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ブックレビュー「恐れのない組織」①

福田亮 組織行動とリーダーシップ

21/04/15

新型コロナウイルスの流行により生活が大きく変化しましたが、実は企業の人・組織もコロナの影響で大きく変化しています。そんな中で今注目されている本をご紹介します。

今回取り上げる本は、「恐れのない組織」という本で、著者はハーバード大学教授のエイミー・エドモンソン氏です。最近、英治出版から出版された書籍です。

「恐れのない組織」というインパクトのあるタイトルですが、この恐れのない状態とは、裏を返せば「心理的安全な組織」ということになります。
皆さんは「心理的安全性」という言葉を聞いたことがありますか?英語ではサイコロジカルセーフティと言われています。

これはコロナ禍で大学院や企業の方と色んなお話をさせていただく中でも多くの皆さんが声をそろえて言う、組織マネジメントの重要なキーワードになっています。
この言葉が注目されるきっかけとなったのは、"Google"です。Googleが、最強のチームの成功要因は何かということを自身が取り組んでいる様々なプロジェクトのデータから抽出しようという「アリストテレスプロジェクト」という取り組みがあり、研究していました。最初はスキルや、メンバーのダイバーシティ、学歴ではないか、ジェンダーではないかと様々な要因が言われていたのですが、なかなか解が見つけ出せませんでした。その時に、論文を調べている中で「心理的安全性」というキーワードがあり、それに当てはめてみたところこの「心理的安全性」が最強のチームを作る上で極めて大事だという結果になり、この言葉が注目されるようになりました。
この「心理的安全性」を研究し提唱されていた方が、この本の著書であるエイミー・エドモンド氏でした。彼女が提唱した「心理的安全性」が一気に注目され、最新刊としてこの「恐れのない組織」、言い換えれば「心理的安全性をどう作るか」という本が出版されることになりました。

「心理的安全性」とは、分かり易く言うと、皆が気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいられる環境のことです。これを心理的安全性が高い状態と言います。良いチームを観察していると、メンバー間でのアイコンタクトの数が多いことがわかっています。逆に心理的安全性が低いチームでは、メンバーの誰かがずっと下を向いているなどメンバー間でのアイコンタクトが少ないです。これは、自分が何か言ったら「アホ」とか「価値が無い」と思われてしまうのではないかという恐れがあるためだと考えられます。その他にも、心理的安全性が高いチームでは、物理的距離が近く、話している割合が均等だと言われています。よく会社の会議でずっと上司ばかりが喋って誰も喋っていないという話を聞きますが、これは心理的安全性が極めて低い状態です。色んな人が均等に喋っていて、かつ話を遮らない、或いは「ありがとう」などポジティブな言葉が流通し合う状態が心理的安全性の高いチームだと言われています。

では、この「心理的安全性」が高いと何がいいのかというと、様々な効果があるとこの著者は述べています。どんな良い効果があるかみなさんは想像できますか?

とりわけ昨今はVUCAと言われ変化が激しいと言われていますが、変化の速い状態では、皆何が正解か分からない状態のため、皆が均等な意見をいうことによって色んな発見や気付きがあります。具体的には、次のような成果が上がると言われています。

一つは「致命的なミス/うっかりミス」が減ると言われています。
つまり、率直に意見を言い合えるということは、逆に間違ったことや気になったことを気兼ねなく言えるため、問題が起こる前にその問題に対処できるわけです。逆にそれが言えないと、問題が大きくなった後に気づくケースが多くなります。
もう一つは「イノベーションが生まれやすい」です。イノベーションを阻害する要因は、すごく端的に言ってしまうと「失敗を恐れること」です。つまり、新しいことは正解がない中で試行錯誤していくことで、これが一番いいというものを見つけ出す過程だと思うのですが、心理的安全性が高いとそこに対して様々な意見交換ができ率直な意見やフィードバックがもらえることによって、色んな可能性を試すことができます。また、失敗をポジティブに捉えることで「もっとチャレンジしよう」と思うことができ、イノベーションが生まれやすくなります。
もう一つはダイバーシティ(多様性)への対応も高まってきます。違う意見を受け入れたり尊重したりすることも、心理的安全性が高い中だと受け入れやすく、昨今大事だと言われているダイバーシティインクルージョン(違いを受け入れて取り入れていく)にも繋がります。

このように昨今必要だと言われているキーワードの土台になっているのが「心理的安全性」です。これはエドモンソン氏の研究で証明されていることもあり、ビジネスの世界でもこの心理的安全性というキーワードは注目をされており、これを高めるための様々な試みが今日本企業でも進んでいます。

次回はこの心理的安全性を高める鍵は何なのかについて、この本の中から取り入れられそうなもの抽出してご紹介していきます。

分野: グロービス経営大学院 リーダーシップ 組織行動 |スピーカー: 福田亮

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