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心理的安全性とは

松永正樹 コミュニケーション学、リーダーシップ開発、アントレプレナーシップ

21/06/22

前回は、社員一人ひとりが自分の個性やバックグラウンド、経験を安心してオープンに話すことが出来る職場環境が、組織の問題解決力やイノベーション創出力を高めるというお話をしました。そこでカギとなるのが、「心理的安全性」です。本日は、この概念についてご説明します。心理的安全性は最近取り上げられることが増えた概念なので、耳にされたことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。ただ、誤解された形で広まっているケースもあったりするので、興味を持たれた方は是非心理的安全性に関する第一人者で、ハーバードビジネススクール教授のエイミー・エドモンドソンが書いた「恐れのない組織」という本をお読みいただければと思います。

心理的に安全な職場環境はどういったものか。これは、エドモンドソン曰く、「自分のアイデアを表明したり、組織の問題点を指摘したり、自分のミスを認めたりした時に、そのことで不利益を被ることはないと信じることができる状態」です。たとえば、自分が所属する組織の慣行についておかしいとか非効率的だと感じたポイントを口にしたりしても、そのこと自体で問題にされることはない。よくあるのは、内容は分かるけれどもそういうことを口にするものではありませんとか、あるいは、言い方がおかしいとか、とにかく内容の妥当性よりも発言をしたことそのものに対してペナルティが課せられてしまうというケース。これは、心理的に安全とは言えません。逆に、内容について私は納得しない、けれども貴方がそういうことを口にするのはとても良いと思う、という受けとめ方が自然になされる組織は、心理的に安全な環境が整っていると言えます。

より具体的には、心理的安全性は「話しやすさ」「支援への信頼」「挑戦への志向性」そして「新規歓迎」という4つの要素からなると言われます。第一に、話しやすさは、どんな内容の話でも安心して口に出来るかどうかを指します。どんな組織であっても、定例の報告だとか良い内容の連絡等は、比較的口にしやすいものです。一方で、想定外のミスや事故の報告など、事前に予測してないネガティブなメッセージについても、社員がためらわずにすぐ報告出来るかどうか。ここが、話しやすさに関して、違いが露わになりやすいポイントです。

心理的安全性の第2の要素は、支援への信頼です。これは、トラブルが発生したりミスを犯してしまったりした時に、上司や同僚、組織が自分の味方でいてくれると感じられるかどうかを指しています。よくあるケースですけれども、経営陣や上司が「うちの社員はなかなか新しいことにチャレンジしようとしないのですよ」とおっしゃる。それではということで会社を覗かせてもらうと、支援への信頼が職場に欠けているというケースが多いです。ヒトは本来好奇心旺盛で、リソースがあればそれを使って何かやってやろうという意欲を秘めているものです。それなのに消極的になっているということは、本人にやる気がないのではなく、むしろ湧き上がろうとするやる気を必死になって抑え込んでいる。なぜなら、本当にやる気を出して何かすると痛い目をみるから、というケースがほとんどです。つまり、自発性ややる気を抑え込ませている何かがその職場にあるというようなことです。典型的なのは、何か提案をすると仕事が増えるだけとか、あるいはチャレンジをしてみて結果が出なかった場合にはそれで責任を問われる。けれども、成功したからと言って何か良いことがあるかというとあまりない。これが、支援が期待出来ないと社員が思っているケースということになります。

支援への信頼と関連する第3のポイントが、挑戦への志向性です。組織には、大きく「挑戦を志向する」か、「洗練を志向する」かという2つの方向性があります。洗練志向というのは完璧主義に近いイメージ。細かい改善を積み重ねていって、出来る限りミスを無くす方向で組織作りを進めます。日本のお家芸とも言えるアプローチではあるのですけれども、これを追求しすぎるとミスが許されない、弱みを見せられないというプレッシャーになって、心理的安全性を損なうことが知られています。ミスをしないための確実な方法は、何もしないこと。次善策は、失敗した時に言い訳が出来るよう、誰かから指示された通りに動くことです。そのため、洗練志向が強くなりすぎると、結果的に指示待ちの姿勢を助長することにもなりかねません。。

最後に、新規歓迎と言って、前例のない取り組みやユニークな発想を良しとする価値観が組織に備わっているかも心理的安全性に影響します。これを言い換えると、一人だけ周囲とは違う意見を言ったり、他の人が少なくとも最初は理解出来ないようなアクションを取ったりした時に、それを面白いとポジティブに評価する風土があるかどうかということになります。エドモンドソンの有名な研究で、心理的安全性がどう実際に作用するかを見たもので、アメリカの医療機関の内部調査を行ったものがあります。興味深いことに、心理的安全性が低い医療機関の方が医療ミスの数が少ないという結果が最初見られました。そこで、エドモンドソンがその研究チームにもっと深くデータを調べてみたところ、心理的安全性が高い医療機関ではそもそも新しいやり方を積極的に試して、これまでにはないけれどもより質の高い医療を実現しようと挑戦する傾向が強く、その分ミスも起きやすいというのがまず1つ。さらに、ミスが起こった時もそれをオープンに話し合って改善点を皆で議論し合うという文化があるということが明らかになりました。

逆に、一見ミスが少ないように見えた心理的安全性が低い医療機関では、スタッフが失敗を極度に恐れていて、トラブルが発生したけど周りに相談していなかった。一人で解決しようとしていて、結果を報告もしなかった。そのために、報告書に表れるミスの件数は少なかったわけです。しかし、実は詳しく見ていくと、その結果として同じミスを何度も繰り返していたり、誰かが発見した解決法があってもそれが組織内で共有されないので、別の部署では問題が放置されたままになっていたりする。そういったより深刻な問題が見られることが明らかになったのです。

ただし、心理的安全性は組織のカルチャーや価値観と深く結びついたものなので、末端の社員が孤軍奮闘しても中々改善は難しいと思います。言い換えると、心理的安全性を高めるためには、経営陣や上司の深い理解とコミットメントが欠かせないということになります。

今日のまとめです。心理的安全性とは、自分の意見を率直に述べたり組織の問題点を指摘したりしても、それによって不利益を被ることはないと感じられることを指します。これは話しやすさ、支援への信頼、挑戦への志向性、新規歓迎と4つの要素からなり、心理的安全性が高い職場で働くメンバーはミスを恐れず積極的に新しい取り組みにチャレンジすることが出来ます。心理的安全性は組織のカルチャーや価値観と密接に結びついたものであり、それを高めるためには経営陣や上司の理解とコミットメントが欠かせません。

分野: リーダーシップ 対人・異文化コミュニケーション論 組織行動 |スピーカー: 松永正樹

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