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大手企業とスタートアップの取引慣行の課題(その1)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

21/02/15

【今回のまとめ】
2020年11月、公正取引委員会は、「スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書」を公表した。大手企業とスタートアップとのオープン・イノベーションが活発化しているが、スタートアップに不利な行為を要求する事例も多く生じていることが報告されている。

昨年11月25日の日経新聞(電子版)で、『大手企業、新興の知財搾取、公取委が警鐘』という見出しのニュースが配信された。大手企業がスタートアップなどの新興企業に対して、不利な条件での契約を要求しており、公正取引委員会が実態調査に基づいた報告書を公表したタイミングである。今回は、この報告書を読み解きながら、近年のスタートアップ・ブームやオープン・イノベーション・ブームに潜む問題について考えてみたい。

公正取引委員会が公表した「スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2020/nov/201127pressrelease.html)」は、2019年度から調査が行われ、2020年11月に公表されたものである。

スタートアップ企業は、イノベーション推進の担い手として経済への貢献が期待され、また創業10年未満の企業は雇用の増加にも寄与しやすい。一方で、大手企業とオープンイノベーションに取り組むなかで、契約に不利な内容を盛り込まざるを得ないケースが報告されてきた。そこで、国(公正取引委員会)として、スタートアップが公正かつ自由に競争できる環境を確保できように調査を行ったという背景がある。

本調査を通じて、連携事業者やスタートアップへの出資者との取引・契約において、スタートアップ側が弱い立場に陥りがちだということに起因して、不利な契約を結ばされる実態が明らかになった。

例えば、「連携事業者または出資者から、納得できない行為を受けたことがある」と回答したスタートアップの割合は全回答者の17%だったが、うち売上5,000万円以上で社内に法務担当がいる場合は12%であるのに対し、売上5,000万円未満で社内に法務担当がいない場合は29%と高い数値を示している。また、納得できない行為を提示されたスタートアップのうち8割が当該行為を受け入れ、うち56%が「その結果、不利益が生じた」と回答している。

相手が連携事業者の場合、「守秘義務契約を締結しないまま、スタートアップの技術やノウハウの開示を要求された」、「守秘義務に違反してスタートアップ側の営業秘密を盗用し、競合製品を販売された」といった事例が報告されている。

また、PoC(概念実証プロジェクト)の契約に際しては、「必要な報酬が支払われなかった」、「PoCのやり直しを求められ、それに対する報酬が支払われなかった」といった問題も指摘されている。

さらには、知的財産権のライセンスに関しては、「知財の無償ライセンスを要求された」、「スタートアップで開発したにも関わらず、契約の存在を理由に特許出願を制限された」といったケースもあった。他にも、「顧客情報の提供を要求された」、「報酬を一方的に減額されたり、支払いを遅延された」、「他の事業者との取引を制限された」といった事象が報告されている。

これらはいずれも、大企業側の優越的地位の濫用によって公正な取引が阻害され、市場環境を大きく歪めかねないため、独占禁止法違反となる恐れがある。何よりも、公正な競争環境がないと、"よちよち歩き"状態にあるスタートアップの成長の可能性が失われてしまい、結果として国全体の経済活力にも多大な問題をもたらしうる。

次回は、出資者とスタートアップの関係について考えてみる。


分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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