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MITにおけるアントレプレナーシップ形成の歴史(その4)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

20/08/06

【今回のまとめ】
・MITアントレプレナーシップ・センターは、設立から30年を経て、体系的なアントレプレナーシップ関連科目や、多様な学生支援プログラムを提供している。インスピレーションからアクセラレーションまで、各種プログラムが連続的に配置されている点が特徴だ。


 前回、1990年にMITアントレプレナーシップ・センターがスタートしたことを話したが、驚くべきことに、スタート当初はエド・ロバーツ教授の大学のオフィスがセンター設置場所だった。活動が拡大するにつれて徐々に広いスペースを獲得し、現在では教員やスタッフの執務スペース以外に、学生たちのオープンスペース、会議室、3Dプリンタなどを備えた工房、キッチンも設置されており、小さなイベントはこのセンター内で行われている。
 1996年には、常勤マネジング・ディレクターとしてケン・モースが、そして2009年からはビル・オーレットがその職を引き継いでいる。その間、提供科目は増加し、2009年には履修者総数が1,600名に達した。
 重要なのは、スローン(ビジネス)の学生とエンジニアリングの学生が混じり合う機会を増やすことだった。ビル・オーレットが2009年にスタートした「エナジー・ベンチャーズ(エネルギー分野のスタートアップに関する科目)」は、MITの化学工学部と強く連携し、工学部の教室で開講し、そこにスローンの学生も訪れて履修する形態を取ったのである。
 加えてビルは、アントレプレナーシップ・センターの起業関連イベントを、参加者のレベルに応じて連続的に取り組めるような工夫を行っている。

(1) アイデアや技術のインスピレーション段階
 t=0(Time is now.):秋学期の最初の週末に行うMITキャンパス全体でのアントレ関連の様々な組織や取り組みを紹介するイベント
 各種ハッカソン:参加者がチームを組んで、アイデアを実現する方法の検討や仮説検証を集中して行うイベントで、医薬やデザイン、アートなど、学内組織(センターや学部)が各々の領域をカバー
(2) 探索段階
 Start MIT:1月の3週間でアントレの世界(スキルセットとマインドセット、MIT学内の各種リソースの使い方)を知ることができるプログラム
 MIT サンドボックス:学生チームのアイデアの実行可能性を検証するために、シードファンドやメンタリングを提供するプログラム
(3) 基盤形成段階
 アントレ関連の科目履修:起業に必要な知識を獲得する
 MIT fuse:毎年1月の自主学習期間中に行われる3週間半のマイクロ・アクセラレーター、"ホームワーク"ではなく"ハードワーク"
(4) 事業計画を組み立てて実現可能性を検証する応用段階
 100K:MITのビジネスプラン・コンテスト、途中に100Kアクセラレーション・プログラムも提供
 MIT クリーン・エナジー・プライズ:エネルギー領域に特化したビジネスプラン・コンテスト
(5) アクセラレーション段階(起業直前の徹底的な没入段階)
 MIT Delta v:夏休み期間中に実施される10週間の集中的なアクセラレーション・プログラム

 以上のように、MITのアントレプレナーシッププログラムは、当初はさほど起業に関心が高くない学生が参加しても、徐々にマインドセットを変えながら自分のアイデアを考え、その妥当性を検証しながら事業化へと近づける工夫がなされている。
 また、このようなアントレプレナーシップセンターの活動が、1990年の設立以来、30年という長い年月をかけて形成されてきたことは、我々にも大いに参考になる。ちなみに、このロバーツ教授の本では、MITを参考にして日本でアントレプレナーシップ・センターに取り組んでいる大学の例として、九大(QREC)も紹介されている。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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