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中国の超大国化と対米冷戦

村藤功 企業財務 M&A

21/03/10

今日は、中国の超大国化と対米冷戦という話です。最近、コロナ対応でワクチン接種が問題になっています。ファイザーとかモデルナ、アストラゼネカのワクチンを皆欲しいのですが、なかなか手に入らないという状況です。日本にも来るのが遅れる、というような話になっているでしょう? しかし、中国は自分でワクチンを作っている。中国のワクチンは、カンシノ・シノファーム・シノバックの3社が作っています。カンシノは人民解放軍と一緒にやっているところで、シノファームは国営の中国医薬集団。シノバックは北京大学と一緒にやっています。もう中国では全部承認されたので、承認されたワクチンを持ってコロナ外交をやっているわけです。東南アジアだとか中南米とか中東、アフリカ辺りに中国ワクチンを持って行って、「ワクチンをあげるからこれをやってくれない?」という話をしつつある状況です。皆ワクチンは欲しいのだけど、ファイザー・モデルナ・アストラゼネカはなかなか手に入らないのです。もう命の問題なので、「ワクチンをくれるのだったら中国の言う事を聞かなくては」という状況です。中国・ロシアは自分の所で作ったワクチンを使って、コロナ外交をやっているのです。

共産党の動きで、最近また中長期計画が出てきていますけれど、これはどういう将来計画なのかご存知ですか? 一人当たりのGDPが中等先進国で大体3万ドルくらいです。一人当たりGDPが1万ドルにならないと途上国だというような話があります。そこで、中国は今では1万ドルをやっと超えたのだけれど、2035年までに3万ドルにしたいと考えています。ご存知のように、中国は去年の1-2月はコロナがひどかったのですが結構早く回復して、去年もプラスの2.3%GDP成長を達成しました。世界のほとんどの国がマイナスに陥っている中で、中国はプラスでした。この間全人代で、今年は6%以上成長するという正式な目標を設定したところです。国際機関とエコノミストは8%くらいいくのではないかという様な事を言っているところなので、5%ずつ成長して2035年までに一人当たりGDP3万ドルを達成するというのも満更難しいわけではありません。2049年に世界一になるというのも、それほど難しい話ではないという状況にもうなってしまっています。

それで、アメリカとしては当然面白くないわけです。トランプがバイデンに変わったのですが、バイデンとしても対中強硬路線を止めるわけではありません。トランプとはちょっと考え方が違うので、中国の人権がどうなのというあたりがバイデンの一番気にしているところです。香港で中国が国安法を成立させて、政権転覆罪で民主派を逮捕したり起訴したりというようなことをやっているわけです。去年の9月に立法会という法律を作る機関の選挙があったのですが大騒ぎでデモになったので、ちょっと無理だから1年延期しようということで、今年の9月に立法会選挙があります。愛国者基準って知っていますか? 愛国者基準というのは最近言われ始めたことなのですけれど、愛国者ではない者は立法会選挙の候補者になれない、共産党に反対するような民主派の人達はそもそも候補者にしないという事です。結局、共産党の言う事を聞く人に全部なるので、もう一国二制度がガラガラと崩れ落ちている最中という状況です。人権ですから、アメリカは、ウイグルだとかモンゴルだとかチベットとかも文句を言っているのですが、中国は内政干渉だと言っている。

ただ、人権の問題だけならまだ兎も角、日本企業が最近一番慌てているのは、不当域外適用阻止弁法が出来てしまった事です。アメリカはファーウェイと付き合うなとか、色々なことを言っていました。取引が有ったら切れという様な事を言っていたでしょう? 日本企業としてはしょうがないなと言いながら、アメリカと喧嘩するのもなんだしと切り始めていたのです。ところが、不当に中国企業との契約を止めて中国企業に損害を与えたという事になれば、損害賠償をしてもらわなければならないという法律を中国は作ってしまったのです。そうすると日本としては、アメリカの言う事を聞けば中国に怒られるし、アメリカの言う事を聞かなければアメリカに怒られるし、どっちを選ぶかというとても困った状況に追い込まれているのです。本当に難しくて困った立場です。そういう意味では、二つの超大国の狭間でどっちの事を聞いても怒られるので、板挟み状態。なんとか両方のマーケットに売りたいところですけど、これから一体どうやって生きていけばいいのかと言って困っている状況です。

今日のまとめです。コロナから早く収束した中国が、経済的な関係だとかあるいは自分の開発したワクチンを使って、新興国の支持を得ながら超大国化を再び進め始めました。2035年まで5%成長を継続して、一人当たりGDPでも中等先進国に入って、建国100年で世界一を目指しています。欧米・日本は怒っていますけれども、香港国安法で一国二制度を崩壊させつつあります。米中冷戦が始まりつつあるのです。欧米日本企業は、中国市場から撤退することはできないが、工場はASEAN辺りに移そうとしています。そのため、ASEAN各国は工場誘致競争をしています。日本と欧米の企業はアメリカ市場も中国市場も失う訳にはいかないので、サプライチェーンの最適化に色々難しい対応を迫られているというところです。

分野: 財務戦略 |スピーカー: 村藤功

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