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評価における公正感①「結果の公正」

松永正樹 コミュニケーション学、リーダーシップ開発、アントレプレナーシップ

20/04/08

前回は、ヒトには「認知バイアス」という様々な心理的なクセがあり、客観的・合理的な情報の受け取り方をすることはないというお話をしました。それゆえに、評価される側は本来なされるべきものよりも高い評価を期待しがちになるし、評価をする側もする側で、完全に妥当な評価をすることは難しいと。今日はそうした中で、評価に関する納得感を高めるためのポイントとして、「公正」について話します。

日本語だと「公正」は公に正しいと書きますが、英語ではJusticeという単語が充てられます。日本だと、学会等での議論を除いて、ビジネスとJusticeというのはなかなか結びつけて考えられることは少ないかもしれません。しかし、Organized Justice、組織的公正という概念は、実は経営学に関する研究の世界では非常にメジャーなトピックで、組織における公正とは何か、公正な組織の在り方が人々のモチベーションや企業の業績にどう結びつくのか、どうすれば公正さを感じてもらえるのかなどについて、活発な研究が行われています。

例えば、グーグル・スカラーの検索ページで"Organizational Justice"と入力すると、200万件以上の研究がヒットします。本日の話に興味を覚えた方は、是非ご自身で少し調べてみてください。この番組でご紹介する以上の沢山の情報が見つかるので、きっと役に立つと考えられます。

基本的に、「不公正よりは公正な方が良い」ということについて反対するヒトはほとんどいません。自分自身が公正または不公正に扱われる対象になるとそれは尚更です。しかし、何をもって公正と言うのかについては、様々な観点があります。

経営学では、公正には大きく分けて「結果に関する公正」と「手続きやプロセスに関する公正」の2つの側面があると考えます。結果に関する公正、英語だと"Distributional Justice"と言うのですが、これは評価の内容やそれによって得られる報酬がどれだけ公平なものであると感じられるかという、結果、アウトカムについての公正さのことを指しています。

ここでは、評価や報酬が「平等」かどうかがポイントではない、という点にご注意ください。つまり、全員が同じ内容の評価を受ける、あるいは、ボーナス等の報酬の額が全員一緒であれば結果に関する公正が担保されるかというと、そうではないということです。むしろ、誰もが平等に同じ評価や報酬を受けるというのは、公正という観点からみるとマイナスになります。そうではなく、組織に対する個々の貢献に応じた傾斜配分、すなわち、多くの貢献をした者は高い評価や報酬を与えられ、貢献の度合いが少なかった者については、そのぶん評価や報酬の額が下げられるというのが「結果に関する公正」を実現する鍵となります。

社会比較と言って、ヒトは自分と同じような社会的カテゴリーに属する他者、例えば会社の同僚や同じコミュニティのメンバーなど自分と同じような人だと感じられる人、そういった他者と自分を常に比較することで、様々な情報処理を行っています。その中で、自分は相対的によく頑張った、例えば、所属するチームの中で、自分が今期一番の活躍をしたと思っているとしましょう。そこで、期末のボーナスがチームメンバー全員に一律で同額が支給されたとすると、この人はおそらく不公正だと感じるでしょう。

もう少し一般的に述べると、ヒトは「自分の貢献に対して与えられる評価・報酬」と「自分と似た他者が、彼女ないし彼の貢献に対して与えられる評価・報酬」の比率が釣り合っているかを直感的に感じ取り、それによって公正/不公正を判断します。ですので、繰り返しになりますが、評価に関する公正感を高めたいのであれば、個々のメンバーの貢献を出来る限り詳細に検討して、それぞれに見合った評価、そして報酬を設定する事が重要になります。

これは言うのは容易いけれども、実際に徹底しようと思うと非常に大変なことです。前回お話したように、ヒトは自分の活躍や貢献は高く評価しがちだからです。そのため、どんなに客観的評価を心掛けたところで、どのみち不満はゼロにはなりません。自分はもっとやったはずだと、ヒトは誰もが感じます。それにもかかわらず、細かく個々のメンバーの仕事ぶりを見る、特に、表面上は分かりづらい努力や意図まで汲み取って評価に反映させようとすると、どこまでも時間や手間がかかります。その意味で評価を画一的にするのは、コスト効率という面では非常に有効です。

つまり、組織をマネジメントする側にとってのコスト効率と、そこで働くメンバーが感じる公正感の両方いいとこ取りをするのは至難の業で、今日世界最先端の理論でも結論は見えていません。それが出来れば、まさに人事評価制度のイノベーションとなるのかもしれませんが...。少なくとも、近視眼的に時間と手間を節約しようと大雑把な評価と画一的な報酬・待遇設定でお茶を濁そうとすると、従業員の心をつかむことが出来ないのはほぼ確実です。

ただし、希望がないわけではありません。例えば最近ではテクノロジーが使えるようになってきたので、ヒトが部下10人の仕事ぶりを全部見るのは難しいと思うのですが、AIを導入するなどして、ある程度データ化し、データのまとめであれば見られるといった形で、人事評価制度に少し手を入れようという動きもあります。が、まだまだこれが良い形だというのが見えてないのが現状だと思います。

今日のまとめ:
評価に対する納得感を高めるには、評価や報酬の受け手が公正であると感じる事が必要です。公正には結果に関する公正と、手続きやプロセスに関する公正という2つの側面があり、結果に関する公正感を高めるには個々のメンバーの仕事ぶりに見合った傾斜配分が必要となります。

分野: リーダーシップ 対人・異文化コミュニケーション論 組織行動 |スピーカー: 松永正樹

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