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世の中に悲観的な話が多い理由

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

21/06/03

今日は、世の中には悲観的な話が多い、というお話です。情報を発信する人、ニュース等で伝える人、それにコメントする評論家、政府を批判したい野党、不安を商売に活用したい人、などがそれぞれの立場で悲観的な情報を発信するからです。そうした人々のせいで、我々が見聞きする話は実際より悲観的なものが多いので、その分を割り引いて理解する必要がある、というわけですね。私はこれを「悲観バイアスがかかっている」と呼んでいます。

たとえば、円高になったとします。輸出企業は大声を出します。「円高で苦しいです。社員は今年のボーナスは諦めて下さい。下請け企業は値下げをお願いします。政府には御支援いただきたいです。」といった具合ですね。でも、原材料を輸入している会社は黙っています。原材料が安く買えるので儲かっているはずなのですが、そんな事を言えば労働組合から賃上げ要求が来ますし、部品メーカーから値上げ要請が来ますし、悪くすると税務署も来るかも知れませんからね。

ニュース等を伝えるマスコミも、悲観論を多く伝えます。一つは取材が簡単だからです。輸出企業は、喜んで取材に応じてくれるでしょうが、輸入企業はなかなか取材に応じてくれないでしょう。それ以前に、輸入企業からは何の情報も出てきていないわけですから「輸入企業にも取材に行こう」と考えつく記者が少ないのかも知れません。それ以外にも、マスコミが悲観的な情報を伝える理由は色々ありそうです。楽観的な話よりも悲観的な話の方がおお客の受けが良いから、という事もあるでしょう。これについては、マスコミが悪いというよりは、お客がそういう情報を求めるから、という事なのでしょうけれども、いずれにしてもマスコミ情報に接したら悲観バイアスがかかっていると考えて用心した方が良さそうです。

マスコミの中には、政府を批判することが使命だと考えている所もあるようです。そうした所は世の中で起きている困った事を大きく報道し、素晴らしい事は小さく報道するようになりがちです。私としては、マスコミは政府を監視するのが役割で、批判すべき所は批判する一方で評価する所は評価して欲しい、と考えているのですが。

評論家も悲観的な話をします。評論家にとっては、「心配な事はありません」というより「こんな困った事が起きていて、こんなリスクもありますから、しっかり備えなければ」という方が得なのですね。その方が賢そうに見えますし、人々が面白がって話を聞いてくれますから。悲観論を述べるのであれば、色々な面白い話が出来ますよね。「アメリカでこういう問題が起こり、中国でこういう問題が起こり、国内でこういう問題が起こるでしょうから、日本は悲惨な事になります」といった感じです。一方で楽観論は「アメリカでも中国でも国内でも、特に何も起きないでしょう」というので、これでは聞いていて退屈です。

野党はどうでしょう? 野党はマスコミと異なり、政府を批判するのが仕事なのかも知れませんから、政府に都合の悪い話をするのはわかります。世の中でうまく行っている事には触れずに問題が起きている事だけ指摘する、というのはある意味で正しい戦略なのでしょう。しかし、情報の受け手としては、野党というのはそういう所だ、という事がわかった上で、情報の解釈に際しては注意する必要があるでしょう。野党のみならず、政府を批判したい人は、世の中で起きている困った事を大きな声で紹介し、素晴らしい事は紹介しない、という傾向がありますね。

不安を商売に活用したい人もいます。「災難が起こりそうです。災難を避けるために壺と印鑑を買いましょう」という人もいるようですが、より一般的なケースとして、「年金が貰えないのだから、投資で増やさないといけません」といって投資商品を売りつけようとする人などをイメージしてもらえれば良いでしょう。

このように、世の中には悲観的な情報が優先的に流れてくるメカニズムが備わっているのです。私たちは世の中を知らない間にサングラスを通して眺めていて、「世の中は暗いのだ」と信じてしまっているわけです。サングラスをかけている事に気づいたら、「サングラスを外したら世の中はどう見えるのだろう」という事を考える習慣をつけたいものですね。言うは易く、行うは難し、ですが。

突然ですが、政府の年金運用は儲かっていると思いますか、損をしていると思いますか?

政府が年金運用で儲かると小さく報道され、損すると大きく報道されるので、損をしていると思っている人も多いようですが、実際には儲かっています。これだけ株価が上がっているのですから当然なのですが。損していると思っていた人は、今日の私の話を聞いて、サングラスを意識するように心がけていただけると有難いですね。

今日のまとめです。世の中には楽観的な情報より悲観的な情報が多く流れるメカニズムがそろっています。情報に接しいた際には、それを考えながら注意深く解釈したいですね。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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