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同じ失敗をなぜ繰り返してしまうのか? ~ハインドサイトバイアスによる経験分析の失敗~

平野琢 企業倫理、リスクマネジメント

20/03/31

今日は、人や組織が同じ失敗をなぜ繰り返してしまうのか、そのメカニズムについて話していきたいと思います。皆さんは同じ失敗を繰り返してしまう事はありませんか?企業不祥事や大きな組織の失敗を研究してみると、やはり個人に限らず、組織でも同じ失敗の繰り返しという事例はすごく多いです。失敗は誰にとっても嬉しいものではないですし、企業にとっては多くのステークホルダーに迷惑をかけてしまうので、なおさらだと思います。ではなぜ人や組織は同じ失敗を繰り返してしまうのか。実は、学問においても長年の研究対象になっていて様々な研究がされていますが、今日はリスクマネジメントの観点から考えてみようと思います。

同じ失敗を繰り返してしまう事例は色々と挙げられていて、このような事例はよく見てみると、ほとんどの場合は失敗の原因分析を行っていなかったり、失敗に対する対策怠っている場合が多いように思われます。しかし、中には詳しい失敗の要因分析を行って、かつ、まじめに再発防止対策を行っていたにもかかわらず、同じ失敗を繰り返している事例は多いです。

きちんと分析して対策しているのに、なぜ繰り返すのか、実はこの背景にはわたしたちが無意識に、失敗の原因を誤って分析してしまうメカニズムが存在することが指摘されています。代表的なメカニズムとして、ハインドサイトバイアス(hindsight bias):後知恵バイアスという物が存在します。

後知恵による思い違いと考えていただいてよいかと思います。日常では聞かない言葉ですが、簡単に言うと、人が出来事の結果を知ったうえで過去を分析した場合、過去時点における出来事の結果を予測できただろう、と実際よりもはるかに大きく考えてしまう事をいいます。もう少し簡単に言うと、何かの結果を知ったうえで過去を振り返った際に、実際には気づくことや考える事が不可能であった事に対しても、「ああこれ、気付けたでしょ?」とか「これは分かっていたはずだ。」と無意識に考えてしまう事です。皆さんにも失敗した後で、「この失敗の原因はわかっていたのに。」と後悔したことや、本当は偶然なのに何か成功したら「その成功は分かっていたよ。」と言ってしまうような経験はありませんか。

例えば、ぼくはソフトバンクホークスのファンなのですが、友人と試合を見に行くと、友人は必ず勝敗が決まり試合が終了した後で、「この勝利は5回裏から見えていた。」とか「2回のピッチングをみて、完封は予想していた。」と言います。でも、試合中の彼の「今日はいける!」とか「今日はだめだ!」という勝敗予想は概ねいつも外れています。まさにこれは試合の結果を知った後で、試合中の自分の予測可能性をはるかに高く見積もっている後知恵バイアスの典型だと思われます。

でも、その後知恵バイアスがなぜ同じ失敗の繰り返しに繋がっていくのでしょうか。端的に言えば次のようなメカニズムになります。まず自分が失敗したという結果を知ったうえで、過去の自分の行動を振り返るので、実際よりも大きくこの失敗の原因に自分は気付けたはずだという分析をしてしまいます。そして、本当は、失敗の原因に気付けない、無理からぬ要因がそこには存在したにも関わらず、失敗原因に自分は気付けたはずだと思い込むようになり、それで本当は気付けない無理からぬ要因を分析しなくなってしまいます。結果として、本当は失敗の原因に気付けない、本当の無理からぬ理由・要因を分析して対策しなければならないのに、それらは全く分析せずに、失敗は気付けたはずでこれは自分の単なる不注意だ、という誤った分析結果を元に対策をして、結果、同じ失敗を繰り返す訳です。本当の原因は別の所にあるのに、自分の不注意だから次に気を付ければいいのだ、と思ってしまうということです。本当は不注意ではなくて、そこにはどうしても気付けない要因が存在するにも関わらず、これを見なくなってしまうのです。だから結局、「不注意だ、不注意だ」と何回言っていても、その不注意の結果の失敗を何回も繰り返してしまうのです。

ある工場の事例ですが、その工場の一か所で、機械の操作ミスが相次いだそうです。その機械の操作は本当に単純な操作だったので、経営者は、これは操作者の不注意だろう、と考えていました。そして「注意してください。」と求めるだけの対策を行っていたそうです。それでも長年にわたり、この操作ミスが一向に無くなりませんでした。そこで、単純な操作であっても操作を間違ってしまう無理からぬ要因があるのではと経営者は発想を逆転させて、失敗の要因分析と対策を行いました。その結果、やっと操作ミスがなくなったという事例を聞きました。この事例はハインドサイトバイアス:後知恵バイアス、これによる失敗原因の特定ミスがもたらした同じ失敗の繰り返しと、それを乗り越えることが出来た事例であると考えられます。

今日のまとめ:
失敗の要因分析を行い、かつ再発防止対策をおこなっていたにも関わらず、同じ失敗が繰り返されてしまうことがあります。これはもしかしたらハインドサイトバイアス:後知恵バイアスによって、失敗の原因の特定を誤っているからかもしれません。このような誤りを防ぐためには、人は意外と失敗の要因に気付くことが出来ないという事を肝に銘じて、失敗経験を分析することが重要になります。

分野: 企業倫理 経営リスクマネジメント |スピーカー: 平野琢

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