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組織の資産としての多様性

松永正樹 コミュニケーション学、リーダーシップ開発、アントレプレナーシップ

21/03/31

今回から、多様性というテーマを取り上げてお話していきます。最初に皆さんに二つお伺いします。まず、「多様性」あるいは「ダイバーシティ」と聞くとどんなことを連想しますか? もう一つ、多様性・ダイバーシティが組織にどんな影響を及ぼすかについてもちょっと考えてみてください。組織行動論における多様性の定義について述べると、学問的には個人の様々な特徴の組合せからなる個性のことを指すものとされます。たとえば、僕の場合であれば、日本で生まれ育った中年の日本人でヘテロセクシャル男性です。コミュニケーション学を中心とする社会科学に関する知識を持っていて、教育や統計分析等に関して一定のスキルを備えている。ちょっと落ち着きがない傾向があったり、身体的には視力が低いので眼鏡による矯正は必要だったりするのだけれど、概ね健常。三歳の子どもがいますので、夜の飲み会にはちょっと参加が難しい。こういったものを見ていくと、例えば、年齢や国籍が僕と同じ40代前半の日本人であっても、その他の面では僕とは全然違う特徴を備えた人たちがたくさんいますし、逆に年齢や性的アイデンティティが僕と違っても、その他の面で共通点が多い人もいるわけです。

多様性にフォーカスした経営とは、こうした組織のメンバー一人ひとりの個性を活かすための方策を考えていくものだということになります。似たような経験、知識を持つメンバーが集まって仕事をしていても、なかなか斬新なアイデアは出て来ません。一方で、異なる世界観を持つ人同士で意見交換をすればお互い新鮮な発見がありますし、多様なスキルを備えたメンバーがチームにいれば、誰かが課題解決の糸口を見つけてくれる可能性も高まる。事実、多様性を上手く活用出来ている組織とそうでない組織を比べると、イノベーションや新規事業の創出は前者の方が良いパフォーマンスをみせますし、また、成長率も前者の方が優れる傾向があることが、世界各国の研究で示されています。

ただし、日本ではいまだに多様性というと女性や外国人、あるいは障害がある人を対象にした特別な施策や是正措置というイメージを持っていることが多く見受けられます。これは多様性を活かすという方向性とは似て非なるものであって、実は経営に対してもあまり良い効果がないということが知られています。例えば、組織の女性従業員比率や障害者雇用の数を単純に増やすだけでは、かえって組織の業績にマイナスの影響が出ることもあると近年指摘されています。

これはなぜかというと、組織とは(当たり前ですが)そこに属する人が作るものだからです。日本の場合、これまでは障害のない日本人男性が中心となって、何十年も組織が運営されていることが多いですね。そうすると、健常者の日本人男性のために最適化された様々な仕組みがそこでは張り巡らされているわけです。例えば、長時間労働が常態化しているような組織だと、家事や育児、介護をこなさなければならないヒトにとっては非常に働きにくいです。また、日本語の細かい機微まで精通していないと社内のコミュニケーションが上手くいかないというのであれば、非日本語母語話者にとっては毎日毎日+αの負担が生じるということになります。こうした組織文化や風土を変革することなしに表面的に女性や外国人の数だけ増やしても、彼女ら彼らがイノベーション創出等に多様性を発揮して活躍するのは難しいわけです。

性別や国籍、障害の有無だけに着目をすると、自覚的な障害がまだない日本人男性グループの中に存在する多様性を見落としてしまうという問題もあります。例えば、僕は性別や国籍といった面では日本におけるザ・マジョリティですが、経歴や考え方、スキル等については結構ユニークな面があると思います。それはおそらく、一見すると一般的な日本人男性社会人と括られてしまう多くの人達についても同様であるはずです。しかし、多様性といえば女性の活躍推進とか障害者雇用と考えてしまうと、そうした目に見えづらい多様性を掘り起こして活用しようという発想が出てきにくくなります。その結果、社内に眠っているイノベーションの種が芽吹かないままに埋もれてしまう。これは、すごく勿体ないことだと思います。

では、どうしていったらいいのでしょうか? 言うまでもなく、ここまでの話は男女共同参画を推進することは止めましょうとか、障害者雇用は経営にマイナスですといったことを言いたいわけでは全くありません。むしろその逆で、表面上の数字だけを追うのではなく、多様なメンバー一人ひとりの特徴をしっかり捉えて、彼女ら彼らがそれぞれ自分の力を発揮できるように真の組織改革を進めましょう、というのが本日お伝えしたかった重要なポイントとなります。

組織の仕組みやカルチャーを振り返ってみて、例えば、健常者日本人男性だけがそれ以外の人と比べて仕事がしやすいといったことがないか、あるいは逆に特定のグループに属する人達だけがそれ以外の人達と比べてより一層の努力や負担を強いられていないか。こうしたことを丁寧にチェックして改善を積み重ねていく組織では、結果として誰もが働きやすい環境が整っていきます。そして、そうした誰もが自分本来の力を発揮できるといった環境を通じてそれまでの常識を覆すような発想が花開き、革新的なプロダクトとかサービスが生み出されていくという流れになるのかなと思います。言いかえると、多様性とは解決すべき課題ではなくて、イノベーションを生み出し組織の業績を高めるための資産と捉えた方がいいのではないかなと個人的には考えています。

今日のまとめです。多様性とは個人の様々な特徴の組み合わせからなる個性を指します。したがって、多様性とは単に女性や外国人、障害者の活躍や雇用促進に関する特別措置のことではありませんし、女性従業員比率や障害者雇用の人数を表面上の数字を追うだけではかえって経営上のマイナス効果がもたらされることがあります。一方、特定のグループに有利ないし不利な仕組みがないか丁寧にチェックして改善を重ね、誰もが働きやすい組織風土と仕組みを整えていくことで、組織の業績は確実に上向くようになります。

分野: リーダーシップ 対人・異文化コミュニケーション論 組織行動 |スピーカー: 松永正樹

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