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評価における公正感③最後通牒ゲーム

松永正樹 コミュニケーション学、リーダーシップ開発、アントレプレナーシップ

20/05/04

前回と前々回、評価に対する納得感を高めるには公正さ、英語で言う「Justice」が重要であり、そこでは評価の内容そのものに関する"結果の公正"と、評価がどのようになされるかという"プロセスの公正"の2つがあるというお話をしました。本日は、これらの議論をもう一歩深めるために、ちょっとユニークなゲームをご紹介します。これは2人のプレイヤーで行うゲームです。この番組をお聞きの皆さんも想像してみて下さい。今僕の手元に1万円があります。ゲームの目的は、これを僕と皆さんの2人のプレイヤーで分け合うことです。

皆さんには分配権があるものとします。皆さんと僕、それぞれが1万円のうち幾らを貰うかについて、皆さんが自由に決めて提案することができます。例えば、1万円全部皆さんが貰い、僕はゼロだということでも結構です。もしくはその逆、あるいは、その間のどんな数字でも結構です。ただし、もう1人のプレイヤー(この場合は僕ですね)は、拒否権を持ちます。もし皆さんのご提案を僕が気に入らなければ、それを拒否することが出来るのです。分配権を持つプレイヤーの提案をもう1人のプレイヤーが拒否しなければ、提案のとおりにお金を分け合ってゲーム終了です。ただし、ここがちょっと鍵になるポイントですけれども、もし拒否権が発動された場合には、どちらのプレイヤーもお金は貰えません。

皆さんはご自分の好きな提案が出来るけれども、「いや、それ駄目だよ」「いやだよ」と言われたら、二人とも1円も貰えないということになります。さらに、基本ルールとして、提案は1回きり。つまり、受けるか受けないかという決断も1回きりです。皆さんだったらどんなご提案をされますか?

これは最後通牒ゲーム、英語だと「Ultimatum Game」といって、世界中で数多く行われてきている有名な心理実験の1つです。ちなみに、オリジナルの形式ではプレイヤー同士は見知らぬ赤の他人であり、ゲーム中に顔を合わせることもなく、更に、第三者の実験者を介して紙ベースで行うという形でやり取りをすることになります。

もしそうだとしたら、ちょっと話が変わってくるような気がしますね。やはり、お互いに顔が分かっていれば、私の方がちょっと多く貰うといけないかなと思ったりします。しかし、相手が全く知らない人で、その後もお互いのことが分からないというのであれば、ちょっと自分の取り分を多めにする、という人は多いと思います。実際、こうした「後腐れのない」状況では、分配権を得たプレイヤーの多くは、7:3から8:2で自分の取り分を相手より多くする提案をします。

しかし、自分の提案を相手にマイク越しに肉声で伝えなければならないとか、直接対面で提案しなければならないとか、あるいはもう1人のプレイヤーが自分の友人・家族である等、相手との関わりが強くなればなるほど、提案内容は50:50に近づいていく事が研究で分かっています。

知っている人とやるのにそんなには自分が多く取れない、そんなことをしたら何と思われるどうか、と思う心理が影響するわけです。一方で、提案を受ける側のプレイヤーに関しては、自分の取り分が大体30%を割り込むと、例えば今回では僕の取り分が3千円より小さい額を提案されると、途端に拒否権を発動する確率が高まると言われています。言い換えると、提案を受ける側に回った人は7:3くらいまでであれば、相手の取り分が多くてもそれを受け入れる可能性はそれなりに高いということです。

しかし、これは前回までのお話をしてきた公正という観点からやや不可解な点があることにお気付きでしょうか? というのも、最後通牒ゲームで提案を受ける側に回ったプレイヤーは、報酬を獲得する為に費やした努力はほぼほぼゼロに等しいわけです。「自分の貢献や努力に見合った評価・報酬をヒトは公正だと感じる」という前回までにお話した理論からすれば、努力がほぼゼロなのだから、報酬、つまりゲームから得られる金額はゼロでなければ儲けものと感じてもおかしくない。しかし、実際には皆さんもご想像のとおり、もし分配権を持ったプレイヤーが9:1の提案をしたりすると、これはほぼ確実に、もう1人のプレイヤーは拒否権を発動して2人とも獲得金額がゼロになる道を選びます。言い換えると、千円貰うよりも報酬ゼロになるようにあえて選択をするということになりますので、経済合理的な判断とは言えません。

なぜあえて自分の報酬を投げ打ってまで、気にくわない提案を拒否するのか。これを考えていくと、一見合理的に思われるはずの評価が当事者から思わぬ反発をされるといったケースに通じる、人間心理を垣間見ることができます。次回はその点について解説して参りますので、どうぞお楽しみに。

今日のまとめです。ある金額を2人のプレイヤーで分け合う最後通牒ゲームという心理実験があります。プレイヤーは何の元手をかけずにお金を貰えるので、どんな金額であっても提示された分配の提案を受け入れることが、本来合理的な判断となるはずですが、実際には3割未満の分け前を提案されると多くの人が拒否権を発動してあえて獲得金額がゼロとなる道を選びます。この興味深い行動パターンの背景と組織における評価への影響について次回お話します。

分野: リーダーシップ 対人・異文化コミュニケーション論 組織行動 |スピーカー: 松永正樹

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