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PCR開発物語1

荒木啓充 バイオ産業

20/10/28

はじめまして。九州大学ビジネススクールの荒木です。専門はバイオ産業です。北九州市戸畑区で生まれ、高校まで戸畑区にいました。大学と大学院でバイオインフォマティクスを勉強していました。その後、製薬会社やバイオベンチャー、海外の大学院への留学を経て、以前は大学の医学部や農学部で研究員として働いていました。

去年の3月から九州大学ビジネススクールでバイオ産業に関する講義を担当しています。バイオテクノロジーを使ってどういうビジネスが展開出来るかというようなお話をしています。薬から食品までバイオに関わる分野で幅広く活動してきました。

今日は今や国民の誰もが知っている「PCR」は一体何なのか。どういう風に開発されていったのかについてお話しします。新型コロナウイルスの流行により、PCR検査が有名になりました。

「PCR」とは、"polymerase chain reaction"の略語です。
Polymeraseは遺伝子の素となるDNAを合成する酵素。平たく言えばDNAを作る装置のようなものです。chain reactionはそれを鎖みたいな形でどんどん繋げていって反応させる一連の反応のことです。
DNAを連続して合成していくというようなことがPCRです。

今、皆さんが一番関心のあるコロナウイルスのPCR検査は実際何をやっているかと言うと、コロナウイルスに感染すると人間の体内にウイルスの遺伝子があるわけですが、少量ではなかなか人間が同定出来ないため、PCRによって人間が分かる量までウイルスの遺伝子を増やしています。逆に言えば、その遺伝子が増えるということは、コロナウイルスに感染しているということです。微量な遺伝子(DNA)をどんどん増やしていく技術が「PCR」です。「PCR」によってウイルスが増えた人は陽性で増えなかった人は陰性という形で判定されます。

この技術は、ノーベル賞をとった技術です。ただ、非常に面白いことに、この技術は大学の研究者ではなくアメリカの一バイオベンチャーが開発し、1984年に実用化したものです。この開発の物語は非常に興味深く、後にこの技術を開発してノーベル賞をとったキャリー・マリス博士は、実はあまり優秀な科学者ではではありませんでした。開発当初は、そもそもこの会社の本丸的な研究テーマではなく、片手間にこの博士が一人でやっていたようです。この技術の原理自体は非常にシンプルで、実はPCR技術が開発される前の技術を組み合わせて成立していた技術です。ただ、そこに初めて気づいたのがこのマリス博士で、あまりにも簡単な原理だったため、本人もきっと他に誰かがやっていると思って過去の論文を色々見たけれども誰もやっていなかったため、更に開発を進めていきました。この会社はシータス社というバイオベンチャー企業ですが、そこのみんなは誰もこの技術の凄さに気付かず、見放されていたそうです。本当に何がどう凄くなるのかというのは誰もわからないという典型的な例だと思います。

その技術が今や世界で使われることになったわけです。残念ながらマリス博士は昨年亡くなられましたが、まさか自分が開発した技術が今これだけ世界中で使われているというのは彼も考えもしなかったのではないでしょうか。彼はシータス社とある意味喧嘩別れ的にこの会社を去っていくわけですが、その時の退職金はPCRの発明を含めても1万ドルと言われています。後の経済効果を考えると非常に割安でした、その後PCR技術は徐々にその凄さが世間に認知されるようになり、1993年にはノーベル化学賞を受賞することになります。それまでは大学の研究者がノーベル賞を受賞していたため、おそらく企業の研究者からノーベル賞が受賞された最初の事例でした。マリス博士は非常に変わり者で、大のサーフィン好きでノーベル賞の連絡があった時もサーフィンをしていたと言われています。結婚を4回されている非常に恋多き男でもあったようです。このPCRは、日本車であるホンダのシビックでドライブ中に閃いたといわれています。

では、今日のまとめです。
現在世界中で使用されているPCRは、キャリー・マリスという奇想天外な民間の科学者が閃いたアイデアによって開発されました。アイデアそのものは全く新しいものではなく、既存の組み合わせだったのですが、開発当時はその技術の凄さに誰も気付かず、認められるまでに数年かかりました。しかし、徐々にその技術の凄さが広がっていったということです。

分野: バイオ産業 |スピーカー: 荒木啓充

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