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大手企業とスタートアップの取引慣行の課題(その2)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

21/02/16

【今回のまとめ】

2020年11月、公正取引委員会が公表した「スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書」によって、大手企業による不公正な取引を防止する動きが始まった。スタートアップは、経済の発展やより良い社会づくりに欠かせないため、その健全な成長を社会全体で促す機運の醸成は、今後益々重要である。

前回は、公正取引委員会が2020年11月に公表した「スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書」のなかで、既存大手企業(スタートアップとのオープンイノベーション等における連携事業者)による優越的地位の濫用に該当するような事例について紹介した。

今回は、スタートアップへの出資者による不利な取引・契約について考えてみたい。

同報告書では、「出資者から、守秘義務契約を締結しないまま営業秘密の開示を要求された」、「事業上のアイデアを他の出資先スタートアップに開示され、競合する商品を販売された」、さらには「出資者が第三者に委託したデュー・デリジェンス(=出資の際のリスクや企業価値の評価)の調査費用を要求された」といった問題が報告されている。

また、出資者の意に沿わない場合に株式の買取請求をちらつかせることもあり、例えば、「知財の無償譲渡の要求」、「スタートアップの事業資金が枯渇しつつある状況での、著しい高額での株式買取請求」、「買取請求権の行使条件が満たされない状況での買取請求」といった"無理強い"ともみられるような事例も報告されている。

以上のような問題を含んだ要求に対して、スタートアップはなぜ納得できないまま要求を飲まざるを得ないのか。最大の理由として挙げられているのが、「取引先(連携事業者や出資者)から取引への影響を示唆されたわけではないが、今後の取引に影響があると自社で判断したため」である。これはスタートアップが"空気を読まざるを得なかった"と言っているようなもので、スタートアップ側にも責任の一端はありそうである。

次いで「取引先から現在・将来の取引への影響を示唆され、受け入れざるを得なかった」という理由で、これは優越的地位にもとづく明確な"圧力"があったと思われる。

他には、「取引先が市場における有力企業であり、取引を行うことで社会的信用を得られるなど総合的なメリットが大きかったため」といった理由も挙げられている。確かに、スタートアップとしては、大手と取引があることが他社への営業にプラスだったり、社会的な信用力が増すという面も否定はできない。しかしながら長期的にみると、取引先との力関係はアンバランスな状況が続くことになり、下手をすると「発注者と下請」の関係に陥り、健全なパートナーシップ関係が維持できなくなる恐れがある。

さらに興味深い理由として「既に進行中のプロジェクトでの条件変更であり、事業継続の観点から要求を呑んで取引を続けざるを得ない状況だった」というものがある。これは極めて対応が難しい。スタートアップの体力は取引先(既存大企業等)と比較すると圧倒的に弱いため、仮に目の前の事業が暗礁に乗り上げた時に、再度、別な連携相手企業を探して一からプロジェクトをやり直す体力や時間の余裕が全くない。つまり、引くに引けない状況にあるため、無理な要求を呑まざるを得ないのである。

このような問題は、どうすれば解決できるのか。公正取引委員会としては、まずは今回の報告書の内容を広く周知し、独禁法違反には厳正に対処するというメッセージを発しており、不公正な取引に対して"クギを刺した"状態である。さらに今後は、公正取引委員会と経済産業省が連携して、スタートアップと連携事業者との契約内容にかんする問題事例と改善の方向、独禁法上の考えを取りまとめる予定とのことである。こういった取り組みを通じて、連携事業者の優越的地位の濫用につながる行動を抑制しようとしているのだ。

スタートアップは国の経済の活性化には欠かせないため、その健全な成長を社会全体で促す環境づくりや機運の醸成は、今後益々重要である。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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