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リアリティ・ショックを乗り越えるためにできること

松永正樹 コミュニケーション学、リーダーシップ開発、アントレプレナーシップ

20/09/17

前回は、ヒトが新たな組織の一員となる時に、入職前に抱いていたイメージと現実とのギャップから「リアリティ・ショック」という心的影響を受けること。そして、それを乗り越えていく過程には山あり谷ありの「Wカーブ」というプロセスがあるとご説明しました。その際、リアリティ・ショックは文字通りショッキングな体験だけれども、それを受け止めて前向きな形で適応を図れば大きな成長の転機にもなり得るとご説明したと思います。しかし、これは言うは易く、行うは難し。実際には新入社員の側からすると、そもそも自分が何を分からないのかが分からないわけです。頑張って適応しようにも自分に何が欠けているのかが分からない。先輩社員に質問したくても何を聞いていいか分からないし、誰に質問をするのが適切なのかもはっきりしないということになります。

一方、新入社員としては入社早々お荷物として見られたくないという意識も働きますので、分からないことがあっても普通はまず自分で何とかしようとします。そのために、迎え入れる既存の社員側からすると、新入社員が困っているかどうかが実は分かりづらいのですね。さらに、既存社員の方々は長年その組織で仕事をしていますので、自分たちの組織風土の何が特殊なのかも自覚しにくい。以上の構造が組み合わさるとどうなるかと言うと、新入社員としては暗中模索で何していいか、何をしてはいけないかはっきりしないのだけれども、いちいち細かいことで先輩を煩わせたくないのでひとまず自分だけで仕事をこなそうとする。すると、既存社員の新入社員が困っていることに気づきにくいし、何かあったら言ってくるだろうし、あまり新人扱いするのも反って失礼かもしれないと気を遣うあまり、積極的に声をかけないという「お見合い状態」に陥ったりします。

これを打破するには双方の歩み寄りが必要になります。新入社員は、自分には組織の重要なプロセスだとか価値観について学ばなければならないことがきっと沢山あるはずだという前提のもと、積極的に周りの人たちに質問をして組織文化の理解に努めるべきです。この時、それまで自分が慣れ親しんだ文化との比較を意識して慎む、というのが一つポイントになります。新卒社員であっても大学やアルバイトなどで何らかの組織に属した経験がありますし、中途採用であれば前の勤め先などありますよね。それらと比べて違和感を覚えたとしても、ここはおかしいとか、どうしてこんなヘンなやり方をしているのだという批判をしない。そこはぐっと堪えて、裏にどんなロジックがあるんだろうと考えることが重要です。新参者がパッと見ると理不尽だったり非効率に思われるような仕組みが、実は組織面の複雑な事情をトータルで考えると一番合理的なものだったりすることがあるからです。

既存社員・先輩社員の側で言うと、まず大前提としてどんなに優秀でそつなく見える新入社員であっても、きっと何かしら困っていることやサポートしてもらいたいことがあるはずだと考えて、積極的に声をかけるようにすることが大事です。さらに、何か質問はありますかと声をかけた時に、何でここではこんなやり方をしているのですかと言われても、生意気だとか批判的だと捉えないように心掛けることが大事です。そうした時に、ここではそうするものだと頭ごなしに言うのではなく、適切な範囲で内部事情だとか背景を説明してあげると新入社員は納得できますし、それが信頼関係にも繋がっていきます。

でも、やはり何を質問していいか分からないし、何か分からないことがあるかと聞かれた時に、特にないですと言っちゃうこともあるかと思います。だからこそ、質問をするとかしないとかの前に、雑談でもいいからコミュニケーションを取っておくのがすごく大切で、その中からこの会社はこうなんだと思うようなエピソードが意外と出てきたりということもあります。その意味でいくと、以前お話したようなランチの補助も非常に大事です。ランチで雑談をしておくと、見ず知らずに近い状態から、「その人と話をしたことはある」という状態に心理的なステータスが変化します。そして、この「話したことがある」の次のステージで、「ちょっと踏み込んだ内容の質問をする」というのが来るわけです。話したこともないのにいきなり踏み込んだ質問をしろというのは、少しステージを飛ばしているとも言えます。

こうした雑談を通して、既存社員の助けを借りながら適応が進みだすと、新入社員が「適応期」と呼ばれるWカーブの新たなステージに入ってきます。適応期に入ると、新入社員が仕事のコツを覚えて成果を出し始めます。その前は、手探り状態で周りについていくことに精一杯だったのが、一転して周りを見る余裕も出始めます。将来的なキャリアビジョンを描き出すのもこの頃です。さらに適応が進むと、もはや新入社員と呼ばれるステージではなくなります。個人としてはまさに充実感がどんどん高まっていって、仕事が楽しく感じられる時です。

ただし、組織としては新入社員だったメンバーが充実期に入る時には、注意が必要です。なぜならば、充実期に入ったメンバーは自己効力感に溢れていますので、成長欲求、つまりもっと面白い仕事がしたいとかもっと新しいことにチャレンジしていきたいという意欲が高まっていることが多いからです。このこと自体は良いことで、彼女ないし彼の成長に合わせてどんどん仕事の内容や責任もグレードアップさせていければ、短い期間で目覚ましい成長を遂げることがあります。一方で、いつまでも新人扱いして同じ業務ばかりやらせると、今度は本人がマンネリ感を覚えるようになります。すると、貴重な社会人としての成長期を自分は無駄にしてしまっているのではないかという危機感を募らせて。気持ちが組織から離れてしまい、転職しようなんて思ったりすることもあるわけです。

そうなると、組織としてはせっかくリアリティ・ショックを乗り越えて戦力として期待をかけ始めた矢先に辞められてしまって、大きなダメージを被ることにもなりかねません。そうならないよう、社員一人ひとりの成長とモチベーションの状態を細かくチェックして、彼女ないし彼の成長度合いに見合った仕事を探していくことが理想的です。これが上手くいって本人の成長と仕事のレベルアップが噛み合っていくと、より充実した職務と責任を担うためには新しいポジションに就く、つまり昇進が待っています。そうすると、同じ組織内でもこれまでと違った立場で、これまでは直接やり取りしてこなかった人たちと新しい職務に取り組むということになりますので、新たなWカーブが始まります。こうしてアルファベットのWのように、山だったり谷だったりの時期を交互に繰り返しながらWカーブと呼ばれるプロセスが続いていくものとされています。

今日のまとめです。リアリティ・ショックは、成長のきっかけと成り得るものではありますが、そのためには新入社員と既存社員、双方が意識的に努力する必要があります。リアリティ・ショックを乗り越えて仕事ぶりが充実してきた社員には、それに合わせて仕事の内容をグレードアップさせていかないと、思いがけず離職や転職のリスクが高まります。また、仕事のリスクが高まって昇進した場合、新たな山あり谷ありのWカーブのプロセスが待っていることになります。

分野: リーダーシップ 対人・異文化コミュニケーション論 組織行動 |スピーカー: 松永正樹

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