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銀行の金庫には少ししか現金がない

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

21/06/02

今日は、銀行の金庫には、少ししか現金が入っていない、という話です。銀行の金庫は立派ですから、さぞかし大量の札束が積み上がっているのだろうと思っている人が多いと思いますが、実はそうでもないのです。私たちが銀行に預金をすると、銀行はその金を金庫にしまわずに、企業に貸して金利を稼ぎます。預かった金をそのまま金庫に入れておいたら銀行が赤字になってしまいますから。

でも、おお客が一斉に預金を引き出しに来たら困りますよね。どうするのでしょうか。じつは、その点については統計学の世界に「大数の法則」というのがあるので、それを利用しているのです。コインを3回投げて3回とも表が出る確率は結構高いけれども、1万回投げると表が出るのは大体5000回だ、というのです。数学の式は難しいので、結論だけ紹介しますと、投げる回数が増えてくると表が出る数は確率どおりになっていく、という事なのです。

この「大数の法則」を銀行が利用しているわけです。預金者の100人に1人が預金を引き出しに来るとすると、100万人の預金者のうちで引き出しに来るのは大体1万人だろう、と考えて良いことになります。

一方で、預金者百人に1人が預金を預けに来るとすると、同様に100万人の預金者のうちで預金を預けにくるのは大体1万人だろう、と考えて良いので、預けに来る人と引き出しに来る人が同じなら、銀行の金庫に現金を入れておく必要はないだろう、と考える事ができるわけです。もちろん、ぴったり1万人ずつというわけではないので、少しは現金を持っておく必要がありますが、それほど多額に持っておく必要はないのです。

ただし、これには例外があります。銀行の取り付け騒ぎです。取り付け騒ぎとは、銀行が倒産しそうだという噂が流れると、預金者が一斉に預金を引き出しに殺到するので、金庫がカラになって現金が不足してしまうのです。これは銀行にとって深刻な事態です。問題は、特に問題のない銀行でも倒産するという噂が流れただけで取り付け騒ぎが起きる可能性があることです。これは銀行の悩みの種です。

これに対しては、二つの対策がとられています。一つは預金保険制度、もう一つは日銀による現金輸送です。

預金保険についての細かい話は省略しますが、大雑把に言えば、銀行が倒産しても、庶民の預金は政府が代わりに払い戻してあげる、というものです。そうした制度があるので、庶民は銀行が倒産するという噂を聞いても銀行に預金を引き出しに走って行ったりしないように、というわけですね。これは素晴らしい制度なのですが、大きな問題があって、そうした制度がある事を知っている人が少ないので、噂が流れると大勢が預金を引き出しに走るだろう、と言われていることです。もっと宣伝をすれば良いと思うのですけどね。

日銀による現金輸送とは、銀行の金庫が空になって預金の払い戻しが出来なくなると、「銀行が倒産するという噂は本当だったのだ」という噂が広がって、一層多くの預金者が銀行に殺到するでしょう。それを防ぐために、日銀が現金輸送車で現金を運んでくれる事になっているのです。大量の札束を見て安心する預金者も多いでしょうし、そのまま預金を引き出さずに帰宅する人も多いだろうと言われています。

このように、大数の法則は絶対ではありませんから、取り付け騒ぎの時のための対策をしっかり準備しておく事が必要なわけです。銀行と並んで、保険会社も大数の法則を利用してビジネスを行なっています。自宅が火事で焼ける確率を1000分の1だとすると、多くの契約があれば契約件数の1000分の1の家が火事になると考えて良いからです。

火事になった時に支払う保険金の1000分の1を保険料として貰えば、それで保険金が払えるわけですね。もちろん、コストと利益は上乗せする必要がありますが、今日はコストと利益の話は忘れておきましょう。お客が10人しかいない保険会社は怖いですよ。誰も火事にならなければ保険料がそのまま利益になりますが、誰か1人でも火事になったら倒産ですから。というわけで、大数の法則の有り難さがわかると思います。

保険会社にも例外があります。滅多に起こらない巨大な災害の保険は、普通は何も起きないので保険料が丸儲けですが、起きたら保険会社が倒産してしまうかも知れません。それは怖いので、再保険という制度があります。世界中の保険会社がお客となって、世界で一番大きな保険会社と契約をする、と考えて下さい。

再保険の会社は、世界中の保険会社が「大災害保険」の加入してくれるわけです。多くの国にお客がいれば、世界中のどこかで大災害が発生する確率はそれほど低くありませんから、大数の法則を使ってビジネスが出来るのですね。もっとも、再保険にも例外があります。南海トラフ等で巨大地震が起きたら、巨大保険会社も倒産してしまうでしょうから、契約を断られるのです。そこで、地震保険は日本政府が再保険契約を結んでいる、というわけですね。

今日のまとめです。銀行や保険のビジネスは、大数の法則という統計学の基本を利用しています。多くのお客がいれば、預金を引き出すお客の数や火事になるお客の数などは確率どおりに近い数になる、という前提でビジネスを行なっているのです。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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