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炎上のリスクと対策を考える

平野琢 企業倫理、リスクマネジメント

21/01/12

前回はSNSの技術の特性とリスクについてお話をしました。今日は、「炎上のメカニズムと対策を考える」をテーマにお話をさせて頂きたいと思います。近年、SNSのトラブルにおける一つの大きな事項として、炎上という言葉をよく耳にするようになりました。一利用者からすると、怖いという印象を受けます。今回は改めて、炎上とはそもそも何なのかという現象とそのメカニズムを見ることによって、どのような対策が考えられるかという事について話していきたいと思います。

そもそも、「炎上」「炎上」とよく耳にするのですが、炎上とは何かという点から見ていきたいと思います。この問題に対して非常に造詣が深い評論家であって、編集者でもある荻上チキさんの定義によれば、炎上とはWeb上の特定の対象に対して批判が殺到し、収まりがつかなそうな状態。あるいは、特定の話題に関する議論の盛り上がり方が尋常ではなく、多くのブログや掲示板などでバッシングが行われる状態とされます。攻撃の対象となるのは企業などの組織だけではなく、往々にして個人もその対象になるのです。かつ、批判的なバッシング的なコメントは、数百件から千件を優に超すものまであると言われています。そこまで多くのバッシングが短期に、しかも個人に集中的に寄せられるということは、SNSの普及以前にはあまりなかったという点を考えると、やはり炎上はSNSが一般化した社会だからこそ存在する一つのハザードであると言えると思います。

炎上はどのぐらい起きているものなのか、正確な件数については完全に把握しきれているとは言えませんが、いくつかの企業や研究者らが行った調査からは、それが確実に増加しており、またその数も非常に多いという指摘が出来るかと思います。例えば、デジタルリスクの対策を行っている企業の調査結果によれば、炎上はスマートフォンの普及やSNSのサービス拡大と共に増加し続けて、2015年には千件を超えたという結果が出ています。また、国際大学の山口真一先生の研究資料によれば、2019年においてもおよそ1,200件程度の炎上が日本において発生したと言われています。

炎上のメカニズムですけれども、どうやって起きていくものなのかが気になる所ですよね。実は、全てが同じプロセスを辿るというわけではないのですが、おおよそのパターンは存在するみたいです。まずは炎上の発生源となるコンテンツ。簡単に言えば火種みたいなものが存在します。火種ですけど、多くの事例を見てみると、社会通念上望ましくない行為や発言が火種となる場合が多いです。例えば、悪ノリで行ってしまった行為。機密、あるいは個人情報の漏洩に当たってしまう情報。あとは差別、あるいは格差などを肯定する意見と、様々なものがあります。また、社会的に意見が対立しあって、かつ各々の意見に対してこだわりが強い人々が集団として形成されている事柄に関しては、それが社会通念上望ましいか望ましくないかは別として、炎上の火元になる可能性があると言われています。

そして、火元となる情報が特定のSNSに投稿された後に、その情報がSNSの内部の比較的小集団において、批判と共有が自己増殖を繰り返しながら、徐々に範囲を拡大していって、炎上へと発展していきます。特定のSNSのサービス内、かつ、比較的小規模のグループで批判と共有が収束した場合には小規模な炎上で終わる事もあるのですが、これが更にその情報を集約してまとめて再配信するシステム。俗に言うまとめサイトが構築されると、炎上の規模がかなり大きくなっていきます。そして、炎上はイメージからするとSNSの中で行われると我々が思いがちなのですが、炎上の規模を更に拡大させて、大規模な炎上に至るまでには、実はテレビ・ラジオ・新聞などのマスメディアが大きな影響を果たすと言われています。学問的には認知経路と言うのですが、炎上に関する情報をどうやって知ったかを実際に調べた研究によれば、メジャーなSNSの一つであるTwitterと回答した人は23%だったのに対して、テレビのバラエティ番組と答えた人は調査対象者の57%に上りました。

予防の万能策はないのですが、炎上の発生しやすい傾向をちゃんと知って、そのような状況に該当する場合は自らSNSを発信する際に慎重になる必要性があると言えます。炎上の発生しやすい傾向として、社会通念上好ましくないものは恰好の標的となって炎上してしまう。そして、見た目のインパクトが大きいもの程炎上を助長させる。さらに、災害や痛ましい事件・事故が発生している状況、または注目されている社会的な問題であって意見対立が強い話題など、炎上しやすい話題や状況が存在します。もちろんこのような傾向に当てはまる際に、沈黙するのが良い、あるいは、話題を回避しなさいと主張する気は全くありません。しかし、少なくともこういうケースにおいてSNSを発信する際は炎上のリスクを負っているという認識を持って、慎重な行動を心掛ける事が非常に重要である言えます。

分野: 企業倫理 経営リスクマネジメント |スピーカー: 平野琢

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