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RJP の効果を高める4つのポイントと「囚人のジレンマ」

松永正樹 コミュニケーション学、リーダーシップ開発、アントレプレナーシップ

20/05/28

前回は採用についてお話をしました。企業が採用候補者に対してたくさん応募して欲しい、しかし、その時にはRJP(リアリスティックジョブプレビュー)という、自分たちの事をきちんと正直に語るというステップを経ることが有効なのですが、なかなかそれを実践している事例は少ないという話でした。今回は、RJPの効果を高めるためのポイントを合わせてご紹介出来ればと思います。

まず、RJPを行う上での4つのポイントについて、お話します。1つめは、Learning by Doingという事で、面談や説明会だけではなく、実際の仕事を、できれば実際の職場で、候補者にやってもらう事が重要です。コミュニケーション学の研究で、口頭のみのやり取りで伝えられた情報は精度が低いことが示されています。口頭で聞いただけだと、伝えた側が100伝わったと思っている事のうち、せいぜい1~2割ぐらいしか聞いた側は再現出来ないと言われています。

大学教授として少し耳が痛い所ではあるのですけれども、百聞は一見に如かずと言いますよね。ただ聞くだけだとやはり効果は限定的です。百聞は一見に如かずという諺には続きがありまして、百見は一考に如かず。つまり、100回見る事は自分事として1回考える事には及ばないとされます。さらに、百考は一行に如かず。たとえ、自分事として真剣に考える事を100回繰り返したとしても、実際にそれを行ってみる事には及ばない、という風に続きがあります。Learning by Doingというのは、ただ当社の仕事はこうだよという事を口頭で伝えるよりも、実際にそれをやってもらう事の方が本当に効果があることにつながる、重要なポイントだと思います。

RJPの2つめのポイントは、正しいタイミングで行うこと。具体的には、RJPは出来る限り早いタイミングで実施すると良いと言われています。就職ないし転職を考えている候補者側からすれば当たり前ですけれども、早い段階でリアルな実情を知ることが出来れば、それをベースに準備にかける時間配分であるとか、他に検討している就職先や転職先と比べての優先順位付けがしやすくなります(だからこそ、組織側には最後まで内情を隠すインセンティブが働いてしまう、とも言えますが)。最悪のタイミングは、内定受諾後になって、実は...というRJPを行う。これは候補者からすると騙し討ちとしか感じられないので、RJPの良い効果がほとんど吹き飛んでしまい、良い事はないやり方です。

3つめのポイントは、出来るだけ多様なメンバーから仕事の実状についてコメントしてもらうようにすること。たとえば、現場で同じ仕事をするであろう先輩社員から仕事の話をしてもらうだけではなく、その上長、出来れば役員などの経営陣にもRJPに関与してもらうようにすると、様々な視座・視点からの情報が得られるので、偏りのないコミュニケーションが実現しやすくなります。

最後は、採用上の選考とRJPを切り離すこと。というのも、この2つを連動させてしまうと、色々な歪みが出る事が知られているからです。たとえば、一次選考を通った人にだけRJPを行うとすると、もしかしたらRJPを経てその仕事のリアルな内容をより詳しく知っていれば、もっと優先順位を高くして選考に力を入れて、一次選考を突破してくれたかもしれない人を意図せず振り落としている可能性がある。反面、実情を知ってこれは自分に向いてないとか合わないと思う人が一次選考通過者の中にいるとすると、その人たちは恐らく遅かれ早かれ内定を辞退する可能性が高いので、これはもったいない。RJPをやるのであれば、なるべく早い段階で、最終的な採用の見込みが大きい小さいに関わらず候補者全員に行うのが良策です。これ、直感的にはコストが高くつくように思えるかもしれませんが、実は一番効率がよくて王道のアプローチとなります。最近だと、自社でブログををはじめとするオウンドメディアを通して会社の状態を随時公開していくと、それを見て共感した人たちが応募して来るので、トータルで見た時最も効率的かなと思います。

以上、RJPを効果的に行うためのポイントを挙げてきたわけですが、実際にRJPを行っている企業は実に少ない。これには理由があります。それは、採用する側としては出来る限りたくさんの人に応募して欲しいというごく当たり前のインセンティブに関係します。RJPは仕事のリアルな実状を明らかにするプロセスなので、実施すると見かけ上の応募者がどうしても減少するのです。実際には、仕事の内容であるとか、自社の社風とか価値観に合わない人が応募を自粛してくれるので採用活動が効率化されただけなんですが、応募者数や説明会参加後のエントリー登録者数などを採用担当者の評価指標に設定していたりすると、担当者からしたらわざわざRJPをしようとは思いませんよね。

また、競合となる他の企業がRJPを行っていない場合、他社がやっていない中で自社だけRJPを実施すると、どこもキラキラしていてうちはやりがいがあって成長できるよと声高に宣伝しているなかで、自社だけ泥臭い、大変そうだ...と採用候補者が逃げてしまうという現実的な問題もあります。このジレンマというのはどこも一緒なので、中々RJPに踏み切れない。理想は、どの会社もRJPをしっかりやって、その上で候補者の方もそれぞれ自分はここが良い、自分はあっちが良いと、仕事や職場が選べるというのが理想です。しかし、実際にはどこもRJPを行わないことが会社にはベストチョイスに今なってしまっています。畢竟、応募者のほうも、内情は結局入るまで分からないから、応募の段階では手当たりしだいにひろく応募し、複数内定を得たらそれを蹴る、と。誰もハッピーになっていないことを皆でコストをかけあってやっているわけです。

それでは、どうしたら良いのか。この点についてのヒントを次回お話しようと思います。

今日のまとめです。仕事のリアルな実状を使えるRJP(リアリスティックジョブプレビュー)を行う上では、口頭のみでなく実践を通じて情報を伝える、出来る限り早めに実施する、多様な関係者に関与してもらう、採用上の選考とは切り離す、という4つのポイントがあります。ただし、RJPを行うと見かけ上は応募者数やエントリー登録数が減るため、中々実施に踏み切るケースが少ないという構造があります。

分野: リーダーシップ 対人・異文化コミュニケーション論 組織行動 |スピーカー: 松永正樹

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