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首都圏 の人材 を採用 しよう<その1>

小城武彦 経営組織論、コーポレート・ガバナンス

21/03/29

今回は、「首都圏の人材を採用しよう」というテーマでお話します。

私は以前、首都圏人材が地方企業へ転職出来るような新しい市場を作る仕事をしていました。これまでは、地方から首都圏企業への就職/転職が多く、その逆の首都圏のビジネスパーソン、中でも力のある中堅や幹部クラスの方々が地方企業に転職することはほとんどなく、そもそもそういう転職市場すらありませんでした。それを何とかしようと5年間あれこれと試行錯誤をしてきました。その甲斐もあり、最近では地方企業に転職する方も増えてきています。

地方企業の社長の皆様からは「人材が足りない」という声を頻繁にお聞きしますが、その対策として首都圏人材を採用することを考えて頂きたいと思っています。「そんなこと本当に出来るのですか」と言われますが、出来ます。

今回は、その背景や具体的な方法をじっくりご紹介します。
そもそも、これまで何故地方への転職が少なかったのでしょうか。その理由は、人材紹介業の事業モデルにあります。「人材紹介業」というのは、ビジネスパーソンの転職を斡旋することを生業としていますが、この事業モデルは、一人転職を斡旋するとその人の年俸の約30%~40%を紹介料という形で貰う形になっています。

例えば、年俸700万円の人を幹部としてある会社に紹介するとします。その場合、30%の210万円を紹介料として事業者が貰う形になっています。これを前提にすると、首都圏の人材紹介会社は首都圏のビジネスパーソンを地方企業に紹介するインセンティブがほとんどなくなってしまいます。それは、事業の効率を考えるためです。

例えば、首都圏の人材を首都圏内の企業に紹介するとします。そうすると、一日に4件、5件の面談が簡単に入ります。しかし、例えば首都圏の人材を福岡の企業に紹介しようと思うと、福岡空港は便利ですが、移動時間を考えるとせいぜい一日に1、2件が限度です。必然的な結果として効率を考えると、首都圏の人材は首都圏内の企業ばかりに紹介されることになります。そのため、首都圏内で人材がグルグル回ることになり、首都圏の人材には地方企業の情報がほとんどありません。つまり、彼ら彼女らは地方にどんな会社があるのかを本当に知らないのです。したがって、転職の選択肢に入らないわけです。

これではマーケットが出来るわけがありません。それを何とかしようと思い、私は前職の時に、来る日も来る日も地方の企業に訪問をしていました。そうすると自分自身も不勉強を恥じたのですが、素晴らしい事業展開をする会社にたくさん出会いました。そこで、社長さんが揃って「人材が足りない」と仰っていました。それも、社長の右腕となって一緒に経営をしてくれる人材、もしくは新しい事業の責任者として事業全体を牽引するような幹部クラスの人材が本当に足りないことがよく分かりました。もし、そこに一人でも二人でも知恵と経験を有する人が入ってくると、本当にその会社が大きく成長出来る可能性があるということを本当に実感しました。したがって、首都圏の人材に、「この地方にはこんな会社があって、社長はこんな方でこんな事業展開に挑戦している。もし、ここに貴方の知恵と経験が入れば、大きく成長出来るんです。是非人肌脱いでくれませんか」と話してみようと思いました。
そうすると、驚くほど力のある人たちが次々と転職することが分かりました。それも、地縁など全くない地域にです。ほとんどの方がIターンの方です。これは本当に、私自身も驚きました。分かったことは、首都圏のビジネスパーソンは力が余っているということです。東京の大きな大企業は、九州を含めて全国から優秀な人をがっさり採用する一方で、組織が大きいため、その中で力を十分に発揮出来ない人がたくさんいるということです。首都圏では、力はあるのに活躍出来ていない優秀な人材が埋もれているわけです。

同時に分かったことは、彼ら彼女らにとっても、地方企業の仕事は凄く魅力的に映るということです。東京の大企業の仕事というのは、組織が大きいため、いわゆる分業になっており、仕事が全て小間切れです。そのため、今自分がやっている仕事が具体的にどのように社会の役に立っているのかがわかりにくいのです。一方で、地方の会社は確かに小さい会社が多いのですが、特に幹部クラスの仕事をすると自分の仕事がダイレクトに地域社会に役立っていることがよくわかります。これは仕事の醍醐味です。そこに彼ら彼女らは惹かれるわけです。

私は、首都圏で働く方々に「東京の歯車なんか辞めて、地方の心臓をやってみましょう」とお伝えしています。少し強烈な言葉ですが、「歯車は辞めて心臓をやろう」というキャッチコピーで、東京にあるビジネススクールをグルグル回り、ビジネススクールにせっかく入ったのだから使わないともったいない、大企業よりも中小企業でこそ腕がふるえるという話をしてきました。多くの人はそれに気づき出しています。特に、今回のコロナがこの傾向を更に強めるのではないかと思っているところです。

では、今日のまとめです。
ほんの少し前までは、とても珍しかった首都圏人材の地方転職が急速に増えています。是非、彼ら彼女らの力を使うことを考えてみませんか。社長さんや企業幹部の皆さん、是非ご検討頂ければ嬉しいです。

分野: コーポレートガバナンス |スピーカー: 小城武彦

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