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中国の超大国化と対米冷戦

村藤功 企業財務 M&A

20/12/10

今日は、中国の超大国化と対米冷戦という話をしたいと思います。この間、10月に共産党が19期中央委員会の5中全会(第5回全体会議)をやりました。これによれば、2035年までに1人当りGDPをアメリカドルで3万ドル、普通の先進国くらいまで持ってくるというのが中国の計画です。今香港では、一国二制度がなくなってしまうのではないかと、色々とトラブルになっているじゃないですか。6月に国安法(国家安全維持法)を通して、国家安全維持委員会を香港が導入するのに対して、アメリカが香港自治法を通して戦いが始まっています。その中で、中国が11月に香港民主派の4議員の資格を剥奪したのです。もう一国二制度は無くなってしまったと言って、民主派の議員15人が辞任しました。何が起こり始めたかというと、香港から英米の企業が撤退を始めて、民主派が海外に逃げようとするということが始まっています。

アメリカの対中関係の戦いはトランプ大統領が始めたのですが、バイデン大統領になっても路線をそんなに変更しないのではないかと言われています。アメリカが色々中国を攻めるのに対して、中国は一帯一路で着々と中国の拡大を続けているという状況です。中国の一帯一路の沿線に65カ国44億人、覚書を結んでいる国だけで130カ国に50億人がいるのです。そういう意味では、アメリカ市場に入れてやらないとアメリカに言われても、それに頼らないような拡大中国市場を着々と作っているのです。

この間、中国が中心になってRCEPが調印されたのですが、これはTPPみたいに自由貿易の約束です。TPPに入っていなかったけどRCEPに入っている国はどこだか知っていますか? 中国と韓国もですが、あとはタイとかフィリピンとかインドネシアとかの国ですよね。アメリカはTPPに最初入っていたのですが、トランプがやめたと言って出ていきました。バイデン大統領になったらTPPに戻ってくれるかというと、そうは言っていません。アメリカを強くしてから場合によってはTPPに戻るかも、みたいなことを言っているのですよ。ところが、中国はRCEPは終わったので次はTPPに入ってもいいよみたいなことを言い始めて、日本やアメリカにショックを与えているところです。もし、中国がRCEPとTPPに入ってアメリカがどっちにも入っていないという事になると、アジアパシフィックにおける自由貿易圏のルール作りが中国に主導権が移りかねないということで、これはまずいのです。アメリカが中国に色々な中国製品を買わないとか言っているわけですけれども、中国にとっての貿易相手国は、対アメリカとか対ヨーロッパよりも対ASEANの方が大きくなっているのです。

中国の経済成長は2018年で実質GDP成長率が6.6%、去年6.1%でした。今年はほとんどの国がマイナスに落ちているところですが、中国だけは2%ぐらいのプラスになりそうと言われているのです。来年はおそらく8%ぐらいで、今後5年は5%程度。そのあとの10年ぐらいもおそらく4~5%ぐらいいくのではないかという見通しです。そもそも、研究開発で見ても論文数だとか論文引用数でも1位とか2位になってきています。

越境データシェアでは、中国とその他の国、あるいはアメリカとその他の国というクロスボーダーのデータをどのくらいアメリカとか中国が持っているか知っていますか。実は、中国がもうアメリカの2倍になっているのですよ。データは大きくなればなるほど、データを読んだ結果として賢いAIが出来たりして、賢く立ち回れるようになるわけです。そうすると、データが2倍ということはアメリカよりも中国の方が、研究開発がこれから発展する見込みがあるという話なのです。ちょっと心配なのが宇宙開発で、人民軍が主導して宇宙開発しており、今丁度、月面無人探査機を打ち上げて土壌サンプルを取ってきたところです。もうすぐ地球に戻るのですけど、ロケットを打ち上げたり、探査機を遠隔操作したりみたいなことは、ミサイルの能力に直結してくるわけです。北斗と言う宇宙衛星の話を前にしたと思うのですけれど、北斗は宇宙から海流だとか海底地形のデータを収集して海洋資源を探査するのが目的の1つです。しかしそれだけではなく、潜水艦の通路なんかも研究しているわけです。

第一列島線とか第二列島線って知っていますか。太平洋の東をアメリカにあげるから西を中国にくださいというようなことを中国がアメリカに言っていて、中国から海の方に向かって段々進出してきているでしょう。中国の計画としては、沖縄・台湾・フィリピンを結んだラインを第一列島線と言って、最初に第一列島線を越えます。それから小笠原・グアム・サイパンを結んだラインを第二列島線と言うのですけど、次に第二列島線を越えます。そうすると、西太平洋が視野に入ってくるわけです。第一列島線と第二列島線、それから西太平洋あたりの海流だとか海底地形を宇宙からデータを集めているという状況になっているということです。

中国は国境をどんどん広げていく、というつもりですよね。それを日本とかアメリカが許すかという事はまた別問題ですけど、許さないからと言って戦争したいのかというと日本は戦争なんかしても勝てるわけがないので、日本にとって戦争をする選択肢は全然ないわけです。困った状況になってきているということですよね。

今日のまとめです。2019年に中国を最大の貿易相手とする国はもう130を越えました。コロナから早く終息した中国は、経済的な関係を持って新興国の支持を得ながら超大国化を再び進み始めています。越境データのやりとりはアメリカの2倍になって、国安法で香港の一国二制度を崩壊させて対米冷戦が始まってきたという状況です。

分野: 財務戦略 |スピーカー: 村藤功

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