念やビジョンに対する経営の思いを一方通行で伝えて満足しまっている状態、新たな戦略に沿った経営の KPI を経営が設定し管理することなど、きりがない。

 哲学者は次のように説明する。ジョナサン・ハイトは、物事の意味というのは、理性を通じて他者にも伝達できるという思い込みがあるという。人間が新しいことに直面したときにまず起きるのは、その人の過去の経験にもとづく直観的反応(感情)だ。したがってリーダーはメンバーの感情がどこからくるのかを知ろうとする必要がある。コミュニケーションというのは、どうしても自分の正論を押しつけがちだが、相手がどういうレンズで物事を見ているか理解することが必要だということ。

 また、スコットランドのディヴィッド・ヒュームも、人間に行動を起こさせるのは、理性ではなく他人と経験を共有し影響を与え合うことから生まれる感情であるという。理性は、様々な感情を覆い隠すための手段として使われる場合がある。これも理性に訴える一方通行のコミュニケーションの罠をいっている。さらに古代ギリシャのストア派の哲学者エビクテトスは、リーダーは責任を担いながらも、そもそも自分自身がコントロールできることとできないことを区別する必要があるという。リーダーが自分でコントロールできるのは自分の考え方、行動、反応だけであり、他人の考え方や反応を思い通りにコントロールすることはまず不可能だとあきらめる。他人をあるがままに受け入れるべきだとしている。人は誰でも、よく生きるための自分なりに意味を見出す余裕があれば、その意味を集団行動につなげる道筋も自ら見出せるものなので、どう考えるべきかを相手に口うるさく伝える必要はない。リーダーは自分のコントロールできることだけに集中することで、結果的にリーダー自身の不安、ストレス、苦悩も最終的に少なくなる。

まとめ
 リーダーがよかれと思っている「伝える」コミュニケーションが、かえってメンバーの欲求を損ねてしまう。リーダーであれ、そもそも他人をコントロールすることなどできない。エンパワーメントとは、メンバー一人ひとりが考え、よく生きるための他者とのコラボレーションが生まれるようにすること。

分野: リーダーシップ |スピーカー: 芹沢宗一郎

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