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柔らかい肌触りが心を落ち着かせる話

三上聡美 産業組織心理学、社会心理学

21/02/02

今日は、「柔らかい肌触りが心を落ちつかせる」というお話です。
皆さんは「ライナスの毛布」をご存じですか。

ライナスはスヌーピーが登場する「PEANUTS」という漫画に出て来る登場人物の一人で、ルーシーという男の子の弟ですけれども、そのライナスはいつも肌身離さずブランケットを持ち歩いています。そこからライナスといえば毛布が必然的に連想されるようになり、「ライナスの毛布」と呼ばれるようになっています。

みなさんにとっての「ライナスの毛布」にあたるものは何かありますか。

よく子どもが毛布やタオル、ぬいぐるみをずっと持ち歩き、寝るときも離さずに持っているという話を聞きますが、なぜ肌身離さず持っていると思いますか。

やはり「安心する」というのが肌身離さず持っている意味だそうです。これは、猿にも同様のことがあると言われています。1950年頃、ハーロウという人が、実験室で生まれたばかりの小猿がタオル生地のものを離さないでいることに気付いてある実験を始めました。どういう実験かというと、お母さんから引き離された小猿は、針金で出来ている2つのお母さんの模型のどちらにより長くくっつくかということを調べた実験です。どちらの針金のお母さんもヒーターで温められており共に温かいのですが、一方のお母さんは針金にほ乳瓶を付けられており、ミルクが出るようになっています。もう一方のお母さんには、ほ乳瓶が付けられていない代わりに、体の部分が柔らかい布で覆われています。生まれたばかりの子どもの猿は、ミルクが出るお母さんとミルクがない代わりに柔らかい肌触りのお母さんのどちらと過ごす時間が長いでしょうか。実験の結果、子どもの猿はミルクが出る針金のお母さんよりも、ミルクが出ない布のお母さんにくっつく時間が長いことがわかりました。しかも、日数が経つにつれて布のお母さんと過ごす時間が長くなっていったそうです。

針金だけのお母さんの方は、ミルクを飲むときだけ一緒にいて、あとは布のお母さんといるということになったそうです。この結果から、子どもは肌触りや温もり、肌の感覚を通して安心感を得ているということがわかりました。おんぶや抱っこなどの親子のスキンシップは、親子の絆や信頼感を作るという意味がありますが、子どもにとっては安心感を得るという意味もあります。そのため、子どもが安心感を持ち続けるためにはスキンシップを多くとる必要があるのですが、ただずっと子どもを抱っこしたりおんぶしたりし続けることはなかなか難しいです。そんな時に、子どもが親の肌触りや温もりの代わりに心地よい安心感や肌のような感触を感じられるのが毛布やぬいぐるみになるわけです。

スヌーピーの仲間のライナスが持っている毛布、つまり「ライナスの毛布」はそういったことから「安心毛布」とも呼ばれているそうです。また、ぬいぐるみを触ることでの人の心がどう変化するのかという実験もあります。マイナスな気分になっている人に熊のぬいぐるみを評価してもらうという実験です。ちなみに、この実験は大人を対象にしています。ぬいぐるみを評価する人達は二つのグループに分けられ、一つはぬいぐるみを触ってじっくり評価をしてもらうグループ、もう一つぬいぐるみに触らないで見た目だけで評価をするグループです。この実験の結果、熊のぬいぐるみを触ったグループの人達は、ぬいぐるみを見ただけで評価したグループの人達に比べて、気分がポジティブになったり、人に優しくなったりすることが分かったそうです。

このように、肌触りがいいものに触ると心が落ちつくというのは、子どもだけのことではなく、大人にも同様の効果があるということになります。

大人の人にとっても、ライナスの毛布(別名:安心毛布)があるといことです。タオルやハンカチを買う時の選ぶポイントとして、皮膚に優しいかどうかで肌触りを重視する方がいらっしゃると思います。しかし、もしかすると気分をあげたいとか、安心感を得たいという気持ちも意識的・無意識的にあるかもしれません。衣服では、どちらかというとオシャレ着よりも、パジャマやルームウエアなど、リラックスするときに着る服の方に肌触りが重視されているのではないかと思います。

最近はリモートワークが増えお家で過ごす時間も長くなってきているため、日中過ごすための洋服も肌触りがいいものが増えてきているのかもしれません。リモートワークはいいところもたくさんありますがストレスもあると思いますし、このご時世なので心が不安定になることも当然あると思います。そんなときに肌触りがいい洋服を着ることで、少し穏やかな気持ちになるかもしれません。

では、今日のまとめです。
今日は柔らかい肌触りが心を落ちつかせるという話をしました。子どもだけでなく、大人も肌触りのいいものに触ると心が落ちつきます。ライナスの毛布は大人にも効果があるということになります。

分野: 社会心理学・組織心理学 |スピーカー: 三上聡美

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