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モノづくりからコトづくり(その2)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

20/06/09

【今回のまとめ】
熊本県に本社をおく「オオクマ電子」のように、モノづくりの強みを生かして新たなコトづくりに取り組む好事例も出てきている。

前回は、製造業の分野で「モノづくりからコトづくりへ」と価値の源泉がシフトしていること、コトづくりが成功した企業には共通する7つの特徴があることを紹介した。今回は、その特徴をより分かりやすく説明するために、具体的な事例を紹介したい。

熊本に本社をおく「オオクマ電子」は、元々先代の社長の時代から半導体・エレクトロニクス分野の画像処理を得意としていたが、大手メーカーからの下請受注という構造のため、自社の業績は半導体産業の景況や大手メーカーの業績の影響を受けていた。そこで、先代と現社長が新事業の可能性を検討した結果、景気の影響を受けにくい「医療分野」にターゲットを絞り開発を開始した。その後、約12年の年月をかけて、遂にSPASERという新事業を立ち上げることに成功した。
SPASERよって、薬剤師が手術後に薬剤使用量を正確に把握するための作業を大幅に効率化できる。これまで大病院では、手術時に発生したゴミを薬剤師が全て手作業で整理し、数を把握して保険償還のための報告書を作成しなければならなかったが、同社が開発したSPASERにより、使用済み薬剤を自動で画像認識し、種類と量を自動でリスト化してくれるのである。

このSPASERは、前回紹介したコトづくりの7つの特徴に良く当てはまる。

(1) コアコンピタンスの明確化
オオクマ電子は、もともと画像処理分野で高い技術力を持っていた。新たな医療分野に進出するにあたり、自らのコアコンピタンス(強み)を再認識するというところから始めたということである。
(2) 徹底した現場主義
SPASERの開発にあたって、現社長は、ある大病院の協力を得て、1年間医療の現場に張り付いて、何が課題なのかを調査したのである。医療の現場で手術後のごみを整理しリスト化する作業に一緒に関わることで、現場のスタッフが何に一番困っていて、何が一番大変なのか「生の声」を聞くことができた。そうした徹底した現場主義がSPASERの開発過程で行われていたのである。
(3) 顧客価値の最大化のためのビジネスモデルの新構築
これは(2)で説明したように、手術中に使用した薬剤数量を手間をかけずに把握したいという医療現場のニーズを正確に把握することで、顧客価値を最大化する新事業を開発することができた。
(4) ソリューションビジネスの展開とバリューチェーンの構築
バリューチェーンには、材料・製造・マーケティング・セールス・アフターサービスなど様々なビジネスのフェーズがある。それをトータルで見た上で、そのバリューチェーン全体の価値を上げる必要がある。SPASERの場合、病院に装置を一台売るという形でなく、「月額○○円」いうリースで販売している。加えて、SPASERの使用を通じて、どういう薬剤がどれだけ使われたかというデータが独自回線を経由してオオクマ電子に集まる仕組みになっている。この手術データを細かく分析することで、病院側に生じていた無駄やムラを「見える化」することが可能になった。それによって、病院は最大で年間数千万にも達する保険償還の申告漏れを減らしたり、ゴミを仕分けする薬剤師の残業代の削減ができる。こういった顧客に対するソリューション提供によって、バリューチェーン全体で価値を上げることが実現できている。

(5) デジタルツールの活用
(4)で紹介したように、オンラインでデータを集めることで、新たなデータビジネスも生み出している。
(6)他社との連携
筑波にある産総研という国の研究機関と共同研究を行い、社内に不足していた技術力を補って開発を進めた。
(6) 組織開発・人材育成
先代の社長と現社長が率先し、単なるモノづくりに留まらない付加価値づくり=「コトづくり」に適合した人材の育成を進めた。

このように、まさに「コトづくり」の7つの特徴に合致した新事業の開発が、オオクマ電子では行われていたのである。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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