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満足のトレッド・ミル

三上聡美 産業組織心理学、社会心理学

20/06/30

今日は、満足のトレッドミル(treadmill)についてお話します。
突然ですが、幸せは長続きすると思いますか。

私たちは一時的に「嫌だな」逆に「ハッピーだな」と思うことはありますが、その感情がずっと続くことはありません。幸せな気持ちや不幸せの気持ちもそうではない気持ちの時があるからこそ、幸せだと思うのかもしれません。

今日は、「幸せが長続きするのか」について経験を交えてお話します。
私は大学受験に失敗して1年間浪人生活をしていた期間がありました。当時は敗北感や劣等感といったマイナスの感情がいっぱいだったことを記憶しています。その時に周りの大人が慰めの言葉として掛けてくれた言葉が「長い人生を考えたら、浪人生活の1年はほんの一部なんだからあまり悪く思わないでいいよ」というものでした。大人たちの言っていることは最もではありますが、当事者にしてみたら将来を左右する今を必死に生きている身なので、失敗によってかかってしまう1年は相当なものだぞという反発した気持ちを持っていましたが、今振り返るとあの1年は無駄ではなかったと思うこともあります。当事者の時にはわかりませんでしたが、あの時の失敗の経験が今の仕事に役立っていることも少なからずあると思うこともあります。

ここでお伝えしたいことは、私の浪人生活中はどちらかというと不幸な気持ちでいっぱいでしたが、時が経てば不幸だと思わなくなることがあるということです。こうしたものが「満足のトレッドミル」となります。この「満足のトレッドミル」はカーネマンが名付けた言葉です。カーネマンは、天にも昇るような幸福も奈落の底の不幸も時が経てばそのインパクトが薄れてベースラインに戻ると主張しています。

トレッドミルとは「踏板」を意味しています(別名:果てしなく続く階段)。現在では、ランニングマシンがトレッドミルと呼ばれているようです。ランニングマシンは時間を設定するとその時間の間ずっと走りつづけたり、速度を変えたり、傾斜をつけて高さを変えたりすることも出来る室内トレーニングの定番です。「満足のトレッドミル」では、ランニングマシン、つまりトレッドミルを人生に例えて、『人生における幸福も不幸もトレッドミルと同じように繰り返されるのだ』ということをカーネマンは述べています。

この「満足のトレッドミル」について、カーネマンは女性の結婚前後の人生満足度について研究をしています。この研究では、ドイツ人女性235名を対象に、結婚する前の4年間と、結婚後の4年間の人生満足度を測定しています。その結果は、結婚前から結婚に向けて人生の満足度は高くなっていきました。

では結婚後の人生満足度はどうなったと思いますか。

一般的に結婚後の人生満足度は下がっていたという結果になりました。こうした人生満足度をグラフにしてみると、結婚の時点を真ん中にしたときに満足度は一番高くなり、結婚前から結婚まで上がり、下がっていくという山の形になっていました。この研究結果から、結婚後は比較的短期間に結婚がもたらした満足度の効果が薄れてしまうということが分かり、結婚のような人生の出来事が幸福感に与える影響は一時的なものだということがわかりました。

人の不幸や幸福は特別な大きな出来事ではなく、「美味しいごはんを食べた」、「十分な睡眠をとれた」といったような些細な出来事によって決まるのかもしれません。実際カーネマンの行った研究では、多くの人に現在進行形で経験しているプラスの感情を報告してもらい幸福感との関係を検討しています。経験から生じるプラスの感情のピークの高さと、出来事の終わりに経験するプラスの感情の高さは幸福感と関連していたようですが、その持続時間については関係が見られませんでした。

例えば、マッサージを受ける時間は15分でも60分でも幸福感に違いがないということです。それならば、15分のマッサージを4回受けた方がいいのではないかという考えにも至ったりします。また、人は困難な出来事に遭遇して心理的なダメージを経験したとしても、多くの場合は不幸の感情のままで続いていくのではなく、そこから回復するような心理的免疫システムが備わっています。

心理的免疫システムとは、例えばつらい経験をした時にその経験から立ち直るために単に時が過ぎて記憶が薄れていくのを待っているというわけではなく、前向きな見通しや良い変化を生み出すのを助けてくれる心の働きのことを指します。人生は良いことも悪いことも様々なことが起こりますが、人は経験する出来事に慣れたり克服したり色んな解釈をしたりして次の出来事を経験していくかと思います。経験する出来事に対する幸福感や不幸感の間を揺れ動きながら私たちは生活しています。

では、今日のまとめです。

今日は満足のトレッドミルについてお話しました。トレッドミルとは踏板のことですが、踏板を上下に踏むように一つの経験に対する幸福感や不幸感はずっと続くものではなく
、良いことと悪いことが上下運動をしているという意味になります。

分野: 社会心理学・組織心理学 |スピーカー: 三上聡美

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