QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

タグ

QTnetモーニングビジネススクール > タグ一覧 > タグ社会心理学・組織心理学

幸福の要因

三上聡美 産業組織心理学、社会心理学

20/06/29

今日は、心理学の観点から「幸福の要因」についてお話します。

突然ですが、みなさんはどういう時に幸せを感じますか。

「幸福とは何か」については、昔から様々な研究者が答えを出そうとしてきていますが、未だに明確な答えは出ていないそうです。答えが出ないというのは、「何を幸福とするか」は人によって様々だからではないかと思います。考え方や価値観は、文化や世代または個人によって異なるため、何が幸福をもたらすのかというのも一概に決めることは出来ないのだと思います。

2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンは、幸福研究の第一人者としても知られています。このカーネマンを中心とした研究者たちは、幸福感と関連する要因について検討し、リストを挙げています。

リストは以下の通りです。

1. 笑顔の頻度:作り笑いではない本当の笑顔
2. 友人のおかげで感じた幸福感の強さ
3. ポジティブ感情を言葉に出した頻度
4. 社交性や外向性
5. 睡眠の質
6. 親密な関係にある他者の幸福
7. 自己報告に基づく健康度
8. 収入の多さ
9. 評価基準となる集団との相対的な収入の多さ
10. 宗教活動への積極的関与
11. 最近起きた環境のポジティブな変化:収入の増加や結婚など

上記のリストをざっくり分けると、「人との関わりの中で起こる事柄」と「経済的豊かさに関する事柄」の2つに分類することができます。「人との関わりの中で起こる事柄」については、実際に幸福感の高い人は幸福感の低い人よりも、親しい友人や近い人、恋人との関係が良好であるという研究があります。

その一方で、「経済的豊かさに関する事柄」については、果たしてそうなのかという議論が多くされています。その議論の1つとして、カーネマン達はアメリカの総合的社会調査のデータを元に、回答者の幸福感を世帯年収毎に比較しています。カーネマンの研究によると、世帯年収が200万未満の人達の内、"とても幸せ"と回答した割合は22.2%、世帯年収900万円以上の人達の内では42.9%でした。この200万円未満の人達と900万円以上の人達では、"とても幸せ"と感じる割合には約2倍の違いがあります。反対に200万円未満の人達の内、"あまり幸せではない"と回答した割合は17.2%、900万円以上の人達の内では、200万円の人達の1/3の回答となる5.3%でした。この結果から、収入が高い人ほど幸福感が高くなると考えられます。

では、200万円と900万円の間の世帯収入の人達はどうでしょう。
実は500万円以上900万円未満の世帯収入の人達の内、"とても幸せ"と回答したのは41.9%、900万円以上の人達が"とても幸せ"と回答した割合の42.9%とほぼ変わらない結果になりました。"あまり幸せではない"と回答した割合も500万円以上900万円未満の世帯収入の人達では7.7%、900万円以上の人達の5.3%とあまり変わりませんでした。この結果から、経済力が中位以上あれば経済力は人々の幸福とは関連が無いということが分かりました。つまり、お金があるからといって幸せであるとは限らないということです。

こうした経済力と幸福度に関連が見られなかった理由として、カーネマン達は3つの可能性をあげています。
1つ目は収入の金額の高さが幸福感を左右するのではなく、他の人との金額の比較によって幸福感が左右されるのではないかということです。自分よりも裕福な人と比較することで、「自分が敗北者である」と感じてしまい幸福感が下がるのかもしれません。
2つ目は、人間は物質的な豊かさに慣れやすいため、物質的な豊かさそのものには大きな喜びを感じない可能性です。収入が上がった時は喜びを感じますが、しばらくするとその上がった収入の金額に慣れてしまい、幸福には結びつかないのかもしれません。
3つ目は、裕福な人は学歴や仕事といった何らかの高い成果を求められることが多く、のんびりと過ごす時間が少ないため、ストレスや緊張が高まりやすいというものです。ビルゲイツの「お金持ちでなければよかった」という言葉が話題になったことがありますが、その発言の理由には、"余計に注目されてしまうから"と語っています。注目されることはストレスにもつながります。ストレスが高くなると、幸福になるとは言えません。羨ましい悩みなのかもしれませんが、お金があったらあったで色々大変だということなのかもしれません。

また、別の研究では同程度の経済力の場合、お金の行使方法によって満足度が異なるかを検討したものがあります。この研究では、物の所有(例えば、車や大型の家電製品の購入など)よりも経験を目的とした商品(例えば、習い事や旅行など)の方が大きな幸福をもたらすという結果になりました。さらに、その傾向は高所得者の方が著しいという結果になったそうです。

では、今日のまとめです。
「幸福とは何か」という問いについての明確な答えは出ていません。しかし、「幸福を感じる要因は何か」という問いについては、心理学では多くの研究が行われています。今日は「幸福を感じる要因」についてカーネマンの研究を中心にお話しました。

分野: 社会心理学・組織心理学 |スピーカー: 三上聡美

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ